冨田ラボ ALBUM「Joyous」ディスクレビュー

Joyous

ALBUM

冨田ラボ

Joyous

ビクターエンタテインメント

2013.10.23 release

初回限定盤 <2CD>
通常盤 <CD>


成熟した男女が表現する“大人のナイーブさ”から連想すること

 大人になるって、どういうことなんだろう? このアルバムを聴きながら、そんなことを思ってしまった。

 プロデューサー/アレンジャーとして活躍を続ける冨田恵一のユニット、冨田ラボ。久々のオリジナル作となる4枚目は、原 由子(サザンオールスターズ)、横山 剣(クレイジーケンバンド)、椎名林檎、さかいゆうといった豪華な顔ぶれのボーカリストたちがゲスト参加している。それも今回はかつての“シップ・シリーズ”(『Shipbuilding』『Shiplaunching』『Shipahead』の3作品)のようにひとり1曲ではなく、4人をソロでフィーチャーした曲が5曲(さかいのみ2曲)と、全員で歌っている曲が2曲。これにインスト3曲を加え、一枚のアルバムとして構成しているのだ。それだけに、どこか連なったキャラクターやストーリーが展開しているように感じられるのが今作のミソである。また作詞陣も坂本慎太郎、高橋幸宏、堀込高樹、中納良恵、青山陽一と強力。その大人の歌をソウル、ジャズ、ファンクのエッセンスが骨の髄にまで染み込んだ冨田サウンドが、濃厚に、しかし時にはリリカルに表現していく。

 そしてここでは、とっくに大人の年齢に達した男女たちが、人生上の責任だとか面倒くさいものを背負いながら、それでも自分の中のナイーブな何かを確かめ直しているような感覚を覚える。もちろん冨田ラボのサウンドは熟練の域に達しているし、ベテラン揃いのボーカリストたちもさすがの声を聴かせているのだが……その誰もが、まだ若かった、青かった頃の自分のカケラを音楽の中で探しているように感じるのだ。その観点からも、加藤清史郎、春名風花といった子供たちが大人の事情満載のドラマを演じながら歌詞を口ずさむ「この世は不思議」のミュージック・クリップには引き込まれた。

 子供だけが持つ純心さや純粋性。もしくは少年少女が成長していく過程で通過する青春。こんなにも大人なアルバムを聴きながら、冨田恵一はいつかそうしたものをテーマにした作品を作ってくれないかな、と思った。

(青木優)

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