The SALOVERS – 青春の輝きに溢れたアルバム『青春の象徴 恋のすべて』をリリースしたThe SALOVERSの無期限活動休止最後のワンマンをレポート!

The SALOVERS

2015年3月25日。渋谷CLUB QUATTROで、The SALOVERSが7年間の道のりに終止符を打った。バンドの無期限活動休止を決め、アルバム『青春の象徴 恋のすべて』を完成させた彼らの最後の夜。そこで見えたものから、今もう一度振り返るこのバンドのこと。サラバーズは、あまりにも青春的なバンドだった。

TEXT BY 青木 優/PHOTOGRAPHY BY 古溪一道

★こちらには約2年半ぶりにリリースされた2ndアルバム『青春の象徴 恋のすべて』についての全員インタビューを掲載。今回のレポートと合わせてぜひご覧ください。

オーディエンスから起こった、あたたかいコーラス。美しかった。

 彼らの青春が終わった。最後は爽やかさが残る、完全燃焼だった。本音を叫んで、目いっぱい演奏しきった4人。初っぱなからトリプル・アンコールまで、ステージの上には、バンドでの最終コーナーを全力疾走するサラバーズの姿があった。
 グッと来る瞬間が何度もあった。「フランシスコサンセット」やアンプラグドで演奏された「ニーチェに聞く」での、4人全員によるコーラス。曲のイントロのきっかけを作る、藤川(雄太)のカウントのバカでかい声。古舘(佑太郎)の「ラスト台湾!」のひと声から始まった「オールド台湾」のサビでフロアから元気良く返った「たいわーん!!」コール。どれもこれも「もう聴けないんだな、見れないんだな」という感慨が押し寄せる。そしてサラバーズ屈指の名曲「愛しておくれ」で、古舘の「みんな、一緒に歌ってください」という言葉に応じたオーディエンスから起こった、あたたかいコーラス。美しかった。みんながバンドと過ごすことのできる残り時間を惜しむように共有していた。
 湿っぽい雰囲気はなかった。いや、正確には、そうした空気をサラバーズの4人が拒否しているような雰囲気があった、というところか。MCで触れられるのは、例えば楽屋で古舘がコーヒーをこぼしたおかげで藤川の帽子が濡れてしまったこと(元々、そんな場所に置いたのは藤井(清也)だった模様)。また、アルバムが出せなかった2年半の間に何をやっていたかという振りでは、藤川はゴルフと古舘とのハワイ旅行、藤井は六本木のクラブ通い。そして小林(亮平)がアメリカ留学するという噂が流れてるけどデマ……などなど、カッコつけない笑い話ばかり。物販を手伝う大学の後輩が泣いていて、古舘が「サラバーズが終わるからか?」と聞いたという話も一瞬あったけど(理由は、ツアーについていってるせいでゼミのレポートが終わらないから、とのこと)、それでしんみりした空気にはならなかった。でも会場のみんなは、盛り上がりながら、歌いながら、心の中で悲しんでいたと思う。そして古舘は今夜について「無期限活動休止のほうが前に出ちゃってるけど、俺らとしてはアルバムが出せて、こんなにたくさんの人たちがこうして集まってくれたことがすげえうれしいです。どうもありがとうございます!」と言った。
 たぶん、4人にウェットな感覚がなかったわけではないはずだ。演奏そのものは相変わらずまっすぐ投げ込んでくるばかりだが、そもそもバンドの解散、もしくは活動休止を前提にしたツアーやライブが切なくないわけがない。ただ、こんなふうに解散や休止を発表したあとのバンドは、悲しみよりも“もう最後まで全力でやりきるしかない”という潔さや割り切りのような感情が強くなる傾向にある。だからサラバーズも、ここまで清々しく、爽やかに演奏に向かうことができたのだと思う。

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 その光景を見ながら思い出した。古舘は先日のインタビューの中で、かつて自分たちにプロデューサーとして関わった中尾憲太郎といしわたり淳司の名を挙げたが、中尾が在籍したNUMBER GIRLも、いしわたりのスーパーカーも、最後のライブではセンチな感情より、ただひたすらそのときの音を鳴らすだけのパフォーマンスを見せたものだったことを。もっとも、それはバンドそれぞれによる。THE YELLOW MONKEYやBLANKEY JET CITY、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのラスト・ライブは、いつものように演奏しているようでありながら、やや異なる姿を見せる場面もあった(以上、いずれも10数年前に活動にピリオドを打った日本のロック・バンドたちを例えに挙げたが、関心がある人は残された映像作品を参照してみてほしい)。

