THE BAWDIES – 結成10周年&デビュー5周年のアニバーサリー・イヤーの締め括りに届いた、アルバム『Boys!』。バンドが今、手にしているものとは何か、ROYに聞く。

THE BAWDIES

THE BAWDIESのニュー・アルバム『Boys!』がとてもいい。日本の音楽シーンのど真ん中でロックンロールを鳴らすことの自負と喜び。それをシンプルなマインドと多彩なアプローチを持って鳴らし、まるでその独自の立ち位置に付随していた重荷から解放されたように、晴れ晴れとしたピュアネスに満ちている。なぜこのタイミングでこんなにフレッシュなアルバムを生むことができたのか。ROYが語ってくれた。

INTERVIEW & TEXT BY 三宅正一


肩の力を抜いているんだけど、120パーセントの力を出し切れた

──“THE BAWDIESが体現するロックンロールの真髄ってなんなの?”っていう問いかけがあったとして、“いや、これを聴いてくれたらわかります”というアルバムですよね。
ありがとうございます。どのアルバムも全力で作ってきたんですけど、今作は本当の意味で自分たちの力を発揮できたと思うんですよね。さらに、これまでのアルバムはどれも思いがけずすごく力が入っていて、だからこそ強い作品を残してこれたとも思うんですけど、裏を返せばリラックスした状態で120パーセントの力を出し切るってなかなか難しいと思うんですよ。それはべつに音楽の世界じゃなくても、スポーツの世界でも格闘技でもなんでもそうだと思うんですけど。そういう意味では、今作はすごくリラックスした状態で肩の力を抜いているんだけど、120パーセントの力を出し切ることができたと思っていて。
──うん、たしかにそういうアルバムだと思う。
自分たちがもともと持っていた、でも開いてなかった引き出しをしっかり開いたというか。もちろんこれが限界ではなくこの先さらにどんどんいろんな経験をして、もっと大きなバンドになれると思ってるんですけど、現段階で持ってる力はすべてここに出すことができたと思ってます。
──では、なぜリラックスして制作に臨めたのでしょうか?
やっぱりいちばんの理由は『GOING BACK HOME』というカバー・アルバムをリリースできたことが大きかったですね。それが僕らの原点であり、力の入る原因でもあるので。ルーツ・ミュージックの魅力を広く伝えたいとかロックンロールをみんなに聴いてもらいたいという想いが、僕らが力む最大の理由だから。そういう意味では『GOING BACK HOME』がそういうところを全部吸い取ってくれたし、欲求を全部満たしてくれたから。それによって肩の荷が下りたんですよね。“これを伝えなきゃいけない”という使命感みたいなものがカバー・アルバムに集中したことによって、“次のアルバムは自由に作ろうよ”ってモードになれた。さらに『GOING BACK HOME』を作って改めて自分たちのルーツと向き合ったときに、それらの音楽と出会ったときのようなキラキラした気持ちが甦ってきて。それで、バンド内の雰囲気が今まで以上に良くなって。
──仲はずっといいじゃん(笑)。
仲の良さは変わらないけど(笑)、お互いに対するリスペクトとかを今まで以上に感じられるようになったんですよね。個々が“俺はこうなんだ!”っていう主張をしなくても4人の中で“お前のここがすごいのはわかってるよ”という空気がすごくあって。だからこそ“お前のいいところはもっと俺が引き出すし、俺のいいところももっと引き出してくれ”みたいな状態に自然となっていって。それでバンドの力が何倍にも大きくなったと思うんですよね。

