Helsinki Lambda Club – 2013年に結成し、翌年行われたUK.PROJECT主催オーディションで見事最優秀賞アーティストに選ばれた4人組バンドが1stミニ・アルバムをリリース!

Helsinki Lambda Club

オーセンティックなロック・ミュージックに対する造詣と“誰もやっていないことをやる”という意思。一筋縄ではいかないバンド・アンサンブルと優れてポップなメロディ。内省的で痛々しい雰囲気とあっけらかんとした明るさがひとつになった歌。相反する要素を絶妙なバランスで共存させることで、唯一無二の音楽へと昇華させる——そんなバンドの個性がはっきりと感じとれる作品だ。

UK.PROJECT主催のオーディション“Evolution!Generation!Situation!”で最優秀賞を獲得したHelsinki Lambda Clubが1stミニ・アルバム『olutta』を完成させた。2014年12月にリリースした枚数限定シングル「ヘルシンキラムダクラブのお通し」のリード曲「バンドワゴネスク」がFM局を中心に話題を集めるなど、確実に知名度を上げている彼ら。“単純にグッとくる曲を作ろう”というモチベーションのもとで制作された本作には、ポップ&ストレンジなこのバンドの個性が生々しいサウンドとともに刻み込まれている。いまやバンド・シーンの台風の目になりつつあるバンドの現状と本作の制作プロセスについて、フロントマンの橋本薫(vo、g)に聞いた。

★Helsinki Lambda Clubのインタビューも載った“Evolution!Generation!Situation!”特設ページはこちらから

INTERVIEW & TEXT BY 森 朋之

 

“あれこれ考えず、単純にグッとくる曲をやろう”と思って

──昨年の夏、UK.PROJECT主催のオーディションで最優秀賞を獲得。シングル「ヘルシンキラムダクラブのお通し」も注目を集めてるし、いい感じの活動が続いてるんじゃないですか?

そうですね……。曲を知ってくれてる人は増えてる気がしますけど、まあ、ちょっとずつですかね。そこまで劇的な変化は感じてないんですけど(笑)、着実にやっているので。ライブも月4本くらいのペースで続けてますからね。

──3月18日にリリースされる1stミニ・アルバム『olutta』も、バンドの個性がわかりやすく示された作品に仕上がってますよね。制作に入る前はどんなアルバムにしようと思ってたんですか?

シングルも結構いろんな人に聴いてもらえたと思うんですけど、それは別にして、アルバムでも推しの1曲になるようなキラーチューンが欲しいと思ってたんですよね、最初。そういうモードで曲を作ってたんですけど、なかなかいいと思えるものが出来なくて。“面白いけど、あんまり響いてこないな”みたいな曲しか作れなかったというか。そこでまたいろいろ考えて……たぶん、キラーチューンに捉われすぎてたんでしょうね。

──気持ちはわかりますけどね。最初のミニ・アルバムだから、代表曲となりうるようなナンバーを入れたいっていう。

そうなんですよ。で、いろいろと迷っている時期にandymoriの解散ライブとか、踊ってばかりの国のワンマンを観に行って。ぜんぜん小細工がないというか、歌の力、メロディの力でドーン! とライブをやってるバンドを観て、形に捉われてた自分がちょっと恥ずかしくなっちゃったんですよ。そこから“あれこれ考えず、単純にグッとくる曲をやろう”と思って。そこで方向転換してから、このアルバムがまとまっていった感じです。音楽的に面白いことよりも、グッと来る曲が集まったんじゃないかな、と。

──アレンジのアイデアは面白いと思いますけどね、どの曲も。

あ、そうですか?

──でも、軸になっているのはやっぱり橋本さんの歌で。いい意味で聴きやすいアルバムになってると思います。

ありがとうございます。そう、今回はわりとまとまってると思うんですよね。制作の時間もギリギリだったんですけど、“これでいい”と納得できるところまでは持っていけたので。

──それぞれの楽曲についても聞かせてください。まず1曲目の「All My Loving」はエッジの効いたギターリフを中心としたアッパー・チューン。すでにライブでは定番になってますよね。

デビューする前に作ったアルバムにも収録してる曲ですからね。わかりやすくてストレートな曲だから、アルバム全体の雰囲気にも通じると思って。作ったのはもう2年くらい前なんですけど。

──その頃のバンドの状況って、どんな感じだったんですか?

ちょうど大学を卒業するくらいですね。今のメンバーが揃ってなくて、バンド名も違ってたんですけど、全然先が見えない状況だったというか……。就活とかもしてたんですけど、いつもバンドのことが頭にあったから、まったく身が入ってなくて。結局、就活は途中で辞めたんですよね。バンドがうまくいってるわけではなかったんですけど、このままバンドを辞めて就職したら、絶対にあとで後悔すると思ったから。

──歌詞は彼女と別れて情けない状態になってる男の子が主人公ですが。

別れたというより、片思いの曲ですね。特に深い意味はないんですけど(笑)。

ロックに対するラブ・ソング

──「ユアンと踊れ」はシャッフル・ビートのロックンロール。シニカルなユーモアがたっぷり入った歌詞も含めて、これもヘルシンキらしい曲ですよね。

ヒネくれてますよね(笑)。アルバムのなかではこの曲がいちばん古くて。この曲を作ったときも、バンドがうまくいってない時期で……。僕の趣味じゃない周りのバンドがどんどん上にいったりして、“よくわかんねえな”っていうフラストレーションも強かったんですよ。

──やばいですね、その精神状態。でも、自分たちの音楽に対する自信はあったんでしょ?

