The SALOVERS – 今作を最後に無期限活動休止に入るThe SALOVERSの“今”が詰まった『青春の象徴 恋のすべて』に込めた思いを、メンバー全員が語る。

The SALOVERS

これが4人の青春の最後の幕になるということか。The SALOVERSの2枚目のフル・アルバム『青春の象徴 恋のすべて』は、既報どおり、彼らのラスト・アルバムでもある。そして3月25日の渋谷クアトロでのライブをもって無期限の活動休止に入るこのバンドは、残りのわずかな期間を全力で駆け抜けるつもりでいるようだ。
本作には、サラバーズらしい無邪気さが詰まっている。楽しくのびのびと青春の輝きと終わりを奏でる4人は、苦悩しながらバンドを続けていくよりも、幼なじみであるお互いの関係のほうを選んだ。これにはおそらく様々な見方があるだろう。僕自身、まだ若い彼らには、もっと頑張って、現実に喰らいついてほしかったという思いもある。
しかしサラバーズとは、きっと最初から最後まで、笑顔でロックを歌いたがる男たちだったのだ。そして4人よりも先に大人になってしまった僕個人は、楽しいことを楽しくやり続けるためには、楽しくない場面をいくつもくぐり抜けていく強さが必要であることを痛いほど知っている。それを身につけるためのツラい時間を共に過ごす道を、4人は自ら断つ決断をした。それはそれで、ひとつの青春のあり方だと思う。
今回の取材は、かつての彼らがよく通っていた東京・江戸川橋のスタジオ跡地の近辺で行った。実はここは、4年前に「WHAT’s IN?」の本誌のほうで初めてサラバーズのインタビューと撮影を行った場所でもある。あとはもう突っ走るだけの彼らは、全員がスッキリしたような顔で、ちょっと懐かしそうな表情も見せながら集まり、とても正直に、すべてを話してくれた。相変わらず、しっかりとマジメでもあるし、よく笑いもする。そう長い間でもないのに、思えば、4人とも大人びてきたものだ。
サラバーズの青春の終わり。どうか最後まで見届けてほしい。

INTERVIEW & TEXT BY 青木 優 / PHOTOGRAPHY BY 古溪一道

 

最後の最後で“サラバーズって、こういうバンドなんだな”っていうこともわかることができた

──今日は、4年前と同じ場所で撮影したんですが。どうでした?

古舘佑太郎 もう4年前か……現地着いて、“ああ、そういえばここで撮ったな”って思い出しました、一気に。あと、“4年も経ったのか”って……あれは『バンドを始めた頃』(2011年リリースの2ndミニ・アルバム)のときですよね。そしたら、そんぐらい経つか。長いようで短い感じですよね。

藤川雄太 僕も、行って、“ここだ”って思ったな。懐かしいですね、この辺。

小林亮平 スタジオがつぶれちゃって、江戸川橋に来ること自体がなかったんで、“うわあ、懐かしい”っていうのと。さっき4年前の写真見せてもらって、“若いな”って思いました(笑)。めっちゃピアス付けてんだもん。

藤川 俺もめっちゃ痩せてた(笑)。

藤井清也 懐かしいです……寒かったです(笑)。

藤川 (笑)取材が久しぶりだよね? この3人は。

小林 この(ICレコーダーの)マイクを見るのが、すげえ久々(笑)。

古舘 4人で取材受けるの、めっちゃ久しぶりなんですよ。(前の)アルバムを出したのが3年前(2012年リリースの1stフル・アルバム『珍文完聞 -Chin Bung Kan Bung-』)ですし、それ以降も僕ひとりの取材ばっかりだったんで。まあアルバム出してないから当然なんですけど。

──で、サラバーズは、今年が始まって早々に無期限活動休止を発表したわけなんですが。今はどんな気持ちですか?