バンドの青春物語は、ファンも一緒になって見ることができる、尊い夢の輝きなのである

 ひとつ言えるのは、解散や休止をするバンドが本当にしんどいのは、その事実を公式に発表する以前、つまり決断に至るまでの過程である。サラバーズは苦しみの道中について、取材の席で語ってくれた。だけど彼らはこの最後のツアーで、その時期のシングル曲たち……つまり「アンデスの街で」「文学のススメ」「HOT HOT HOT!」「床には君のカーディガン」をしっかりと演奏してくれたのだ。これには感動した。自分たちはたくさん苦しみ、もがいたし、そこで道を見失うこともあったかもしれない。だけど、この曲たちだって、次の向かう先を見出そうとして必死になって作った、大切な曲たちなんだよ……と言っているように思えたのだ。

 そして思う。サラバーズの歩みは、早いうちから注目を集めたものの、途中段階は決してうまくいくものではなかった。ただ、そこも含めてバンドであり、青春なのだということを。
 そもそもロックは、今でこそ年配のバンドがたくさんいたりはするものの、そもそもは、まさに青春のような音楽である。とくにサラバーズのようにメンバーたちの青春時代に始まっているバンドほどその感覚は強い。バンドは成長するたびに周囲を取り込み、多くのファンを巻き込み、それぞれの心の中にドラマをたくさん作っていく表現体なのだ。“カッコいい!”“お前ら最高!”というときも、“今日は今イチ”“この曲、微妙”みたいに思ってしまう瞬間だって、そのドラマのたしかなひとつずつ。そしてメンバー間の呼吸や興奮をファンは共有し、感動を一緒にわかち合っていく。だからバンドの青春物語は、ファンも一緒になって見ることができる、尊い夢の輝きなのである。

このバンドの初期の曲のすさまじい清冽さ

 だけどその夢は、いつしか変質していく。メンバーが成長し、経験を積み、歳を重ねると、それぞれが変わり、バンド内での関係性も変わっていく。また、プロでやっている以上、作品がどれだけ支持されたのか、いいライブをやってこれているかどうかという状況からの影響も、もちろんある。あえて業界的な視点で見れば、サラバーズの場合は、どこかのタイミングで時流とかみ合い、もっと高いセールスをあげていれば、(それがバンドにどう作用するかはさて置いて)違うドラマが起こっていただろう。
 ところで今夜改めて感じたのは、このバンドの初期の曲のすさまじい清冽さだ。ことに「China」「SAD GIRL」「Hey My Sister」「サリンジャー」……こうしたロック・ナンバーのヒリヒリした感覚は、彼らの登場した頃の最大のインパクトだった。僕がサラバーズを初めて観たのは5年前、彼らが根城にしていた学芸大学駅にあるメイプルハウスだが、その頃のステージでの4人はまったくぶっきらぼうで、MCなどほとんどなし。どう聴かせるか、見せるか、楽しませるかなんて工夫などなく、思いきり叫んで鳴らして突っ走る! みたいな、ただただ衝動をぶつけるギター・バンドだった。そこは先述のNUMBER GIRL(「鉄風、鋭くなって」をカバーしたことも)やスーパーカーの、とくに初期のサウンドと通底するところがある。ただ、NUMBER GIRLもスーパーカーも、そののちには音楽面で大きな進化を遂げていき、そのまま発展していった末に飽和点を迎えた。しかしサラバーズの場合は、変化していこうとした途中で頓挫し、そこで自分たちの限界にブチ当たってしまったのだ。これはもうバンドごとに物語が違うとしか言いようがない。