そうなんですけどね。結局、自分たちのバンドがうまくいってないのがいちばん  のストレスだったんで。この曲はロックに対するラブ・ソングなんですよ。“自分はこういう音楽が好きだ”っていうことを歌ってるので。

──歌詞のなかにもすでに亡くなってしまった有名なロック・ミュージシャンの名前が出てきますが、彼らの音楽にも惹かれていた?

はい。最近はルーツが見えないバンドが多い気がしていて、自分としてはあまり面白くないなって思うんですよね。昔のロックがいちばんいいってことではないんだけど、それを継承する部分もあったほうがいいんじゃないかって。

──なるほど。歌詞にはケルアック(ジャック・ケルアック/’50年代のアメリカ・ビート文学を象徴する作家。代表作は「路上」)も登場しますが、音楽以外のカルチャーからインスパイアされることも多い?

多いかもしれません。大学でも美術を専攻してたんですよ。シュルレアリスムやダダイズムって、そのへんのバンドよりもパンクだなって思ったり(笑)。

──’70年代のポップ・アートまでは、音楽と芸術が密接に繋がってましたよね。

そうですね。そういうことも取り入れてみたいなとは思ってるんですけどね。

──そして3曲目の「Lost in the Supermarket」ですが、このタイトルって……。

ザ・クラッシュの曲にありますね(笑)。

──「All My Loving」もザ・ビートルズの超有名な曲のタイトルと同じですね。

ずるい感じですよね(笑)。「All My Loving」は“always all my loving to you”という歌詞が出てきたから、タイトルもコレにしたんですよ。「Lost in the Supermarket」の場合は……クラッシュのなかでも大好きな曲なんです。で、あの曲の雰囲気を取り込んでみようと思って。

──たしかに曲の持つムードが似てるんですよね。フレーズが同じとかではなくて。

ギターのフレーズがこうだから……って分析するんじゃなくて、曲を何回も聴いて、その雰囲気を自分の中に落とし込んだ状態で曲を作るというか。あえてちょっと離れたところからアプローチするような感じなんですけど、わりとそういう作り方はやってるかもしれないですね。歌詞は完全にパロディですね。タイトルに“Supermarket”って入ってるから、スーパーマーケットで働いてる人の歌にしようっていう。アルバムのなかでも、いちばん自分から遠い歌詞かもしれないです。

──’70年代後半のいわゆる“初期パンク”も好きなんですか?

よく聴いてましたね。最初はセックス・ピストルズだったんですけど、今はクラッシュ派です(笑)。高校くらいのときにやってたバンドもパンクばっかりだったんですよ。そのときは’90年代の西海岸系ですけど。

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客観的というか、バカになれないタイプかもしれない

──4曲目は「NIGHT MARKET」。マーケットで繋がってますが、こっちは歌を強調したメロディなナンバーですね。

バラードもやれるバンドでいたいんですよね。自然にやってるとどうしてもテンポの速い曲が増えていくので、意識的にやってる(バラード系の曲を作る)ところもあるかも。ノリのいい曲一辺倒ではなくて、じっくり聴ける曲もやれるバンドのほうが自分自身も好きだし。

──歌詞はかなり切ないラブ・ソング。

叶わない恋ですね。まさに去年がそうなんですけど、そういうダメージを食らってウジウジしてるときに“曲を書かなくちゃ”って思うので。

──バンドはオーディションで最優秀賞を取ったけど、プライベートは不調だった、と?

そうですね(笑)。そういうときじゃないと曲が出来ないんですけどね、むしろ。明るい歌詞はあんまり書けないし……。さっき“キラーチューン”の話をしましたけど、そういう曲に合うようなハッチャけた歌詞もなかなか書けないんですよ。書いたとしても、どうもグッと来なくて。

──自意識を吹っ飛ばして、思い切り盛り上がったりもしない?

いつも客観的というか、バカになれないタイプかもしれないですね。映画を観たり、ほかのバンドのライブに行っても、どこかで“吸収できるところはないか”って探してるところもあるし……。あ、でも、この前タイに遊びに行ったときは一晩中踊ったりしましたね。

──そのときは余計なことを考えず楽しめた?

