黒木渚 – 2015年のスタートにふさわしい、そして、ソロ・アーティスト黒木渚の決意をひしひしと感じるニュー・シングル「虎視眈々と淡々と」が完成。

黒木渚

 ズバッ! と突き刺さってくる、激しくてストレートなナンバーだ。「虎視眈々と淡々と」は黒木渚というアーティストの揺るぎない現在形を表明した楽曲である。
昨年はバンド形態を解消してソロに転じ、その数ヵ月後には1stフル・アルバム『標本箱』をリリース。激動の時期を一気に駆け抜けた黒木渚だったが、それからここまでの間も彼女の疾走力は落ちていない。それどころかペースを上げ、さらに強く、勇ましくなっていこうとしているように思える。
ただ、思い返してみれば、バンド時代、つい1年とちょっと前までの彼女は、決してそんな人ではなかった。内側に後ろ暗い何かを抱えながらも、いつもクールで知的で、とても今のような野性的なイメージは外に出ていなかったのだ。
今回のインタビューは、そうして現在も続いている黒木渚の変容の裏側にある感覚について迫っている。そして話をするほど、強いばかりでは決してない、むしろ弱さも人情もちゃんと持つ、ひとりの女性が気丈に戦う姿が浮かび上がったのである。

INTERVIEW & TEXT BY 青木 優

 

証明できるのは自分しかいない

──これはかなりアグレッシブで、カッコいい曲だと思います。

ありがとうございます!

──で、本題の前に振り返っておきたいんですが。去年の渚さんはアルバムを出して、その後はツアーがあり、東京では渋谷公会堂でのワンマンがあったんですけど、その時期はどんな感覚で活動に臨んでました?

もう……ソロになったという責任感とかプレッシャーを振り切るかのように、ひたすら身体を動かす! みたいな(去年の)前半戦でしたね。ツアーも必死で駆け抜けたし、渋公にすべてクライマックスを持ってくることに集中してやってたし。やっぱり複雑な心境だったんですよ。2014年が始まった瞬間には、自分のとった選択に対して、“ソロになることは合ってるのか?”っていう思いがかすかにあったし、それが証明できるのは自分しかいないっていう。だからその証明のために全力でガシガシやってた感じですかね。で、渋公を迎えて、燃え尽き症候群みたいになったらダメだなと思ってて……なので、お酒を断ってたのをその日の夜だけ解禁して、ビールをバッと飲んで。それで次の日の6月2日から、もう制作に入ったんです。

──渋公が終わった夜だけ飲んで?

はい。それで作り始めたら、やりたいことがたくさん見つかってきちゃって、とめどなく作る、みたいな作業になってしまい(笑)。で、そのあげくに小説書いたりデザインやったりすることを自分に課して……。なので、去年の後半は、半年間も制作をやっていたという。

──そうだったんですか。そんなにやりたいことが溢れてきたんですか?

そうですね。いろんなミュージシャン友だちと話をしてて、みんなCDが売れないことに関してすごく嘆いてて、「何か面白いことないかな」とか言ってるなかで、“じゃあ面白いこと考えついた者勝ちやな”という感じがしてて。この際だし、曲の世界を掘り下げたいというのと、あとはやったことのない小説とかデザインとか……まだ私の中に芽生えがありそうなものと関連づけて作品を出せたら面白いかもしれないな、というのがあって。なので制作期間を長くとったんですね。だから去年の後半は、もう一度自分の内部と顔を突き合わせてましたね。ソロになって、黒木渚ということからは逃げられないし、自分の部屋で、独房のような感じでゴリゴリ制作してましたね。小説書くのも自分の内面をすごく掘り下げる作業で、昔のことをめっちゃ思い出して。それが歌につながったりして……化学反応的なところもあったし。

──そこで自分に向き合って、気づいたことってあります?

そうですね……やっぱりなんだかんだ言って、自分の中にはアングラなものであるとか、えげつなさとか、ホラー的な要素に対する“好き”っていう気持ちがあるんですよ。そういうマニアックなものが好きだというのは改めて思ったし、それと同時に開けた音楽を作っていきたいっていう、両極端な気持ちもあったし。あと……意外と追い込まれて力が出るタイプかもしれないな、というのは思いましたね(笑)。いつも(制作期間の)最後にリード曲ができるんですよね。

すべて自分の正義とか美学にのっとってやっていかないとダメだ

──そうですか。では、この「虎視眈々と淡々と」はどんな心境から生まれた曲なんですか?

