FoZZtone – FoZZtoneがニュー・アルバム『Return to Earth』をリリースした。作詞作曲を手がける渡會将士の表現の豊かさにぜひ触れてほしい。

FoZZtone

FoZZtoneのニュー・アルバム『Return to Earth』は、現在のロック・シーンの傾向や様相と明らかに一線を画すアルバムだ。そもそも本作はバンドの解体/再構築をすることで、ロック・バンドのプリミティブな成り立ちとはどういうものか、あるいはその鳴りはどんなふうに響くべきなのかということを、徹底的に見つめている。そういう視座に立っているからこそ、表層的な派手さは皆無と言っていい。しかし、だからこそ聴けば聴くほど沁み渡るし、深みにハマる。FoZZtoneというロック・バンドの愚直で真摯なマインドをまざまざと体感できるこのアルバムを、聴き逃してはならない。筆者は心からそう思っている。

INTERVIEW & TEXT BY 三宅正一


作れば作るほど面白くなっていくっていう希望を信じたい

──今回のジャケットのイラストは渡會くんが手がけた作品を起用してるんですけど、つくづくあなたは立体的な表現力に長けてる人だなと思って。

ありがとうございます。よく「音楽もできるし、絵も描けるしいいね」って言われるんですけど、自分のなかでは頭に浮かんでることをどうアウトプットするかっていうことしか考えてないんですよね。単純に凝り性というのもあるし、あとは目や耳はいいほうだと思うので。絵に関しては小さい頃からマンガを描いていたのも大きいですね。今でも毎週「週刊少年ジャンプ」を買ってるんですけど、子どもの頃からどこか大人の目線で読んでたんですよね。“作者は今後こういうふうに物語を展開していきたいんだろうな”とか“どんどんうしろのほうに掲載されるようになってきてるからこの展開はカンフル剤の一環なんだな”とか。

──俯瞰で捉えてるという感じなのかな。

いや、むしろもっと突っ込んでる感じだと思います。

──逆に主観で入り込んでいく感じなんだ。

そうそう、人の作品なのにどんどん主観で入り込んでいっちゃう。だから、この人の絵がいいなと思ったり、いい曲だなと思ったら、まず一度具体的にパクってみるんですよ。

──そういうことも結構ストレートに言うよね(笑)。

はい、もう、すぐパクろうって思いますから(笑)。すべてそれに尽きるなって思うんですよね。ゼロからすべてを作り出した人って、ホントに少ないと思うんですよ。みんな誰かのファンだし。

──ザ・ビートルズだってバディ・ホリーのファンだったし。

そうそう、過去を辿っていったら偉大なアーティストにも諸先輩方がいて。好きこそものの上手なれだと思うんですよね。だから、人の個性云々というのも早いうちから決まるというのは嘘クサいと思うんですよね。長い時間をかけてできあがったものじゃないと信用できないというか。いろいろトライし尽くして、晩年に“自分ってこういう人間でした”って言えるほうが、真実味があるというか。

──そういう生き方に希望も感じてるし。

うん。作れば作るほど面白くなっていくっていう希望を信じたいなと思ってますね。言ったら、ミュージシャンなんてデビュー・アルバムの衝動には絶対に適わないって言われがちだし、それも事実かもしれないけど──それを超える次の瞬間が来るかもしれないって思ったほうが、未来があるなって。あと、最近思うのは自分にもハングリーさがないわけじゃないけど、そういうのとは違うところでホントのパワーが発揮されるのかなって気がするんですよね。

──それは今作の制作でも感じたこと?

そうですね。逆境と対峙したときにそれを“何クソ!”って跳ね返すよりも、じっくり環境からしっかり作っていって、自分が考えてることを100%ぶち込むほうが、120%に到達しやすいのかなって。フル・アルバムを6枚作ってきて、俺はプラモデルをていねいに作る派だなと思ったんですよね。

──なるほどね。言い方が難しいんですけど、このアルバムを聴いたときにまず思ったのは渋いなということで。

ふふふふふふ。渋いなというのもわかるし、言い方が難しいアルバムだということは自分でもよくわかってます。

──前回、渡會くんにインタビューしたときはこのアルバムが完成したばかりで。そのときはあなたもどういうアルバムになったか明言できない感じだったんですよね。その感覚は実際にこのアルバムを聴いたときになるほどなと思って。

そうですね、はい。このアルバムは今まで作ってきたアルバムの反動でもあると思うんですよ。

──ドカーン! というアルバムを作ってきたことの。

そうそう。ドカーン! というのと、とにかくフル・ボリュームなアルバムが続いていたから。その反動でそろそろ暗いアルバムを作りたいなあみたいな。

──正直、ちょっとソロ・アルバムっぽいなとも思った。

うん、そうですね。わかります。その要因のひとつは竹尾(典明)のギターが極端に静かになったことだと思うんですね。

──そうですね。すごく引き算なサウンドですよね。

うん。彼が自然と静かになって。

──それは楽曲の内容を受けて?