古舘 そうですね……いや、だからアルバムが全然出来なかったんです。メジャー・デビューしたら普通、すぐ出すじゃないですか。立て続けに。それが僕らの場合、結局2年半ぐらいかかったんです。絶対出来ないだろうなと思ってたんですよ、アルバムは。いや、最初の頃は頑張ってましたけど、もう2年以上経つと……。でも今はこのアルバムが出来たんで、その喜びが大きいですね。僕個人は。こんな幸せなことはない! と思ってて。出来ない間は、めちゃくちゃしんどかったですけど……出来たし、作らせてもらえたことがありがたいという気持ちなんで。まあだから、世間的には無期限休止のほうが前に出てると思うんですけど、自分の気持ちはそっちよりも、むしろこのアルバムのほうが大きいんですよ。

藤川 みんなでこのアルバムを作ってて、それまではなかなか前に進まなくて……。でも今は1個のゴールっていうか、目指す地点が見つかったんで、楽しくやれています。

小林 アルバムより、4人で無期限休止にしようって話のほうが先だったんですね。

──ああ、そうなんだ?

小林 で、それを決めたあとから、たぶん各々のしこりが取れたっていうか、アルバムに向けての意欲が高まったというか。それでほんとにスコーンって出来たアルバムなので、フル(=古舘)が言ったように、俺ら的には“アルバム、やっとできた!”っていううれしさのほうが全然あったんで。だから(休止発表の)コメントにも書いたように、後悔とか悲しいっていうよりかは、うれしい気持ちのほうがありますね。

藤井 ……うれしいです、いいアルバムが出来て。自分たちで全部作ったんで、自分たちらしいアルバムが最後に出来て、良かったです。

──そうですね。サラバーズらしいアルバムだなって、すごく思った。

古舘 だから正直、この『青春の象徴 恋のすべて』ってアルバムが出せないまま終わってたら、たぶんサラバーズを僕自身がそんなに……まあ嫌いじゃないですけど、そんなに大好きじゃないまま終わってたかもしれないですね。だけど最後にこういうアルバムを……今、清也が言ったみたいに大人がいない状態、もうほんとに自分たち発信で作ったので。それって高校生のとき以来なんですけど、ほんとに自分たちのありのままで作品を作れたから、最後の最後で“サラバーズって、こういうバンドなんだな”っていうこともわかることができたし。好きになれて無期限活動休止を迎えられるから……そこはもうほんとに、まあ最初に戻りますけど、作れて良かったです。その直前まで作る気なかったんですけど。

──あ、そうなの?

古舘 そうそう、もう何もせず。だけど突如やる気になったんです。ある日突然、みんなに「無期限活動休止にしよう」って話をして。で、4人とも一切何もする気なかったんで、ファンに「アルバムいつ出るの?」とか言われても「100年後かもね」と適当に言っちゃうような、腐ったような感じだったんですけどね。でも大阪(でのライブ)の帰りに、僕が突然「やりたい!」って言い出した。気が変わって。サービスエリアに寄って、そんときに僕はみんなに伝えたんですけど。そこでもし、ひとりでも同じ気持ちになれなかったら、たぶんやれなかった。そこは結構不安だったんです。3時間前までは「何もしなくて終わり」って言ってた奴が、突然「アルバム作って、そのためにワンマンしたい」って言い出した。やっぱ僕ら、幼なじみなので、目を見たら何考えてるかとか、ひとつになれてるかなれてないかが、もう残酷なほどわかっちゃうんですよ。

3人 (笑)

_ww_tokusyu_jibunbakari_5_08

※4年前にWHAT’s IN?本誌に初登場した際の撮り下ろし写真。

古舘 だからこそ、めんどくさいし。でもひとつになったときはみんなで共有するのも早いので、そのときはほんとに、4人ともが同じ表情をしたんですね。それがあったから! だからもう次の日に僕がマネージャーとかレコーディング・スタジオに全部電話して、動き出してからほんと1ヵ月半ぐらいで作ったんで。2年半かかって出来なかったのに、1ヵ月で出来ちゃったから……ほんとに、このアルバムのときはひとつになれたんでしょうね。

_ww_tokusyu_jibunbakari_5_08

※4年前と同じ場所にて。

音楽をやってる意味が、まったくわかんなくなってた

──わかりました。改めて順番を追いたいんだけど、そもそも活動休止に至ったいきさつは何なんでしょう?

古舘 単純に言うと、煮詰まってたってのが大きいですね。いちばん大きかったのは、アルバムをずっと作ってたのに、結局どこにも行きつけないまま、中途半端な状態でダラダラ時間だけが過ぎてったんですよ。で、まず最初にシングル出して……でも一生懸命やったのに、どこにも着地できなくて。過去の作品を否定するのは、あまり良くないんですけどね。それで結局、アルバムに行かない。

──それは「文学のススメ」(2013年リリースのシングル)とかの頃?