曲作りの材料を探して、世の中を観察してたら……“めちゃくちゃやな”っていう感想を持ったんですよ。混沌としてるし、マジメにやればやるほどバカらしくなってくる瞬間があって。マジメにこんなにたくさん曲を書いたのに、いろんな人間がアドバイスしてきて……しかもそれぞれのアドバイスには整合性がない、みたいな。

──(笑)それは、いろんな人の意見となるとね。

そうなんですよ(笑)。みんな親身になってくれてる。なのに、その整合性のないアドバイスの中で、何をチョイスするかとか、全部に耳を傾けて素直に聞いてしまったら、黒木渚はなくなっちゃうし……そのでたらめの中にズブッと持ってかれる感じがしたんですよね。そう思うと、時にはすべての意見に対してNOっていう強さを持たなきゃいけないし、何がカッコいいとか何がカッコ悪いとか、どれを抱きしめてどれを捨てるとか、そういうこともすべて自分の正義とか美学にのっとってやっていかないとダメだなって、改めて思って。制作しながら。

──つまり、ちょっと見えなくなったというか、迷いが入ってきたときもあったんですか?

うん。真剣にやろうとすればするほど、深みにはまる瞬間があって……やっぱり自分を持ってないとダメだということを考えてましたね。時には自分の直感だとか予感を信じて、“何が何でもこうします!”みたいなのをちゃんと持ってないと、優しいばっかじゃダメだなっていう。

──そうですか。ではこの曲は、渚さん個人のやりたいことがダイレクトに反映されている曲なのか、いろんな意見を濾過した末に見つけたものなのか、どっちなんでしょう?

いや、濾過してると思いますよ。“誰の意見も聞きません!”という感じじゃないし、やっぱり協力者がいないとソロ活動というのはできないから。なんだけど、その中でいちばん太く自分を持つということを考えたというか。

──じゃあこの曲で、その太く持った自分を出したのはどんな部分ですか?

例えば歌詞だと、「“世界で一番暗い場所は 人間の黒目の中にある”の“黒目”を“瞳”に変えたほうがいいんじゃない?」っていう意見があったんですよ。瞳って、すごくいろんなものを含んでる言葉で、眼差しであるとか、その人の人となり的なところも表現できたりするじゃないですか。

──そうですね。J-POPぽいなって思った。

そう! ですよね(笑)。それ言われたときに、「これを“黒目”と書いてこそ黒木渚!」と思ったんです。そこを譲らないこと、ですね。

──“黒目”だと、生臭い感じがしますね。

(笑)そうそうそう。木炭で塗りつぶしたような目のときってあるじゃないですか? 人間って。死んでる! みたいな(笑)。そういうことを表現できるのはこれしかないと思ったし。あと、やっぱりいいことばっかじゃ、道徳的なセリフばかりじゃ言いたいことが言えないときがあるんですよね。なので“嘘をついてついてついてつきまくれ”っていう、道徳の教科書には絶対書いちゃダメな方法で真実を見つける提案をすることを書いたり。“信じる事など止めてしまえよ 半端に傷つくくらいなら”とかも、この表向きは極力信じようっていう世界で中途半端にキズついてグチャグチャ言っちゃうんだったら、もう信じるなよ! っていう。それは自分に対してもそうなんですよね。中途半端に他人のせいにして、「あの人がこう言ったんだもん、それを信じたんだもん」なんて言うぐらいだったら、孤高の存在としてやってやる! ぐらいの気持ちでいかないとダメですよ、と。そういう自分への戒めと、そうして奮い立たせたいっていう気持ちもあるんですよね。人に対して。

──それはさっきからの話とつながってますね。それだけ、自分は何を世に放っていくかに向き合わなきゃいけないという。

うん、そうですね。とくに前回「革命」という曲があっただけに、その次に何を歌うかって、すごい難しい問題だったんですよ。それで、あの曲で打ち立てた自分の強い女っていう像を、もうちょっとみんなに認識してもらいたいというか……“私についてこい”というのを伝えたいという思いがあって。あのとき掲げた選手宣誓に続いて競技が始まった、その競技で走ってる真っ最中の黒木渚を見せようと思って、この曲になりました。

──競技というか、コロシアムで血を流して、命をかけて戦おうとしているぐらいの緊張感を覚えますね。

そうですね。“2015年の目標は過労死!”っていうぐらい頑張ろうと思ってるので(笑)。命かけてやるっていう。

──(笑)そのぐらい、いろいろなことをやろうとしてるわけですか?