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 カバーつながりで話をつなげると、この日はアンコールで、くるりの「東京」が演奏された。サラバーズはこの曲をインディー時代から演奏しているが、過去にはもうひとつ、フジファブリックの「茜色の夕日」もカバーしている。この2バンドとサラバーズとは、歌の文学性の面で通じるところがあると言えるだろう。そして、くるりとフジファブリックは、メンバーの顔触れや音楽性の変化をくり返しながらも、現在も第一線で活躍し続けている。
 こうした偉大な先輩バンドたちのことを思うと、サラバーズがいかにナイーブだったかがわかる。その純心さやモロさをバンド表現における強さに還元するまで持ちこたえられなかった、と言うべきか。その弱さゆえに、古舘がこのバンドに永遠性を求めても、音楽の神様は微笑んでくれなかった。だけどそれが幼なじみ同士が結成したサラバーズというバンドだったのだろう。彼らはあり方も音楽も、あまりにも青春的だった。

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「ありがとう! また、どっかで」

 2時間のラスト・ライブの最後は「Dub Song」だった。4人はバンドの歴史を、高校時代に作った曲で締めたのだ。「ありがとう! また、どっかで」と言った古舘。どこかで再会するとき、今23歳の彼らは何歳になっているだろう。もっと大人になっているだろうか……。
 そう、大人になるってのは、ほんとにやっかいだ。経験や知識や知恵が身に付くおかげで強くもなれるし、生きていくための処世術を体得することもできる。その一方で失っていくものは数多い。若さ、瑞々しさ、純粋さ、新鮮な気持ち……。そして人というのは生きれば生きるほど、大人になればなるほど、責任とか立場とか義務とか、面倒臭いものが背中にどんどん積み重ねられていくものなのだ。
 人が変わっていく切なさ、何かが終わっていく儚さを歌ってきたサラバーズは、バンドとして、そんな大人集団になりきれなかった。それはバンドのストーリーとしては、決して成功とは言えないかもしれない。でも、だからこそ思う。サラバーズは間違いなく、彼らの、そしてファンにとっての青春であり、その輝きを放ったままで終わっていったバンドなのだと。
 終演後のメンバーたちは、たくさんの人たちと話していた。関係者や友人みんなと、溢れんばかりの笑顔で。僕が「メイプルハウスで再結成ライブがあったら観に行くよ。何年後かにね」と言ったら、古舘は「はい! 何十年後かに(笑)」と返してくれた。何十年後? それが本当ならメンバーは大人も大人、押しも押されぬ中年になっているな……。
 サラバーズの4人の青春。楽しいことも苦しいこともたくさんあっただろうけど、それに全力で向き合ってきた彼らに、僕は心の底から拍手を送りたい。君たちのことは、君たちの音楽に心を動かされた人たちそれぞれの胸の中で、ずっと生きていくと思う。
 でも、もしかしたら、またどこかで会おう。会えたらいいな。だって青春は終わっても、人生は続いていくんだから。そこで君たちがどんな大人になったのか、見てみたい気がするから。

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SETLIST

01. China
02. フランシスコサンセット
03. シンセサイザー
04. SAD GIRL
05. Hey My Sister
06. パーカーの子
07. さらさら
08. アンデスの街で
09. ニーチェに聞く
10. 夏の夜
11. セイタカアワダチソウ
12. 文学のススメ
13. チンギスハンとヘップバーン
14. 仏教ソング
15. HOT HOT HOT!
16. 千客万来
17. ディタラトゥエンティ
18. オールド台湾
19. 床には君のカーディガン
20. 愛しておくれ
21. 喉が嗄れるまで
<ENCORE>
01. バンドを始めた頃
02. 東京
03. Disaster of Youth
<W ENCORE>
01.サリンジャー
<WW ENCORE>
01. Dub Song

PROFILE

ザ・サラバーズ/古舘佑太郎(vo、g)、藤川雄太(ds)、藤井清也(g)、小林亮平(b)。’08年に高校の同級生によって結成。’10年に“FUJI ROCK FESTIVAL 2010”の“ROOKIE A GO-GO”に出演。同年に元ナンバーガールの中尾憲太郎をプロデューサーに迎えインディーズ1stミニ・アルバム『C’mon Dresden.』をリリース。2013年9月にアルバム『珍文完聞 -Chin Bung Kan Bung-』でメジャー・デビューを果たす。2015年に入ってからは3月16日にアルバム『青春の象徴 恋のすべて』をリリース。今回レポートを掲載した3月25日の渋谷CLUB QUATTRO公演をもって無期限活動休止に入った。なお、ギターの藤井はa flood of circleのサポート・ギターとしてライブ出演など行うことが決定している。

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