古舘 そうですね。で、ただただ給料はもらうけどアルバムは出さないっていう状態ですよね。そうこうしてるうちに……2年で2枚アルバム出す契約をレーベルとしてたんですけど、僕らは3年間で1枚しか出してなくて、もう契約切れになってしまって。それに怒りとかも起こらないんですよ。それも当然なんで。だからこそ、“ああ、ダラダラ過ごしてしまったな”という後悔もありますけどね。

──うーん、ダラダラではないんじゃない?

古舘 いやあ、でも後半は……去年とかは相当ダラダラしてましたよ。かなりダラダラしてたよな?

小林 “スタジオ入って新曲合わせよう”ってなっても、誰も案を出さずに、ひたすら同じフレーズをみんな弾き続ける、みたいな。

古舘 しかも俺、映画(入江悠監督の「日々ロック」)に出たりしてたんで。何やってんだ! って話ですよね。

藤川 そうそう。“俺ら、何なんだ!?”っていう。

小林 もうライブしかないもんね、やることが。それも新曲がないぶん、リハーサルでもいつものセットリストっていうか、決まった曲たちをちょっと順番変えて練習する、みたいな。で、「おつかれ」って言って、次の日ライブやって、また「バイバイ」……っていう感じの生活だったんで。

──じゃあ、もうちょっと翻って聞くけど。その、ずっと作ってたアルバムが形にならなかったのはなんでなの?

古舘 いや、僕が、音楽をやってる意味が、まったくわかんなくなってたんです。マネージャーに「なんで歌ってるのか、なんで曲作ってるのか、わからない」って言われたときがあったんですけど、何も言い返せない状態で……だから“なるほど”って思ったんですよ。必死に、ある種マラソン感覚でシングルを切ってって、そこでゴールの達成感も味わえず、ただハァハァ息が切れてる状態だったんです。走る喜びもなければ……。

──そうなんだ?

古舘 いや、なかったですね。でも必死でしたよ。ただただ必死でした。

──“何かを作らなきゃいけない”というところで?

古舘 そうそう。もともと僕は感情型の人間なんで、感情メインで曲を作ってかなきゃダメなタイプなんですよ。でも当時はとにかくすごいタイムスケジュールの中、もちろん周りにもスタッフとかいっぱいいて、“早く作んなきゃ”っていうところで、メンバーもそうですけど、とくに俺は焦りながら作った作品もあったんですよ。で、焦って焦って、出したあとに“あれ結局何だったんだろう?”みたいなのがあったんです。そういうので“サラバーズって何だろう?”っていうのを見失ってたんですよね、僕らは。確実に。自分たちのカラーだったり、やりたいものを。で、それは……僕らがラッキーな部分でもあり、アンラッキーな部分でもあるんですけど、17ぐらいですぐにスカウトされたのが大きくて。まだ、ただの高校生バンドの段階から、わりとすぐに(マネージメント)会社を付けて活動したりするなかで、そこに対する免疫が弱かったんですよ。僕なんかすごく弱かったんで。

──ああ、そうですか?

古舘 はい。ただ、僕らには今までプロデューサーに中尾憲太郎と、いしわたり淳司というふたりがいて……そのふたりに対しては、ほんとに感謝してるんです。あのふたりがいなかったら僕ら、もっと全然ダメでした。あのふたりがいてくれたから今があるんですけど……かたや、自分は感情型で、そこにスケジュールもあって……“どんどん作んなきゃ”という状況ですごく疲弊したんですよね。で、僕がエンジンかかんないとバンドは進まないんで。それでどんどん……ダラダラしてしまったっていうのが大きいですかね。それで去年の夏を迎えたわけです。そのときに1回だけ、4人で話したんですよ。でも話がまとまんなくて、後半は公園にフリスビーしに行く会になりました。

3人 (爆笑)

古舘 あまりに話が進まないんで。幼なじみ特有なんですけど、僕らって揃うとめんどくさいんですよ。一人ひとり(が相手)だと全然いいんですけど、同じ空間に4人だけでいるっていうのが、たぶん、みんなツラい。なので後半、フリスビーをしに行きました。すごい風が強かったんですけど。やったよな? フリスビー。

小林 やったやった。めっちゃやった!

