FOLKS – 北海道恵庭市発信のバンドの2ndミニ・アルバム。冬をテーマにした『SNOWTOWN』について、メイン・ソングライターの岩井郁人に話を聞く。

FOLKS

北海道は札幌のベッドタウンである新興住宅地、恵庭から日本、そして世界へ──。インターネットが情報格差を埋め、グローバルな音楽発信を可能にした2010年代の音楽シーンに鮮やかに切り込む5人組バンド、FOLKS。昨年2月のミニ・アルバム『NEWTOWN』から同年9月のシングル「HOMETOWN STORY」を経て、7曲入りの2ndミニ・アルバム『SNOWTOWN』が、花咲く春の季節を前にいよいよリリースされる。元・電気グルーヴの砂原良徳がリード曲「冬の向日葵」を含む2曲のプロデュースを手がけた本作において、エレクトロとバンド・サウンドのドリーミーな融合から浮かび上がるのは、北海道の美しくエモーショナルな雪景色とヴィヴィッドなバンドの個性だ。キラキラとその才能を輝かせるフロントマンの岩井郁人が試行錯誤から見出しつつあるバンドのあらたな方向性について語ってくれた。

INTERVIEW & TEXT BY 小野田雄

 

自分たちが住んでいる街やそのイメージ、映像や景色を音に変換

──ミニ・アルバム『NEWTOWN』でのメジャー・デビューから1年。改めて振り返ってみて、いかがですか?

僕らは結成してからまだ2年しか経っていない、歴史が浅いバンドなんですけど、去年2月に『NEWTOWN』を出すまでは音楽シーンとの関わりがほとんどなくて、北海道内の恵庭という地元の街だったり、部屋の中だけで世界が完結していたんですね。それが作品をリリースして以降は、いろんな人に聴いてもらえるようになったり、いろんな土地でライブをしたり、いろんなバンドとも知り合ったり……そうやって外の空気に触れることで、“自分たちは何者なんだろう?”ということを改めて考えるようになったんです。そして、北海道という外部から見ていた東京の音楽シーンの内部に自分たちが入っていったときに、逆に北海道から東京、北海道から全国にどうやって自分たちの音楽を発信していったらいいのかとも考えるようになったんです。

──つまり、北海道から出たことで、あらたな視点が生まれたわけですね。

そうです。そして、去年9月に「HOMETOWN STORY」というシングルを出したんですけど、ここ最近、音楽シーンの大きな流れとして、テンポの速い曲が多いじゃないですか? そんななかでの試行錯誤の一環として、そのシングルではFOLKSなりのアップ・テンポな曲にチャレンジしつつ、北海道のバンドとしてのアイデンティティが固まっていったというか、外に出たことで改めて気づかされた北海道の特殊性、その風景、空気や温度、そこで繰り広げられる物語を歌にしようと思って、レコーディングに臨んだんですよ。

──たしかに「HOMETOWN STORY」はバンドが一歩前に出たことで、実体が見えた手ごたえを感じました。

そもそも、僕らが集まった最初のきっかけとしては、5人で好きな音楽を共有して、メンバーが楽しめる音楽を作ろうっていうコンセプトでしたし、『NEWTOWN』を出して、東京とかでライブをやるようになる以前のFOLKSにはバンドの脳味噌はあるのに肉体がないというか、ふわっとした存在だったというか……ライブのこともまったく考えてなかったんですよね。だから、いざ、ライブをやるとなったら、5人のパートが完璧に定まっていないところで、そのふわっとしたものを実体化する作業がかなり大変だったんです。でも、ライブ経験を重ねることで、音楽好きのクリエイター5人がそれぞれの役割を自覚していったことで、バンドとしての体を手に入れた、そんな感じなんですよね。

──なるほど。では、東京へ出ていったことで気づかされた北海道の特殊性というのを言葉にすると?

北海道で生まれ育って、今も住んでいて、これからもそこから音楽を発信していくつもりなんですけど、外に出ていくまで、北海道の景色は自分たちにとって当たり前の日常だったので、その景色や空気感を無自覚なまま曲にしていたんです。でも、外に出て演奏したり、作品を聴いてもらうなかで、「北海道っぽい」と言われることが多くて、そこで初めて自覚させられたんです。今回のミニ・アルバム『SNOWTOWN』は、そのことを自覚して作った、初めての作品なんですよ。

──作品タイトルにもあるように、『SNOWTOWN』はFOLKSが考える北海道らしさ、恵庭らしさが詰まっていると。

そうですね。以前は借りものの服を着ていた感じだけど、今回はアレンジする際に僕たちが住む街の雪景色、吹雪のあとの真っ白なダイアモンド・ダストが舞う光景を音に変換してみたんです。つまり、何かの音楽に影響を受けて、自分たちの音楽を作るんじゃなく、自分たちが住んでいる街やそのイメージ、映像や景色を音に変換することで、FOLKSのオリジナリティを追求したんです。

何から何までメイド・イン・FOLKSにしたい

──なるほど。

ここ最近も、僕たちが住む恵庭の環境音を録音するのにハマっていて、ラルマナイの滝という地元で有名な滝の音を録りに行ったり、近くの公園にあるトンネルのきれいな響きを録ったりしているんです。その音源をどうするかというと、その音の残響を解析して、その響きを再現してくれる音楽ソフトがあるんですけど、そのソフトを使って、身の回りの音の響きをライブラリーにストックしているんです。

──例えば、「トンネルでの音の響き」とか「滝での音の響き」とか?

