古市コータロー×浅田信一 – 19年振りにソロ・アルバム『Heartbreaker』をリリースした古市コータローと、そのアルバムをプロデュースした浅田信一とのトーク・セッションをお送りする。

古市コータロー×浅田信一

 THE COLLECTERSのギタリスト、古市コータローの3rdソロ・アルバム『Heartbreaker』。クハラカズユキ(The Birthday)、鈴木淳、高間有一、平畑徹也、吉田佳史(TRICERATOPS)らとともにレコーディングされたその音からは、彼が積み重ねてきたもの、柔軟性とこだわり、身にまとう風情、指先の温度など、さまざまなものを聴き取ることができる。プロデューサーであり、ANALOG MONKEYS名義で活動をともにする盟友でもある浅田信一との対談で、その制作過程を紐解く。

INTERVIEW & TEXT BY 佐々木美夏


 自分でどうこうってのはつまんないから、
みなさんが思うコータローに持ってってよ、と

──まずは19年ぶりにソロ・アルバムを作ろうと思い立ったいきさつから。

古市 何年も前から言ってたんだけど、なかなか現実的にならなくて。でも今年50歳だったんで、さすがにここを逃すとないかなぁ、って。だから今年の2月くらいから考え始めて、レコーディングに入ったのは8月。──浅田くんにプロデュースしてもらうというのは?

古市 それは昔から決まってたの。
浅田 もう5年くらい前から「コータローさん、ソロ・アルバム作りましょう、やるんだったらプロデュースさせてください」って言ってて、ようやく重い腰が上がったという。
古市  その間も話はちょこちょこしてて、やるんならこういうのをやりたいっていうのはあったの。これがスタートしてからはそういう夢物語は全部排除して、もっと現実的なことを考えたけど。50歳の記念に岩手の北上でライブをやることは決まってたのね。他に何やろうかなぁってときに、ぼんやりとアコースティック・ギターで弾き語りのツアーをやれたら記念になるかな、くらいの気持ちだったんだけど。2月くらいだよね?
浅田 そうですね。
古市 「作る? 本格的に」って。で、1曲目の「それだけ」ってロックンロールを、俺はここ(この対談が行われた呑み屋)で呑んでて、信ちゃんは家にいてメールでやり取りしてたんだよね。「こんな歌詞どう?」みたいに。それを会ったときに一気にまとめて。

──全体の構想みたいなものは。

古市 構想っていうかね、ベースのタカマック(高間有一)、ドラムの吉田(佳史)くん、キーボードのはっちゃん(平畑徹也)っていうのは、信ちゃんがプロデュースしているいろんなミュージシャンと録音するときのメンバーなんですよ。だから俺とも気心が知れてて、会うたびに「やりましょうよ」って言うから、「だったらおまえらが思うコータローさんにしてくれない?」って。俺が自分でどうこうってのはつまんないから、みなさんが思うコータローに持ってってよ、と。俺はどうせできないことはできないし、ギターだったらその曲に合わせて弾けるよ、くらいの気持ちで。だから俺も曲は作ったけど、基本的には委ねた。ここをこうしてくれ、とかは一切言ってない。このインストの曲ははっちゃんに「夏だよ」くらいは言ったけど。「夏の夕暮れなんだよ、はっちゃん」って。

──そうなるとプロデューサーに責任がかかってくるよね。

古市 まぁそうだよね(笑)。
浅田 自分の作品を人に100%委ねるってなかなかできないと思うんですよね。それを、迷ったときは「信ちゃんがよければいいよ」って常に言い続けてくれたっていう、コータローさんのその器の大きさってすげぇな、って実感しましたよね。一緒にやったミュージシャンはみんなそれを感じたんじゃないかな。とやかく言いたくなるでしょう、自分の作品だったら。それを本当に信頼してくれて何も言わなかった。
古市 まぁ、どうやってもこのメンバーが下手打つわけはない、っていうのが当然あるし、さっきも言ったようにみんなが思うコータローになってないとダメだから。俺としては。俺がいいっていうよりみんながいいっていうほうが絶対いいと思ったんだよね。ギター・ソロにしても何回も弾いた曲なんてなくてさ、3テイクくらいしか弾いてないんだけど、「どれがいい?」って自分では選ばなかったからね。
浅田 最初「こんなアルバム作りたいよね」「こんな曲作りたいよね」って言ってた段階でコータローさんから出てきたものっていうのはちょっと、なんて言うんですかね、構えたもの、っていうか。
古市 (笑)そうだね。
浅田 コータローさんもモッズだから佇まいとしてそれはあるんだろうけど、モッズはコレクターズでやってるから、古市コータローっていうパーソナルな部分、人間性を出したら、って話はして。だからそれを信頼してくれて、最終的には乗っかってくれた。僕もそうだけど、わりとコンプレックス強いほうじゃないですか、いろんな意味で。だからちょっとなんか、頭良くみせたがるっていうか(笑)。
古市 そうなんだよ(笑)。歌詞とかちょっと頭良さそうに見せたいんだよね。
浅田 僕も45歳だし、コータローさんは50歳で、背伸びしてももうしょうがないから。でもコータローさんがなんかやるってときに後輩がすぐ集まったりするのは、そこじゃなくて素のコータローさんの魅力にみんな惹かれてるんだから、それでいんじゃないか、って常に言い続けてた。
古市 そうだね。レコーディングの風景とかもまさにそんな感じだった。俺がひとつだけ大事にしてたのは、好き勝手やってるような気持ちでいたかったの。なんて言うのかな、こんなもんでいいんじゃない? って気分は絶対そのまま残したかった。スタジオでも「今日先に帰っていい?」とかさ、あえてそういうふうにしたかった。マイペースでいたかったっていうのかな。そこは甘えさせてもらいました。
浅田 でもギター・ソロを3回しか弾かないっていうけど、コータローさんはそれを演じてるんですよ。今回参加したミュージシャンは本当にプロ中のプロだから、レコーディングで3回しか弾かないのは当たり前なんですよ。だけどそこに対しての隠れた努力、前の日にさんざん練習してるんですよ、みんな。で、3テイク録るときに最大限の集中力を合わせてくる。コータローさんのプレイを見て僕も改めて、プロってこうじゃなきゃいけないなって実感させられたし、参加したミュージシャンもみんなそう。コータローさんがそういう姿勢だから3回以内でいいプレイしないともう後がない。
古市 みんなキャリアがあるから、準備っていっても家で弾くだけじゃなくて頭の中で何日も何日も鳴らしてる。弾くことじゃないんだよ、準備って。鳴らしてイメージを作るのが大事。そのことと指が直結するのはもう当然の話だからね。
浅田 僕らの世代って隠れて練習するのは恥ずかしいことだから、言わないんですよね、「こんだけ練習した」とかって。でも僕らより下の世代って練習することがかっこいい。それはそれでいいんだけど、練習するヤツはまだよくて、今テクノロジーでなんでも修正できちゃうから、レコーディングでなんとかなるだろうって思ってる人たちがたくさんいて。それが音楽をつまらなくしていってるような気がしますよね。

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