古舘 で、4人で笑って帰って、何も進まないのが1回ありました。で、そっからみんなそれぞれ、自分の好き勝手やってて……。

“高校生のときのその感情でガーッてやってる自分を
必死にコピーしようとしてんじゃないかな”って

140402_live_champagne1

──そうですか。ここまでの話だと、古舘くんがひとりで抱え込んで煮詰まってる印象を受けるんだけど。

藤川 でも、みんなで死んでたよね?

古舘 (笑)まあ確実に、4人で死んでたね。

小林 まずバンドができたのは、音楽無知な3人を誘ったフルがいたからなんです。で、自分の好きな音楽を教えてくれて、“俺はこういう曲を書きたい”って書いていって、それに一緒になってみんなで作ったバンドだったんで。それは全部の責任をフルにするとかじゃなく、フルが森に入っちゃうと、俺らもそこに付いてっちゃって、わかんなくなって……結局もうグルグルと闇に陥ってく、みたいな。

古舘 3人のうち誰かが死んでたり、森に迷い込むことはあるんですよ。しかも周期的に3人とも死んでくんで。

小林 ああ(笑)。俺、1回抜けてるし(注/小林は2年前に体調を崩し、ライブ・ツアーを休んだことがある)。

古舘 そう。でも俺さえしっかりしてれば大丈夫なんです。だから今までやってこれた。だけど同じように俺がそうなったら、おしまいなんですよね。そうなったのが去年の夏でしょう。その頃、(アルバムは)6割ぐらい、出来てたっけ?

小林 6割ぐらい出来てたんですけど、“あと2、3曲あればアルバム出来るね”ぐらいの場所から一切進まない、みたいな状態が2ヵ月続いて。しびれを切らして“もうバンド、続けるのはムリかもしれない”みたいな感じになり……。

古舘 で、インディーズから誘いもあったんですよ。でも僕はこの状態で行きたくなかったんです。自分たちが全然まだ固まってないのに、また人を頼って行こうとするスタンスが、かつての自分みたいでイヤで。で……みんな23だし、こうダラダラ4人で過ごすよりかは、それぞれ自分の好きなことを、この4人にしばられずにやったほうがいいのかなと思って、話をしたんです。

140402_live_champagne6

──そうですか。その、活動休止を決めたときは……。

古舘 僕が個人個人と話をしました。最初、雄太に言って。そのあとケバ(=小林)、清也って、立て続けに言ったんですけど。雄太は、たしか……。

藤川 夏だっけ?

古舘 事務所のトップの人にゴルフに連れて行ってもらった、そのラウンドの帰りに言ったんです。で、次はケバで、飲みに行って、言いました。清也には名古屋のビジネスホテルで言いました。ツアー先。初日ですね。

小林 僕とかは、ライブの練習のスタジオがちょっと早めに終わって、帰り際に「今から飲みに行こう」って言われて。それで話したんだよね。

古舘 そう。そんときケバに「最近のサラバーズは、高校時代のサラバーズのコピー・バンドをやってるようだ」って名言を残されたんです。

小林 いや、自分でライブやってて、ずっとそれはあったんですよね……「サリンジャー」とかやってても。高校生のときなんか、楽器も弾けないけど、それこそ大きいステージに出させてもらってやるときでも“感情でやってしまえ!”ってのがあったんですけど。それがそんときはライブ中まったくなくて、何のために「サリンジャー」をやってるのかがわからなくて。それで“やっぱお金もらってる以上それをちゃんとしないといけない”という気持ちもあって、ずっと考えてて思ったのが、“高校生のときのその感情でガーッてやってる自分を必死にコピーしようとしてんじゃないかな”みたいな。7年やってたら、楽器のレベルは徐々に上がってくかもしれないけど、今はその“曲を伝える!”っていう気持ちは皆無でやってるなあ、って……。

古舘 これはかなり的を得てるんですよね。ほんと3人とも、言葉は違うけど、同じ感じでしたね。リアクションが。

藤川 僕にはそういう名言はなかったですけど(笑)。僕はもう素直に、そっち(休止)のほうが、いいと思ったので。ほんとに、そのときの現状を見ると、それが4人にとっていいなと思ったから。

ただただ自分たち4人の今を刻みたかった

WW_livereport_Champagne_02

──すでにそういう状態だったんだ。藤井くんとは?