そう、ひとつひとつに名前を付けて(笑)。音は空間、空気がないと響かないし、その温度や湿度の違いでも響き方が変わるので、その場所、その響きの違いを活かすことで、僕らの音楽のアイデンティティに繋がっていくんじゃないかって。だから、風景やイメージから実際の音の響きまで、今は何から何までメイド・イン・FOLKSにしたいなと思っているんです。さらにそうやって考えていくと、今までは使いたいものを好きなように使っていた楽器も自ずと統一されていくんですよね。例えば、キラキラした氷のような音、降る雪を音にするなら、高い成分の残響音がぴったりだし、そういう響きを出すために鉄琴とかチェレスタのような鍵盤楽器を選ぶようになっていくんです。

──今回のミニ・アルバムのテーマとなっている北海道・恵庭の冬はどんな日常が広がっているんでしょう?

えーとですね、恵庭というのは、北海道の海沿いではなく、道央と呼ばれる真ん中の地域にあるんですけど、海もなく、風もそんなに吹かず、雪がどこにも行かないので、豪雪地帯なんですよね。積雪も50センチとか、そんな感じなので、朝の雪かきから一日が始まるんですよ。そして、たくさん雪が降るせいもあって、色とりどりで目立つ家が多いんですよね。例えば、僕の実家は青一色だし、ピンクの家があったり、パーカッションの小林(禄与)の家は真っ赤なんです。そういう風景も自分にとっては当たり前だったんですけど、レコード会社のスタッフが地元に来たときにそのことを指摘されたこともあってアートワークにそういう写真を使ったり。しかも、相当広い道が、100メートル、200メートルずっと続いていたり……圧倒的な、抗えない自然の力がすぐそばにあるというか、特に北海道の冬は死ぬか生きるかの戦いですね(笑)。

──雪深い北欧のミュージシャンなんかも冬は籠もってじっくり音楽を作るとか、寒さのせいか、繊細で締まった音を鳴らす傾向にあるとか、そういう話を聞いたことがあるんですけど、今のお話だと、岩井さんも冬は家に籠もるわけですよね?

出ないですね(笑)。そういう環境に培われたのか、はたまた個人的な僕の性質なのかはわからないですけど、東京に出てもホテルにいることが多かったりしますね。ちなみに今回の作品は、去年の秋、10月から11月にかけて、そのちょっと先の季節をイメージして、吹雪いたり、飛行機や電車が止まったり、死ぬほどつらい思いをする記憶を思い起こしながら(笑)レコーディングしたんです。

──はははは。

そして、先行配信したアルバムのリード曲「冬の向日葵」に関しては、一昨年の冬に作ったものだったので、その曲を広げる形で今回のミニ・アルバムを作りたいねということになっていったんです。

──本来、夏の花である“向日葵”と“冬”の季節は同居しえないものですよね。

しかも、「冬の向日葵」は珍しい成り立ちの曲なんですよ。まず、通常の曲作りは、音先行であとから歌詞を付けるんですけど、この曲は弾き語り状態のものが最初にあって。あと、個人的なことを歌った曲は友達にプレゼントするようなことはあっても、FOLKSはメンバー5人の総意の場なので、あえて個人的なことはこれまで歌ってこなかったんです。でも、この曲もですけど、みんなに聴かせたら反応がめちゃくちゃ良かったこともあったし、個人的な視点のほうが書きやすいということもあって、このミニ・アルバムではFOLKSというより、岩井郁人個人の感情に寄った曲が増えていったんです。

──つまり、サウンド同様に歌詞の面でも大きな転換があったと。たしかにほかの曲も“君”と“僕”という近しい関係がもとになった歌詞が増えましたもんね。

そうなんですよね。今までは言葉より先にまずは音を聴いてほしいと思っていたんですけど、ここ最近は音と言葉がいい関係性にあって、自然に書いた歌詞が北海道とリンクした内容になるし、メイド・イン・FOLKS、メイド・イン・北海道なサウンドともより密接にマッチしたり、そういうサウンドに触発されて北海道らしい歌詞が生まれるようにもなって。それだったら、飾らずに歌詞を書けばいいやと思ったんですよ。

住んでいる土地が自分たちのオリジナリティにも繋がってきた

──さらに今回は「冬の向日葵」と「それぞれの日々へ」は同郷の先輩でもある元・電気グルーヴの砂原良徳さんにプロデュースをお願いしたんですよね?

