映画『日々ロック』TALK SESSION – 映画『日々ロック』からスペシャル座談会を。音楽プロデューサーいしわたり淳治、出演の黒猫チェルシー岡本啓佑、The SALOVERS古舘佑太郎が集合。

映画『日々ロック』TALK SESSION

2010年から『週刊ヤングジャンプ』で連載中の榎屋克優の同名コミックを、『SR サイタマノラッパー』の入江悠監督が実写化した音楽映画『日々ロック』。野村周平演じる、主人公のロックバカ=日比沼拓郎率いる“ザ・ロックンロールブラザーズ”のドラマー・依田明に、黒猫チェルシーのドラマー、岡本啓佑が抜擢され、The SALOVERSのボーカル&ギターの古舘佑太郎は、バンド・メンバーとともに、アングラ・フォーク・バンド“犬レイプ”の犬飼佑一郎として出演している。
俳優デビューを飾ったふたりに加え、本作の音楽プロュースを務める、元SUPERCARのいしわたり淳治の3名には、“おそるべき10代”と称された共通点がある。早くから音楽人生を歩む決意をし、10代の頃からバンド・シーンで活躍してきた彼らに、バンド結成当時の話を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ【鼎談写真】
PHOTOGRAPHY BY 関信行(go relax E more)【劇中写真】©2014「日々ロック」製作委員会 ©榎屋克優/集英社


オーディションがあるって聞いてたので、落語を覚えようと思って

WW_hibi-rock_00

──まず、最初に映画『日々ロック』への出演オファーがあったときの心境から聞かせてください。
いしわたり淳治 ふたりはオーディションだったの?

岡本啓佑 最初に事務所のほうに「ドラマーを探している」っていうお話があって、いろんなバンドが挙がってる中に自分の名前もあったんです。マネージャーは、僕が絶対に断るやろうなと思って電話をかけてきたらしいんですけど、僕としては単純に面白いなと思ったので、二つ返事で「やります」って言って。そのあとオーディションを受けたんですけど、最初は「オーディションといっても、監督と話をするだけでいいんで」って言われてたんですよ。だから、すごいラフな気持ちで行ったら、いきなり台本を渡されて、目の前で「しゃべってくれ」って言われて……。

いしわたり その台本はもう最終的な感じの?

岡本 いや、最終版ではなかったんですけど、もう、がっちがっちに噛み倒して。“全然あかんわ”って思っていて。

いしわたり “これはもうないわー”っていうくらいだったんだ(笑)。

岡本 しかも、僕、これまであんまり映画を観てこなかったんですよね。監督に「どんな映画が好きなの?」って聞かれたときに「すみません。観ないんです」って答えて。そのときに本当に“全然あかんわ”って思ったんですけど、無事に決まりまして(笑)。バンドの映画やし、ドラマー役やし、自然にできたらいいなって思いましたね。

古舘佑太郎 僕もきっかけはほぼ一緒なんですけど……啓ちゃんはこの映画の原作漫画、好きだった? あんまり知らなかったんだっけ?

岡本 名前だけ知ってたくらいで。

古舘 僕はめっちゃ好きで愛読してて。メンバーにも回し読みさせてたくらい大好きな漫画だったんですよ。エネルギー溢れる精神論的な漫画なので、ワンマン・ライブの前の日とかにメンバーで読んだりもしてて。僕もそんなに映画を観てきたほうじゃないんですけど、『SR サイタマノラッパー』が大好きだったので、その入江監督が撮るって聞いて、「絶対にやりたいです!」ってお願いして。オーディションがあるっていうことも聞いてたので、落語を覚えようと思って、「紺屋高尾(こうやたかお)」をメモ帳に文字起こしして覚えたりしてたんですけど……。

いしわたり ちょっと待って! いろいろおかしいから(笑)。なんで落語なの?

古舘 演技の練習をしようと思ってもやったことがないから、できないなと思って。

いしわたり いやいや、日々、演技してるみたいなもんじゃないですか?

