赤色のグリッター MINI ALBUM「世界は赤色」ディスクレビュー

世界は赤色

MINI ALBUM

赤色のグリッター

世界は赤色

eninal

2014.11.19 release

<CD>


絶望的な世界に向けた、希望の歌 

 赤色のグリッターの佐藤リョウスケの歌には“どうしてもこれが伝えたい、歌わなくてはいられない”という切実な思いが確かに感じられる。それは吉田美和、aikoから増子直純、尾崎世界観まで、ジャンルに関係なく、優れたボーカリストに共通する力だ。

 2ndミニ・アルバム『世界は赤色』は「愛の舌打ち」から始まる。性急なビートのなかで佐藤は“愛してとかいえないから 自分から愛してみた”と歌う。どんなにシニカルに構えても、“君しかいないとか、バカみたい”と思い込もうとしても、誰かを好きになってしまったときの抑えきれない衝動、“こんな感情は永遠に続かない”という切なさ、そして、それでも“君”といっしょに夢を見ていたいという欲望。そんな複雑な感情が、荒々しい詩情とでも呼ぶべきボーカリゼーションとともに真っ直ぐに突き刺さってくる。

 煌びやかなギター・サウンド、ポップな手触りを持ったメロディを軸にした「あの人」も強く心に残る。誰にでも“なんだよ、あの人”と憎々しく思っている人がいる(学校の先輩とか職場の同僚とか)。しかし、ほとんどの場合、直接“あの人”に言うことはできない。そんなモヤッとした気持ちをごまかしたり、ひとり心のなかで毒づいたりしてやり過ごす。そんな当たり前の状況を佐藤は、軽やかな諦めとともに歌い上げる。

 そして本作のタイトル・チューン「世界は赤色」は、バンドのテーマ・ソングとも言える楽曲だ。どう考えても現在の世界は理想的な状況ではないし、将来に希望を持つことも難しい。この先はどうなるかわからなくて、もしかしたらさらに絶望的な場所に向かって進んでるのかもしれない。そのことを十二分に理解したうえで佐藤は、わずかに残っているはずの希望を見出そうとする。感情のままに鳴らされるバンド・サウンドとともに“それでも信じて明日に想いを託した”という言葉が聴こえてくる瞬間——そのときに生まれる圧倒的なカタルシスは、このバンドの本質へとダイレクトにつながっているのだ。

 

(森 朋之)

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