そうですね。“働きまくる!”っていう。正直な話ですけど、女性シンガーって賞味期限があると思ってるんですよ。ソロになって積み直しみたいなことにはなったけど、なんとか渋公までやって、ここまで来て。この勢いに乗って、今のうちにガッといきたいし、若くて、肉体もエネルギーに満ち満ちている時期に一旦全部放出したい! みたいな気持ちが強くありますね。

強くならざるをえないし……戦っていかざるをえない

──ただ、そこでポップに振れる、つまり“黒目”を“瞳”と歌うような道は選ばなかったということですね?

そうですね。そんなものに振れはじめたら、黒木渚である必要ってあるのかな? みたいな気もするし。今応援してくれてる皆さんが、はたして黒木渚にそれを望んでるのかなっていう気もするし。あとは、自分自身がカッコいいと思ったものだけやりたいという。うん。

──「大本命」にも“戦って行くの本当の名前で”というフレーズがあるし、今年はひたすら戦いが続くような感じですか?

そうですね!

──わかりました。しかし思うんですけど……前作のジャンヌ・ダルクという像が特にそうだったんですけど、そういう戦う気持ちや、それを実践する強い女性像がこんな強く出てきたのはなんでだろう? ということを今日は聞きたいんですよ。

たしかに! なんでだろう?……身の周りにそういう強くて素敵な女の人の姿を見てるからですかね。母親しかり、あと大学のときに習ってた、私が院まで進学しちゃう原因になった先生が女性の教授だったんですけど、めちゃくちゃカッコ良くて。自分自身も、今すごく泥臭くもがいてはいるんですけど、例えば葬式に来た人たちが“よくわからんけど、にぎやかで軽やかな人だったね”って私の生き様を評価してくれるような、そういう鮮やかなインパクトを一瞬でいいから残して死にたい、みたいな。昔からそれはあるんですよね。

──昔って、いつぐらいから?

いつぐらいですかねえ?……まあ中高時代だと思いますけど。

──寮生時代ですか。バンドで出てきたときは、渚さんにそこまで強い女像は見えなかったんですけど、それは前々からあなたの中にはあったということですか?

まあ憧れはずっとあったんでしょうね。ただ、弱さが勝ってたかもしれないし、あと仲間がいたから、所属感に甘えてる節はあったかもしれないです。でも結局その彼らとのバンドを解散して、「自分ひとりになります」と言って……だから強くならざるをえないし……戦っていかざるをえないというか。うん。

──自分自身を奮い立たせる意味があったということですね。あともうひとつ、そこに孤独感もにじみ出てるなと思いました。「虎視眈々と淡々と」の“体ひとつ女ひとり”という歌詞もそうですよね。

うん! それはもう、もちろん……ソロだもん!(笑)。あと……嫌いじゃないんですけど、この東京という街が感じさせてくる孤独感は、めっちゃいいときもあるし、ほんとに寂しいときもある。東京って、いろんな意味を内包してるじゃないですか? “夢破れて”みたいなのもあるし、天才の墓場みたいなところもあるし。そういう中に身を置いて、遠く離れたふるさとを思うこととか、あと自分が音楽をやってくなかでお別れしてきた人たちのこととか、たまにそれを考えると、“ひとりぼっちだなあ”って思うときもあるんですけど。けど、別に“それがヤだ!”とか“誰か一緒に今夜いてください!”って電話かけまくるみたいなことは、全然ないし。それ、しっかり表現できたらいいなぁとは思いますね。

──その孤独感も、ポロポロと出てますよね。これは強さを表現しようとしてるから、もう片方の感情もよけいに出てるのかな? という気がしました。

うん、そうですね。強くなろうとすることは、やっぱり弱さを自覚しないと、その志に向かわないじゃないですか。意外と臆病者だなって、自分のことを思うこともあるし……結構、ささやかなことで思うんですけど。

泣きながらでも、変わらなきゃいけないときは、変わらなきゃいけない

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──例えばどんなことで?