藤井 ああ、しっぽり……。ホテルの部屋で、しっぽり。

古舘 かなりしっぽり話したね。あと、清也は(古舘の出演した)映画の後半のシーンを褒めてくれたんですよ。「あそこのシーンのフルはカッコ良かった」って、演技をすげえ褒めてくれた(笑)。だから、たぶん……みんなもう、わかってたんですよね。こうなることを。そこに驚きとかは……。

藤川 まあ驚きはないね。ない。

古舘 うん、ない。むしろそんときよりも、やっぱアルバム作ってるときの1ヵ月半のほうが濃すぎて。

小林 たしかに。

古舘 ねえ? その記憶ばっかりですよ。だし……この前、誰かに「古舘くんは別れとか終わりをずっと歌ってればいいんだ」って言われたんですよ。で、普通に考えて、たしかにそうなんですよね。このサラバーズって名前は偶然つけたんですけど、永遠を求めちゃダメなんですよ、僕みたいな人間は。メジャー・デビューして頑張ろうとしてたときはこの4人で永遠を求めてたんですよね。時間を。ずっと一緒にいたい、ずっとやっていきたい、っていう。でも間違ってたんです。バンドを始めたときも、失恋だったり自分の喪失感だったりが歌う理由であり、それがすべてだったわけですよ。でもそっから永遠を求め出してたから、どんどん狂ってったというか、歌うこともよくわかんなくなってった。だから2年半も出来なかったし。だけどこうやってサラバーズというものを1回終えようと、1回バラバラになろうと。これもある種の別れじゃないですか。そうなった途端に、一気にこのアルバム作ったと考えると、やっぱり自分はこういう状況がいちばん曲を作ったり創作意欲に繋がるんだなと思いました。

──ああ、こういうふうに、自分にとっての何かが終わっていくような状況が?

古舘 はい。だけどプロの人は、商売としてちゃんと作っていかなきゃダメなんです。そういうのはムリなんでしょうね。“サラバーズ終わるんだ”ってなった途端に、こうやって作れたので。

140402_live_champagne6

──うーん、まあそうかもしれないけど、でも成長していく過程で人間は変わっていくし、自分の違う可能性だって試したいじゃないですか。そうやって変わっていこうとしたのも、古舘くんなりの誠実な戦いだったと思うよ。

古舘 まあ、そうですね……“誠実な戦い”って、いいですね(笑)。だからその戦いを終えて、疲れきって、このまま終わるかどうしようか迷ったときに、最後に自分たちに帰ってこれたのはいいですよね。だから歌詞でもウソを言わずに書けたんで、楽しかったですよ。やっぱ“このまま終わりたくない”って、どっかで思ってたから“アルバム作る!”ってなったのかな。ほんと、音楽やってる意味もわかんない……って状態だったけど、(サービスエリアで)このアルバム作るってなったあとの機材車から僕、歌詞書き直してたんで。だからこれはすごく無欲で純粋なアルバムなんですよ。数字を出したいとか売れたいとか、そういうのがまったくない。ただただ自分たち4人の今を刻みたかったっていうだけのアルバムなんですよね。だから誰の意見も聞いてないし、何も目指してないし。

──「Disaster of Youth」の“友情の全てを代償にしてまで目指す/夢に疲れただけさ”という歌詞はそのまんま、ということですね。

古舘 そうですね。これはもう、まんまですね。迷ってるときはわりとフィクションだったり、本音を歌うのをずっとやめてたところがあるんですけど、でもこのアルバムではウソつく必要はないんで、久しぶりに自分の本音を書けたし、そのときにいちばん自分の歌詞は文学的になるのかなと思いました。初期の頃よく「文学的な歌詞だね」って言われたんですけど、それってただただ素直に本音を書いてたからなんですよね。それを自分の言葉を変えちゃってからそう言われなくなったのは、やっぱ本音を歌ってなかったからだろうし。

自分たちのことを好きになりたかった

──そうですか。たださ……さっき“驚きはない”って話だったけど、そこでみんなは“しょうがないな”という感じだったんですか? 休止することについて。ほかにやりようはなかったんですか?