古舘 (苦笑)。そのタイミングで、映画とは別件で淳治さんとの仕事があったんですよ。淳治さんが音楽プロデューサーに決まったっていうのも聞いてたけど、僕は決まるか決まらないかのときだったので、こっちとしては、『日々ロック』の話はデリケートだからしちゃいけないのかなって勝手に思ってて。僕が応募してるっていうことを淳治さんはたぶん知ってるだろうなと思いながらも、気を遣って、『日々ロック』の話をわざとしない日もあって。そうやって自分の中でシビアな日々を過ごしていたなかで思い浮かんだのが、落語を覚えるっていうことで。“これしかない!”と思ったんですよね。でも、結局はオーディションがなかったので。

いしわたり (笑)。おおーお疲れさんとしか言いようがないね。

古舘 そうなんですよね(苦笑)。で、年明けにマネージャーから「決まりました」っていうメールがきたので “よっしゃー!”と思って。ただ、最初に話がきたときは、違う役柄だったんですよね。ビジュアル系バンド“ザ・ランゴリアーズの新庄”っていう、売れてるバンドのチャラ男みたいな役で、ベットシーンもあるって聞かされていたので、いろいろ心の準備しなきゃなって思ってて(笑)。かなりドキドキしてたんですよ。最初のプロットでは、ラブホでやってるところに日々沼がきちゃうっていうエピソードもあったので。そういう意味でも、かなりシビアな日々を過ごしてたんですけど……(笑)。

いしわたり シビアじゃなくて、悶々でしょ(笑)。

古舘 そうですね(笑)。かなり悶々とした日々を過ごしてたんですけど、結局、出演できることが決まったし、役も“犬レイプ”っていう、わりと自分に近い役になれたので良かったなって思いました。

いしわたり そんなに悶々としてたなんて、全然気づかなかったな。しゃべってくれて良かったのに。

古舘 仕事の最後、ふたりでタクシーに乗って帰ったんですけど、「僕、『日々ロック』好きなんですよね」くらいは言おうかな〜って迷ってたら、淳治さんが先に降りられちゃったので、「あ……」って感じで。

岡本 どっちでもいいよ!(笑)

いしわたり 何、その付き合ってるカップルみたいな気持ち悪い駆け引き(苦笑)。

古舘 はい、一方的な駆け引きをしてましたね(笑)。それくらい、めっちゃ好きだったんですよ、僕。

岡本 そう、古舘くんが『日々ロック』が好きやっていうのは知ってたので、話がきたときにまず、古舘くんの顔が浮かんで。“どうしよう”って、それこそ、悶々としましたね。

古舘 啓ちゃんとは、お互いに決まったあと、久々に京都のライブハウスのイベントで年明けに会って。あのときも、最初、どっちから言い出すかみたいなへンな駆け引きがあって。どっちから言い出したんだっけ? たぶん、僕が先に啓ちゃんに言って。そしたら、「なんだ、いまさらかよ」みたいな、へンなやりとりがありましたよ……なんの話なんですかね、これ(笑)。

いしわたり ただのモジモジした話だよ。サイコロトーク的にいうと“もじばな”だよね(笑)。

WW_hibi-rock_01

バンドの成長物語なので、徐々にスキルがアップしていくように

──(笑)いしわたりさんは、本作に音楽プロデューサーとして参加されてます。
いしわたり 僕は、監督に声をかけてもらったっていう感じですかね。最初の打ち合わせは、まず、話を聞くくらいの気持ちで行ったのに、いきなり「この曲はどう作りましょう?」みたいなところまで話して。“よし、やろう!”っていう感じで始まりましたね。

岡本 それっていつ頃ですか?