「革命」のMV撮影で馬に乗るのもめちゃくちゃビビってたんですけど(笑)、今回の「虎視眈々と~」のMV撮影でも、北村(龍平)監督が「空中ブランコの設備があるから、ちょっとそれ撮っとこう」って言い始めて。脚立に登ってデッカいブランコに乗ったんですけど、そこで自分が初めてそういう高い乗り物が怖いことを知り(笑)。漕げって言われたんですけど、動けなかったんですよ。怖くて! しかも「ギターも抱えよう」みたいなことになっちゃって、すごいバランス悪くて……。

──どのぐらいの高さなんですか?

結構高いですよ! この天井よりちょい下ぐらいじゃないですか。で、自分で漕ぐのも怖いので、他人に押されて、そうするとまた自分じゃないタイミングじゃない時に押される怖さみたいなの、あるじゃないですか? 「やめろー!」みたいな(笑)。カメラが回る直前まで、その恐怖感みたいなものがグワーッとある感じとか……ビビりだなあ、みたいな。そういう物理的な怖さもあるし、あと、人見知りなのもビビりなのかな? みたいな。楽屋トークとか苦手で……。

──いろいろ対バンしてるじゃないですか。

そうなんですけど! 連絡先とか聞きたい人、めっちゃいるんですけど……特に女性ソロ・シンガーの友だちが少ないので、気楽に「ご飯行こうよ」みたいなぐらいまで仲良くなりたい人、いるんですけど……恥ずかしい(笑)。そこに飛び込んでく勇気を2015年は持ちたいですね。

──そうですか(笑)。しかし渚さんが前向きに進んでるのは伝わってきますね。

そうですね。やめたいとは1回も思ってないんで。

──泣くこととかはあっても?

そうですね。うん。泣きながらでも、変わらなきゃいけないときは、変わらなきゃいけないし……。

──じゃあ先ほど過労死という話がありましたが、そのぐらい今年は壮絶な日々が?

そうですね(笑)。まず気力を走らせて、その後ろを肉体が追いかけていく、みたいな感じでいこうかなって。

──身体のほうは大丈夫なんですか?

身体が意外と大丈夫なんじゃないか説があるんです(笑)。この身体、ね? 一見ヒョロッとしてる感じなんですけど。お客さんにもよく「ちゃんとご飯食べてるの?」と言われるし、差し入れも食べ物が多いんですよ。なんですけど、意外と肉体的には強いんじゃないかなっていうことを、「革命」の馬のときに思い。なので、会社の人たちにも「バシバシ働くんで! キャンペーン、よろしくお願いします!」みたいに言ってます(笑)。

──精神的にも大丈夫ですかね?

精神的にも……大丈夫だと思います、はい! 少しは強くなったんじゃないかと。2014年のスタートの時に比べると。あと、嫌われる覚悟ができたっていう。

──わかりました。その走りっぷりがどんなものか、楽しみにしています。

ぜひ! どうもありがとうございました。

DISC INFORMATION

「虎視眈々と淡々と」
SINGLE 2015.1.21 release
Lastrum

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限定盤 <黒木渚×POWER PLACE デザイン
木製鹿オブジェ(ジュエリーツリー)付き>
通常盤 <CD>
■収録内容■
01. 虎視眈々と淡々と
02. ピカソ
03. ようこそ世界へ
04. 大本命

PROFILE

クロキナギサ/宮崎出身。2010年にバンド“黒木渚”を結成し2012年12月に地元・九州限定で1stシングル「あたしの心臓あげる」、2013年3月には全国流通盤となる1stミニ・アルバム『黒キ渚』を発表。同年10月にはシングル「はさみ」をリリースするも、12月19日に突如バンド解散を発表。2014年からソロ活動を開始し、ソロ活動半年で渋谷公会堂単独ライブを成功させた。

LIVE

ONEMAN TOUR「虎視眈々と淡々と」
3月28日(土)仙台 LIVE HOUSE enn 2nd
4月11日(土)東京 グローブ座
4月19日(日)大阪 Music Club JANUS
4月26日(日)名古屋 ElectricLadyLand
5月3日(日)福岡 DRUM Logos

関連リンク

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