8枚目でこんなにピュアなロックンロール・アルバムを作れる
というのは、自分たちで自分たちをいちばん評価したいところ

──バンドのキャリアや時代の潮流などを踏まえたら、このタイミングでは固くなってもおかしくないと思うんですよね。
そうですね。ただ、ホントに僕らが恵まれてるなと思うのは、レーベルも事務所も含めてすごく僕らのことを信じてくれているので。だから“こういうアルバムを作ってくれ”っていう要望はいつもないんですよ。ホントにバンドがいいと思う作品を作ってくれという気持ちだけをもらうので。そこにちゃんと自分たちがこたえていかなきゃいけないというプレッシャーはもちろんありますけど。で、僕ら、インディーズから数えて今作で通算8枚目のアルバムになるんですね。8枚目でこんなにピュアなロックンロール・アルバムを作れるというのは、自分たちで自分たちをいちばん評価したいところで。どんどん固くなってしまったり、あるいは音楽性を真逆に振ってみたり、または現代の音楽に合わせていったり……いろいろな選択肢があるなかで、デビュー・アルバムくらいの鮮度を保ちながらもひとつのポピュラー・ミュージックとして聴けるキャッチーさもあるアルバムを出せるというのは、もともとバンドが持ってる能力があってこそだと思うんですよね。そこまで深く考えて聴かずにただ楽しんでもらえばいいんですけど、もし評価してもらえるならそういうところを汲み取ってもらえたらすごくうれしい。
──うん、そうですね。
あと、時代云々の部分で言うと、ロックンロールって世界中でつねに転がり続けてる音楽じゃないですか。しかも、10年に一度、甦る音楽だと思うし。
──でも、今はロックンロール・リバイバル的なムーブメントもとうに過ぎ去り、波に乗せるのが難しい時代であるのも確かで。
そうなんですよね。でも、10年に一度、シンプルで人間くさいロックンロールに立ち返るときが絶対くると思ってるから。ロックンロールに立ち返る時代にこのアルバムをリリースしたら、それはそれで大きな評価をもらえたかもしれないけど、僕は今この難しい時代のなかでこのアルバムをリリースするっていうことが逆にすごく意義のあることだと思うので。このアルバムの魅力がどこまで伝わるのかという不安もあるにはあります。でも、触れてもらえば絶対に何か感じてもらえるという自信もあるから。今まででいちばん自信があるし、最高傑作だと思ってますから。たしかに時代の流れを踏まえたら、THE BAWDIESの歴史の中で、もしかしたらいちばん悪い時期かもしれないですよね(苦笑)。でも、そういう逆境ってずっとあると思うし、僕らがバンドを始めた頃もまさにそうだった。ただ、そういうときだからこそ、時代に立ち向かうために大きな武器としてこのアルバムを手に入れたと思ってます。
──そのあたりは、例えば今年の夏フェスに出演しても実感したことでもありますか。
実感しましたね。音楽シーン自体が変化しつつあるし、バンドの世代もお客さんの層も入れ替わってるなっていうこともすごく感じた。でも、それを脅威と捉えるのではなく、僕らが鳴らしてるロックンロールを新鮮に感じる世代もいると思えたので。そこに自分たちが積極的に向かっていかなきゃいけないと思うんですよね。そのためには自分たちが120パーセント、ロックンロールを楽しみ切らないと絶対に伝わらないと思うし。
──うん。THE BAWDIESと同時期にデビューしたバンドって、the telephonesと……。
毛皮のマリーズ、あとandymoriとか。
──なるほど。みんなそれぞれありますね。マリーズとandymoriは解散してるわけで。
うん、それぞれ戦ってると思います。今、ホントにみんな苦しみながらやってる感じはすごくする。
──ただ、the telephonesなんかはTHE BAWDIESと音楽的なアウトプットは全然違うけど、さっきROYくんが言ってくれたことと同じような想いを抱きながらライブに向かってるような気がする。
そうですね。今年、結局andymoriとは一緒にできなかったし……マリーズはドレスコーズとしてだったけど、今言ったバンドは今年一緒に対バンもしたんです。たしかにthe telephonesはすごく近い意識を持ってるなって思いましたね。現場でずっと戦ってるからこその生の強さをすごく感じたし。ドレスコーズは今まで一緒にやってきたことをお互いギュッと抱きしめ合うみたいな、そういう対バンになったんですよ。で、何度も逆境を乗り越えてきたフラワーカンパニーズとかスカパラ先輩(東京スカパラダイスオーケストラ)とかはそこを抜けた説得力があったし。[Alexandros]は今の音楽シーンにすごくフィットした勢いがあってすごいなと思ったし、TOTALFATはジャンルが違うけど、ずっと一緒に戦ってきてる人たちだと思いましたね。あと、ユアソン(YOUR SONG IS GOOD)ね。もう、すごくシビレて。我が道を行く感じが最高にカッコよかった。もっと時代に合ったやり方もあると思うんですけど、そんなの関係ないというか。とにかく自分たちのスタイルを見せ続けるという。その姿勢がめちゃくちゃカッコよかったんですよ。1曲目が始まってから最後までノンストップでやり続けてたんですよね(笑)。
──曲をミックスしていくように。
そうそう! それがビックリして。最初はうちのお客さんもポカーンとしてたんですけど(笑)、最後は全員のせていたから。カッコよかったなあ。でも、アーティストってそうあるべきだと思うんですよね。売れる音楽を作る人だけがアーティストかって言ったらそうじゃないと思うし。自分が感じたことを音にできる人がアーティストだと僕は思うから。なおかつそれで売れるのがいちばんいいとは思うんですけど。

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