いしわたり 去年の11月か12月かな。

岡本 僕らに声がかかったときとあんまり変わらない時期だったんですね。

いしわたり そうだね。まず最初に、たくさんのバンドが入ったほうが華やかな印象になるなと思って。あと、これは日々沼のバンドの成長物語なので、徐々にスキルがアップしていくようになっていかないといけない。曲調も変わってほしいから、違うアーティストに頼んだり。変化し続けていく感じが出たらいいなっていうことを考えて、配置して、オファーして、受けてくれたら作っていくみたいな感じでしたね。

古舘 この映画の音楽プロデュースってすごく難しいなと思いますよね。ただカッコいい曲やイケイケの曲を作ればいいんじゃないから。特に、“ザ・ロックンロールブラザーズ”には、未完成だけど光るものがあるっていう微妙な曲がないといけないし、どんどん曲が進化していかないといけない。僕が淳治さんに依頼されたのは、「ザ・ロックンロールブラザーズは、まだ全然ダメダメだけど、光る可能性がある。犬レイプは、光を一ミリも感じないし、絶望的なんだけど、音楽がめっちゃ好きっていうのは伝わってくる。そんな曲を作って」っていうことで。

いしわたり 今回参加してくれたバンドは、僕は半分くらいしか面識がないので、この映画に楽曲を提供してくれたみなさんに、まず初めに長い手紙を書きました。それこそ、「受けてくれてありがとうございます」っていう堅苦しい挨拶から入って、曲のBPMはこれくらいで、何分で、こういうシーンで使いたいんですっていうことを。古舘くんとは、それまでに何度も一緒に仕事をしていたので、一緒にスタジオに入って、40分くらいで作ったんですけどね。

古舘 そうなんです。スタジオに入る前日に、自分の中でこれで勝負しようっていう、メインの曲があったんですよ。でも、淳治さんとはいつも仕事をしてたので、なんとなく、もう一曲作っておかないと怖いなと思ったんです。

いしわたり ひっくり返されるんじゃないかなと思った?

古舘 メインの曲以外に、もう一曲あれば、メインの曲がより際立つかなと思って(笑)。なんだろう、こんだけ頑張りました感も見せられるなと思って、前の日に3分くらいで作ったのが、「オムライス〜」っていうメロディと「百姓勃起」っていうフレーズだったんですね。それで、メインのほうを聴かせたときは、「あぁ」みたいな薄いリアクションで、このもう一曲のほうを聴かせたら、「こっちがいいじゃん。これでいこう!」ってなって。淳治さんが、サビで絶対に「一揆コール」したほうがいいでしょうって言って、その場でコール&レスポンスをやって。ほんと初期衝動だけで出来た曲でしたね。

いしわたり だって、歌い出しが「オムライス〜」のほうが絶望を感じるし、希望がない感じがするでしょ。しかも、犬レイプなんだから、下ネタが入ってないとおかしいからね(笑)。

WW_hibi-rock_022

気持ちとしては、もっとハキハキしゃべってるつもりやった

──完成した映画を観て、淳治さんはふたりの演技をどう感じました?
いしわたり まず、映画が単純に面白いなと思いましたね。ふたりのシーンでいうと、古(ふる)の芝居はなんとなくわかっていたというか。人生、芝居をしてるようなものだから。

古舘 いやいや、どんなヤツなんですか?(笑)