インディーズ盤『Take Off』のリマスタリングをお願いしたときに初めてお会いしたんです。僕はまりんさんが過去に手がけてきた作品の大ファンでしたし、まりんさんもFOLKSのことを聴いて好いてくれて、「こういう音を使ったらどう?」ってリズム・トラックを送ってくれたり、いろいろアドバイスしてくださって。そういうやり取りが最初にあったので、今回、プロデュースをお願いしたんです。そこで、デビューしてから気づかない間に肩に力が入っていたこともまりんさんは見抜かれていて、「その曲はちょっと似合わない服を着てるよ」って言ってくれたんですよ。そして、一緒に作業するなかで、“何がFOLKSらしいのか”という観点で音選びをしてくれたり、歌のディレクションでも僕が素朴な感じで歌った歌に素直に反応してくれたり、今回の作品で変化したFOLKSの意識はまりんさんの影響もすごく大きいと思いますね。

──サウンド面でFOLKSは5人組のバンドであると同時に、メンバーにドラマーがいないこともあって、「冬の向日葵」や「UNIVAS」が象徴するように、エレクトリックなビートの自由度が高いですよね。

僕はクラブに行ったり、エグい感じの踊れるダンス・ミュージックを聴いてきたわけじゃないんですけど、いろんな音楽を掘っていくなかで、ファンクやディスコを好きになったこともあって、単純な4つ打ちだけがダンス・ミュージックじゃないよなって。だから、リズム・パターンは自分なりに工夫しているんですけど、そうやって作ったリズムがライブなんかでどう機能するのか、ここ最近はお客さんの反応も音に反映されるようになってきましたね。

──そうかと思えば、ラスト曲の「キャスカ」は生ドラムを活かしたギター・バンド寄りな曲になっていますよね。

その曲はパーカッションの小林(禄与)が作った曲なんですけど、初めて聴かされたときは出来があまりに良くて衝撃を受けたんです。だから、今回のアルバムには絶対に入れようっていうことになったんですけど、“君と僕”について書くことが多い自分の歌詞に対して、小林の歌詞は“僕ら”について書いてたんですよね。そして、“僕ら”について書かれた歌詞だからこそ、この曲は僕と兄ちゃん(岩井豪利)のツイン・ボーカルにしたり、メンバー全員でコーラスを入れたんです。

──よりバンドらしくなったFOLKSを象徴する一曲でミニ・アルバムを締め括っている、と。そして、この作品からスタートするFOLKSの2015年ですが、今後はどうなっていきそうですか。

変わらず、恵庭から音楽を発信していこうと思ってます。世代的にインターネットが当たり前にある時代に育って、どんな国の音楽でも検索して聴けるし、CDもネットで買えたり、海外のライブやフェスもネット中継でリアルタイムに楽しめる。そして、どこにいても音楽を発信できますからね。そんななか、ふわふわしたファンタジックな音楽を作ることもできると思うんですけど、自分たちのアイデンティティを突き詰めていったら、身を置く環境やその響きがどんどん大事になってきたし、住んでいる土地が自分たちのオリジナリティにも繋がってきたんですよ。だからそうやって、FOLKSらしさをはっきり自覚したうえで、今後はバンバン曲を作っていきたいなと思っています。フル・アルバムに向けて、スピードを上げていきながら、札幌では雪が溶けて花咲く5月にワンマン・ツアーをやるんですけど、春になったら雪の街からみんなのところへ会いに行くので、楽しみにしていてほしいですね。なにせ、半年雪まみれですから(笑)春が来たときの解放感はものすごいものがあるんですよ。

DISC INFORMATION

MINI ALBUM 2015.2.25 release
『SNOWTOWN』
キューンミュージック

20150225_folks

初回仕様限定盤<スリーブケース>
通常盤
[CD]①CAPITAL MORNING②CARVE OUT③Northern Lights④冬の向日葵⑤それぞれの日々へ⑥UNIVAS⑦キャスカ

「冬の向日葵」Music Video

LIVE INFORMATION

『FOLKS “In Bloom” Tour 2015』
5月5日(火・祝)名古屋 APOLLO BASE
5月6日(水・休)梅田 Shangri-La
5月9日(土)渋谷 CLUB QUATTRO
5月15日(金)札幌 Sound Lab mole

“NORTHERN BEAT REFLECTIONS”
2月26日(木)北海道 KRAPS HALL
“TAMTAM & UNIT presents basspace vol.03”
3月20日(金)東京 代官山UNIT
“VIVA LA ROCK 2015”
5月3日(日)さいたまスーパーアリーナ

PROFILE

岩井郁人(vo、g)、岩井豪利(g、vo)、小林禄与(g、synthesizer、percussion、cho)、野口一雅(b、cho)、高橋正嗣(programming、synthesizer、cho)からなる、地元、北海道・恵庭市発信のバンド。2013年1月に、岩井郁人、野口、小林の3人と、岩井豪利、高橋の2人がそれぞれ組んでいたバンドを合体して結成。3月にミニ・アルバム『Take off』をリリース、7月末からリマスタリングを砂原良徳が手がけた同作音源を配信。2014年2月にミニ・アルバム『NEWTOWN』でメジャー・デビュー。9月には1stシングル「HOMETOWN STORY」をリリースしている。

関連リンク

・ FOLKS Official Website
・ YouTube Channel
・ Twitter
・ facebook

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