藤川 やりよう……やりようがあるとかは、僕はあまり思わなかったですね。“だよね”っていう感じですかね。いろいろストップしたんで、これ以上このままやってても何も生まれることはなかったかなって思うし。そう考えると、もう、あの状況だったら、やっぱり……。

藤井 ライブも、ただ単に、こなしてるだけだったんで……。

古舘 ……そうですね。ライブ、そうだね、こなしまくってましたね。

藤井 ……しょうがない。

──あまり燃えない感じだったってこと?

古舘 仕事みたいな感じでした。

小林 良くも悪くもないライブ、続いてたんですよね。たしかに。

藤井 化学反応がなかった気がします。

──うーん、それはツラいですね。続けるのは。

古舘 だから、あのまま終わってたら恐ろしいですよ、ほんとに。僕の中には、“何でも最後はちゃんと終わらない限り、次に進めない”っていうポリシーがあるんですよ。相当腐ってたけど、こういうふうにちゃんと動きだせたのは、それもたぶんあると思うんです。だからこの作品がこの4人にとって次に進む上での……直接的にいい影響を与えなくてもいいんですけど、“やりきった”っていう……区切りにしたいんですよ。次に繋がるようなものにしたいっていうか。だから俺らは“3月までマジでバンド頑張ろう”と、“3月25日まで絶対に”って決めたんです。このアルバムが出来て、「これだったら、もっとやれるんじゃないか」「次も聴きたい」って言われるんですけど、それはないんですよ。そういうつもりは、今は。まあ無期限休止なんで、いつかはそうなるかもしれないですけど、でも少なくとも“このアルバム出来たから、またバンドやりたい”“もう1曲サラバーズで”とかは、ないですね。まったく。むしろ、これがすべてなんで。

──終わりがあるから頑張れた、ということ?

古舘 ……というより……もちろんそれもありますけど、やっぱ…………たぶん、自分たちのことを好きになりたかったってのが、俺はあると思います。最後の最後ぐらい。最後ぐらい、好きになって終わりたかったっていう。

──それまでは嫌いになりそうだった?

古舘 いや、もう、なってました。それは。

──うーん、それは悲しいですね。青春時代を懸けてきたのに。

古舘 そうですね……だから……“いやあ、俺らなんて”って思っちゃってて。でもサラバーズを応援してくれてる人……それはファンもそうだし、「WHAT’s IN?」にもこうやって取材してもらえるとか、そういう人たちに対して申し訳ないという気持ちはあります。その本人が“俺たちなんて”って思ってたって、すごい良くないじゃないですか。だからそこは、最後ぐらい胸を張ってやりたいですね。_ww_tokusyu_jibunbakari_5_08

こんなアホな、軽快な曲なのに、グッと来るんです

──うん、そうですか。あのさ、このアルバムがサラバーズらしいと思うのは、今までの歩みも出てるし、勢い任せのところも、楽しい感じもちゃんと出てるからなの。そんな中でもいろんなアレンジをやってるし。

古舘 うん。だから“歌いたいことがない”って思ってたけど、実は灯台下暗しで、あったんですよ。それはこのバンド4人のことだったんですよね。それに気づきました。

──そうだね。歌詞の“僕ら”という表現に、仲間たちというニュアンスを感じるところもあって、それにグッと来ます。それに、藤井くんも歌詞を書いてますね。

古舘 あ、そうだ。清也の曲入ってるんですよ! この曲いいんですよねえ。しかもMV作ってるんですよ。

──この「シンセサイザー」という曲は、どういう着想から作ったんですか?

藤井 えーと……まあ別れ話ですね(笑)。

3人 (爆笑)

小林 (笑)冒頭ぐらいでわかるよ、そんなの! “果たされた関係を終わらせるため”って言ってるから。

古舘 初でしょ? 自分の曲でインタビュー受けるの。恥ずかしいよね。

藤井 (笑)恥ずかしいです。はい……いや、普通に駅から家に歩いて帰ってるとこをイメージしながら……えっとぉ………………。

3人 (爆笑)

──話に色をつけるのが苦手な男だな(笑)。ギターの音色ではできるのにね。

藤井 そうなんですよ……(笑)。

古舘 でもこれ、いいんですよ。やっぱ、初めて書いた1曲っていう潔さがあって。最初バラードだったんですけど、“たぶんこれ、ザ・フラテリスみたいにしたらいいなぁ”と思って、こういうアレンジにしたら、すごいハマったんですよ。清也自身が別れて、それを素直に曲にして……この曲がなかったら、このアルバムは絶対に完成してなかったでしょうね。僕としてはこういう曲を作ってくれて、すごくありがたかったです。

──で、このタイトルは何で?