いしわたり 人の目を気にして生きてるから(笑)。っていうのは知ってたけど、良かったなって思いますよ。いちばん好きなのは、「ついてきちゃった」っていうシーン。

岡本 あー、あそこ、いいですよね。

古舘 あれ、ほんとは啓ちゃんが出るはずだったんですけど、啓ちゃんが本当のライブで撮影にこれなくなって、出番が変わったシーンだったんですよ。

岡本 そうそう。黒猫でフェスに出演するのが決まっていたので出れなくなって。

古舘 だから、急遽、僕になって。啓ちゃんにいただいたチャンスを頑張ったっていう。

いしわたり フェスに出れるのとどっちが良かったのかはわからないけどね(笑)。

古舘 あはははは。

岡本 そうそう。でも、古舘くんのあのカットが良かったから、すごく悔しかったな。

古舘 前野(朋哉)さんや野村(周平)くん、二階堂(ふみ)さんと話してたときに、役者の人たちはみんな、「啓ちゃんが面白すぎる」って言ってましたよ。

岡本 なんなんでしょうね、それね。

古舘 漫画のキャラにいちばん忠実かもしんないね、依田が。見た目といい、キャラといい。

いしわたり ボソボソした感じとかね。

岡本 普段の自分にすごく近いなって思いましたね。周りが見えてないヤツがいて、その後ろでドラム叩いてる、みたいな。バンドでの立ち位置にもちょっと似てて。

いしわたり しかも、いちばんうまい役だもんね。依田だけが経験者みたいな。

岡本 だから、そのへんはすごくやりやすかったですね。

いしわたり いい、ボソボソでしたよ(笑)。

岡本 気持ちとしては、もっとハキハキしゃべってるつもりやったんですけど、実際、映像で観るとボソボソしてますよね(笑)。

いしわたり たぶんバンドマン全員そうだと思うよ。そんなに声を張ることないもんね。

岡本 使い分けがわからないですね。役者の方を見てて、よくそんなにはっきりしゃべれるなって思ってましたから。

WW_hibi-rock_03

めちゃくちゃしんどかったんですけど、めちゃくちゃ楽しかった

──実際の現場はいかがでした?
岡本 実質3週間くらいだったんですけど、ほぼ毎日、撮影していて。初めてのことばっかりやったんで、ついていくのに必死で、がむしゃらにやってたっていう感じでしたね。待ち時間も長いし、めちゃくちゃしんどかったんですけど、でも、めちゃくちゃ楽しかったんですよ。

古舘 みんな同世代だからっていうのもあるんじゃない? 僕らが20代前半で、その上が、竹中(直人)さん、蛭子(能収)さん、毬谷(友子)さんっていう世代で。その間がいなかったから。

いしわたり それは先生と生徒くらいの間じゃない?

古舘 そうそうそう、生徒たちは携帯のアプリとかで遊んだりして。

いしわたり 蛭子さんは競艇で遊んだりして(笑)。

古舘 いやいやいや(笑)。早く帰りたがってはいたけど。

岡本 単純に同じシーンを違う角度からカメラを向けられて、何カットも撮るのも初めてだから新鮮で。いろんなプロの方がそれぞれ一生懸命にやってはって、それがグッときましたね。映画って、それぞれの役目があってできてるんだなって改めて思いましたね。

いしわたり 僕が現場に見学に行ったのは最後のシーンだけなんですけど、まったく同じことを思いましたね。いろんなプロがいるんだっていうのをいちばんに感じた。

古舘 僕は、僕だけじゃなく、The SALOVERSのメンバー全員で出てて。僕らはもともと幼馴染みなんですけど、バンドマンが映画に出るだけでも珍しいのに、幼馴染み4人で映画に出るって、そうない経験だと思うんですよ。だから、めちゃくちゃへンな感じがしてました。現場での役者さんのルールみたいなのは知らないけど、幼馴染みがいるから安心していろんな人にちょっかい出して、それをみんなが面白がってくれて。みんなに、僕ら4人が遊んでもらったっていう感じですよね。あと、ふたりが言ったみたいに、映画ってこうやって作られてるんだっていう面白さもあって。僕ら、犬レイプは、The SALOVERSと蛭子さんの5人で、本気の演技をしてる人たちの後ろ側にいることが多かったんですね。その後ろの狭いコミュニティの中で僕、偉そうに指示をしまくってたんですよ。現場の人たちのいろんな動きを見て、それをマネして、演技指導とかをノリでしてて。それが全部、監督にバレてたみたいなんですけど、裏で自分のやりたい放題にやれたのが楽しかったですね(笑)。

いしわたり バレてたんだ。

古舘 バレてました。でも、それを入江さんが気に入ってくれてたみたいで。野放しにしてくれていたので、犬レイプは自分たちで作った感があって面白かったです。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人