“俺、踊っちゃってるよ”とは思ってましたけど(笑)。バックパッカーが集まってる場所で、夜中でも道端でガンガン音をかけて踊ってる人がたくさんいたんですよ。普段、あんまりダンス・ミュージックを聴くことはないんですけど、そのときは“ビートって大事だな”って感じたというか。歌詞とか歌を抜きにしたところで楽しめる曲もいいなって思えたので、それは今後、どこかで活きてくるかもしれないですね。

──「シンセミア」はフォーク・ロックのテイストが感じられるミディアム・チューン。サビのポップなメロディと“シンセミア”(強力な幻覚作用があるとされる植物)というワードの対比も面白いな、と。

“今はくすぶってるけど、パッと開いた状態が見てみたい”という感じですかね。これもやっぱり、自分の状況がもとになってるんですよね。自分のなかにある矛盾だったり、クソな部分を見つけて、落ち込んだり……。

──自分に向き合って曲を作るタイプなんでしょうね、やっぱり。

そうなんですかね……。この曲に関して言えば、<“イヤなこともいろいろある”ということをわかったうえで、一瞬でもいいから美しく盛り上がりたい>という願望が入ってるのかもしれないですね。例えばライブがうまくいってるときは、何も考えずに気持ちよくなれるので。

──そして「チョコレィト」は橋本さんの弾き語り。いきなりアコギの弾き語りがあっても、全然違和感ないですね。

これ、レコーディングの直前にサクッと出来た曲なんですよ。メンバーに聴かせたら“入れようよ”ということになったんですけど、バンドでアレンジしても普通に王道っぽい曲になりそうだから、あえて弾き語りのままやることにして。そのほうが歌が伝わると思ったので。

──これもまた、いろいろな思いが複雑に絡まった歌ですよね。特に“もういいだろ?って思う時もたまにある だけどいまだ生まれ続けるグッドメロディーが確かにある”というフレーズが印象的で。

例えばビートルズを聴いたりしてると、“これがあるんだから、もう音楽をやらなくてもいいんじゃないか”って思ったりもするんですよ。でも、今も良い音楽は生まれ続けているし、昔ばかり見ていてもしょうがない……ということも絡めつつ書いた曲ですね。

──ヘルシンキの音楽は十分に個性的だと思いますけどね。ルーツ・ミュージックをしっかり持ちつつ、このメンバーじゃないと出せない雰囲気が確実にあって。

なんて言うか、マネすることにも抵抗がないんですよね、いい意味で。それでも出ちゃう何かがバンドらしさだったり、個性だと思うんで。

──そしてラストの「テラー・トワイライト」ですが、これも“同じタイトル”シリーズですね。ペイヴメントも好きなんですか?

好きです(笑)。これはもう、トワイライト、夜明けというイメージから付けたタイトルなんですけどね。

──明るい未来を感じさせる歌ですからね。

必ず夜は明けるという、前向きな歌だと思います。最終的にはそういう方向に持っていきたいですからね。ウジウジ一辺倒では終わりたくないので(笑)。

──「olutta」(オルッタ/フィンランド語でビールの意味)というタイトルについては?

いろいろ考えて、最初はハシエンダ(’80年代後半、イギリスのファクトリー・レコードがマンチェスターで経営していたクラブ。ハッピーマンデーズをはじめとするバンドがパーティを行い、マッドチェスター・ムーヴメントの発信地となった)にしようと思ってたんですよ。ここから“発信するんだ”っていう。

──それも面白いけどね(笑)。

でも、<シングルは“お通し”だったから、次はビールじゃない?>ってアイデアが出て。ビールの言い方を調べてるうちに“olutta”という言葉を見つけたんですよ。聴きなれなくて、響きも字面もいいから“なんだろうこれ?”って気になるんじゃないかなって。

──このアルバムでバンドの個性と魅力がさらに伝わっていくと思うし、この先いいテンションで進めそうじゃないですか?

そうなるように頑張ります。今回はシンプルな感じになったと思うので、次はまた面白いことをやりたいなっていうモードになっていて。まあ、まだどうなるかわからないですけどね(笑)。アレコレやりたいタイプなので、あんまり散らかりすぎないようにやっていきたいです。

DISC INFORMATION

「olutta」
MINI ALBUM 2015.3.18 release
UK.PROJECT

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<CD>
■収録内容■
01. All My Loving
02. ユアンと踊れ
03. Lost in the Supermarket
04. NIGHT MARKET
05. シンセミア
06. チョコレィト
07. テラー・トワイライト

PROFILE

ヘルシンキラムダクラブ/佐久間公平(g)、アベヨウスケ(ds)、橋本薫(vo)、稲葉航大(b)。2013年7月に、橋本とアベが組んでいた前身バンドのメンバーチェンジを経て現在の4人が集まり、Helsinki Ramadan Clubに改名し活動をスタートさせ、ライブ会場限定CD「メッカで朝食を」、ライブ会場、disk union各店舗&オンラインショップにてミニ・アルバム『メシ喰わせろ』をリリース。2014年に開催されたUK.PROJECT主催のオーディション“Evolution!Generation!Situation!”にて最優秀賞を受賞。バンド名を“Helsinki Lambda Club”に変更し、同年12月10日にUK.PROJECTから2曲入り8cmシングルをリリースしている。

LIVE

BeA×Zepp Fukuoka presents FX2015
3月21日(土)・22日(日)Zepp福岡
※Helsinki Lambda Clubの出演は22日(日)のみ

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