古舘 これはタイトルが決まんなくて。

小林 お父さんの名前とかにしようとかしてたの(笑)。

藤井 「それはヤだ」って(笑)。

古舘 そう、そういうときは困ったら雄太に振るんです。そしたら雄太が「シンセ」って言いだしたんで、俺が「サイザー」って付けただけです。意味わかんない(笑)。歌詞、関係ないからな。

藤井 もう寄付しようと思ってた。サラバーズに(笑)。この曲は。

──そうですか。この9曲のうち、その短期間で作った曲もあるんですよね?

古舘 ほんとに(この期間内に)純粋に出来たのは、6曲目のバラード「セイタカアワダチソウ」ですね。元ネタはあったんですけど、まったく完成してなくて。ギリギリで完成しました。

小林 「ニーチェ(に聞く)」もそうじゃない?

古舘 「ニーチェ」は前からあったけど、生まれ変わった。「ニーチェ」はすごく好きなんですよ。手法として、歌詞で絶望的なことを言ってるけどもあっけらかんと歌う、というのをやったことなかったんで。こんなアホな、軽快な曲なのに、グッと来るんですよね。ほんとお先真っ暗な男4人が真っ暗な世界を明るく「素晴らしい!」って言うのが自分で気に入っちゃって……好きなんですよね。

──この歌詞の“青春のひと時は失敗の連続が化石になって輝きだすのかい?/才能はお金じゃ買えないね/そしたらニーチェが頷く”も本音だろうなと思った。

古舘 (笑)そうですね。だからもう、本音を歌うほうがいいですよね。

──で、最後の曲は「Dub Song」ってタイトルなんだけど?

古舘 これは高校2年ぐらいのときに作ったんですよ。とんでもなく前の曲で。それも「Love Song」ってタイトルの曲なんですけど、雄太に振ったら「Dub Song」つって、もうそれになっちゃったんです。

──それもですか(笑)。でも10代の頃の曲を最後に置くのはいいと思いますね。で、こうして話を聞くと、サラバーズというバンドは成長していく、変化をしていくことに適応できなかったし、音楽業界というビジネスの世界でやっていくことに立ち向かうことにできなかったのかな、と思ったんだけど。

古舘 いや、そうですね。完全に。そこを割り切れたら、もっと違ったでしょうね、僕らは。ビジネスということに目がいってたときもありますけど、常に、この幼なじみ4人という存在のほうが大きいというか。自分たちにとっては。今それでやれてれば、また違う楽しみもあったかもしんないですけど……でも17からスカウトされて、いい経験はできましたよ。ほんと。

分けるんですよ、青春時代を。10代に集約させるから、こんなに切なくなるわけです

──で、僕はこれがいちばん聞きたいんですけど……古舘くんは、大人になるということへの意識が強かったと思うんです。とくにここ数年は。

古舘 ああ、そうですね。

──例えば「ディタラトゥエンティ」(2012年リリースのシングル)だってそういう曲だったわけだし、このアルバムでもそういうところが見えるんです。大人になるって、どういうことだと思う?

古舘 いやぁ、それを模索……してる感じですかね。自分の中で。やっぱ意識してますね。だから歌詞でもそういうのばかり書いてる気がします。でも大人になるってどういうことなのか……わかんないからこそ、SFみたいな感じで興味が湧くというか。わかんない謎だからこそ。必死に歌詞とか書いて、心を落ち着かせようとしてる感じです。

──それに、かき立てられちゃう、突き上げられちゃうということ?

古舘 というか、単純に不安みたいなのもあります。わかんないから。このままどんどん歳をとってくことに恐怖みたいなのはありますよね。すごく。だから……法制度とかいろいろ変えて、青春時代をもうちょい長くしたほうがいいんじゃないかと思うんですけど。

──なんだそれは(笑)。法制度の問題なの?

古舘 23ぐらいから大人でいいんですけど。28ぐらいから、もう一回10代の、学生時代が戻ってくるシステム作ったら、もっと大人が変わるんじゃないかと思って。

3人 (苦笑)

古舘 分けるんですよ、青春時代を。10代に集約させるから、こんなに切なくなるわけです。分散させればいいんですよ。

藤川 青春を? 第2期が来るの?

古舘 そう! 切ないじゃないですか、10代のときみんなギュッと一緒にいて、大人になったら一気にバラバラになっちゃうのは。やれると思うんですよね、教育と社会と連動させれば。そしたら20代の間も“5年後には受験して学校入って部活動が待ってる”と思うと、仕事にも精を出せるし。

小林 部活もあるんだ(笑)。
古舘 授業もあるし。で、また「久しぶり」っつって。_ww_tokusyu_jibunbakari_5_08

──(笑)言ってることはわからなくもないけど。しかし異性の味もすっかり知ってしまってるようなオッサン手前の奴らが集まると、また違う気がするけどな。

古舘 そうなんですよね(笑)……結局それは、かつての青春時代のまねっこをしてるだけですね。そうだ、たしかに。それもそれで、切ないですね。みんなすべてをわかりきってるのに、青春時代を演じてるのは。

──そういうことを考えるんだね(笑)。でもこのアルバム・タイトルが言ってるように、このバンドが青春時代だったと言えるんだよね。

古舘 うん、そうですね。活動期間もそうですからね。

──わかりました。じゃあ最後にみんな、すでにコメントを出していますが、改めてファンに向けて、一言ずつお願いします。

古舘 僕はほんとに、「休止するのは寂しい」って言ってくれるのはうれしいですけど、でもそんなことよりもこのアルバムを聴いてほしいし、そっちに目がいってくれればいいなと思います。わがままですけど、聴いてくれればわかってもらえるような気がするんですよ。

藤川 最初の頃はお客さん、ほんと0人だったんです。それが最後のライブはソールドアウトするところまで来たのがうれしいですね。ほんとにうれしいです。

小林 7年バンドをやってきて……それこそ最初の1年は来てくれたけど、そこからメジャー・デビューして、“ああ、あのバンド違うな”“変わったからもういいや”とか思った人もいたんですけど。このアルバムは全部の感情が……さっきのクソみたいな時期の思いも、最初の頃の真っ白な気持ちも、体に染み込んだものが濾過されたような感じで出来たものだから、聴いてほしいですね。興味本位でもいいから手に取って、試聴機でもいいから聴いてほしいです。

藤井 アルバム、いいので。多くの人に聴いてもらいたいですね。

──ありがとうございました。でもなんだか、清々しい気がしますね。

古舘 そうですね。清々しいです。_ww_tokusyu_jibunbakari_5_08

DISC INFORMATION

ALBUM 2015.3.16 release
「青春の象徴 恋のすべて」
UNIVERSAL MUSIC & EMI ARTISTS

150312_interview_thesalovers01

<CD>
■収録内容■
01. Disaster of Youth
02. シンセサイザー
03. 千客万来
04. さらさら
05. ニーチェに聞く
06. セイタカアワダチソウ
07. パーカーの子
08. 喉が嗄れるまで(Album ver.)
09. Dub Song

PROFILE

ザ・サラバーズ/古舘佑太郎(vo、g)、藤川雄太(ds)、藤井清也(g)、小林亮平(b)。’08年に高校の同級生によって結成。’10年に“FUJI ROCK FESTIVAL 2010”の“ROOKIE A GO-GO”に出演。同年に元ナンバーガールの中尾憲太郎をプロデューサーに迎えインディーズ1stミニ・アルバム『C’mon Dresden.』をリリース。2013年9月にアルバム『珍文完聞 -Chin Bung Kan Bung-』でメジャー・デビューを果たす。2015年に入り、同年3月25日をもってバンドの無期限活動休止を発表した。

LIVE INFORMATION

The SALOVERS無期限活動休止ラストライブ「青春の象徴 恋のすべて」
3月16日(月)梅田CLUB QUATTRO
3月23日(月)東京キネマ倶楽部
3月25日(水)渋谷CLUB QUATTRO

関連リンク

OFFICIAL WEBSITE
Twitter
YouTube

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人