だと思いますけどね。ただ、レコーディングに入る前に“今回は曲でワーッと遊ぶのはいいんじゃないか”という話をみんなとして。ミディアム・テンポな曲に速弾きが入ってたりとか、そういうのはいいんじゃないかと。むしろ“ガーッと遊びたい曲があったらそれぞれ自分で作ってきてよ”って。それよりももっと間の多いアルバムにしたいなと思ったんですよね。その意見にみんなも同意してくれて。

作品を聴いてもらえること、そこに価値があると思ってお金を払ってもらいたい

──引き算だったり、間の多いアルバムにしようと思ったいちばんの要因は?

最近、絵の仕事をしながらずっと家でアニメを垂れ流しにしてるんですけど。画は観てないんですけど、音だけ聴いていて。そうすると、オープニング・テーマが知り合いのバンドだったりするんですよね。そういう曲を聴いてると、テレビ用のコンプがかかってるというのも大きいんですけど、みんなすごく音が近いなと思って。これ、イヤフォンで聴いたら結構キツいだろうなと思って。アニメとか関係ないところでいろんな曲を聴いても全体的に音がすごく近くなってると思う。でも、個人的にはそういう音は嫌いではないんですよ。アヴリル・ラヴィーンとかグリーンデイとか、アメリカのポップス・シーンに乗っかってる人たちの、ラジオ用に帯域がガッて削ってある音ってあるじゃないですか。それって聴きとりやすいという点では特化していて。あの文化自体は好きなんです。一方で、みんなディスコ・ビートみたいなキックばっかりやってるなあっていう気がしていて。

──うんうん。

でも、ちょっと先輩のミュージシャンになると、大事にキックの音とかエアーを録ってたりしていて。その反対にある近い音って感触がデジタルっぽくてこれバンドじゃなくてもいいなっていう気がすごくして。バンドでやっていくためには、もっと生々しい音にしたいなって。あくまで人間がプレイしてますっていう空気感を録らなきゃって──FoZZtoneを11年やってきましたけど、ここから先にデジタルなサウンド作りをしていったら、十把一絡げのひとつになってしまうなという気がして。

──なるほど。

それで「エアーを録りたい」ってしきりに言ってたんです。“ギターを弾いてるときにシャツの袖が弦に当たったみたいな、そういう音まで録りたいんです”ってエンジニアさんと話していて。それで、今回は合宿レコーディングして、天井の高いスタジオで、ドラムとかもマイクからめっちゃ離して録ったんですよね。アコギとかも寄せるときはサウンド・ホールから拳1つか2つ分あけてマイクを置くんですけど、今回はもうかなり離して。それで録ったらやっぱりタイム感がズレるんですよ。

──そうなりますよね。

で、その微妙にズレたなあっていう感じがよくて。みんなある程度クリックを聴きながら合わせていくざっくりしたタイム感もすごくいいねっていう感じで。でも急にキメのところだけ全員ピタッと合ったりとか。機械的に考えたら気持ちの悪い音楽なんですけど、人とやってますということが、へたに聴こえない技術が自分たちはもう身についてるんだなと思ったんです。それでどんどん引き算っぽい発想のサウンドになっていったんですよね。

──面白いなと思ったのは、『Reach to Mars』を経て、今回の『Return to Earth』で火星から地球に帰還すると。そこには“土に還る”という意味も派生した。そのコンセプトは偶発的に生まれたものなんですよね。

そうですね。

──悪い言い方をすれば、こじつけでもあるわけじゃない?

うん、まさしくこじつけですね。

──でも、“土に還る”という裏テーマがここでまたバンドを解体/再構築するというこのアルバムの内容とも必然的にリンクしていったわけですよね。

そう、偶然が必然を呼んだというか。

──それは渡會くんのなかでどういう整理がついてるんですか?

う~ん……こういうことをインタビューで言うのもどうだろうって思うんですけど、とにかく売れたいなとずっと思っていて(笑)。

──いや、ホントに。

うん。とにかく金持ちになりてえなと思って。きれいごとっていうか、たくさんの人に聴いてもらいたいっていうだけだったら、プロじゃなくていいなって思うんですよ。ただ聴く人の数だけを求めるなら、YouTubeで音源を発表し続けてもいいわけだし。でも、僕は作品を聴いてもらえること、そこに価値があると思ってお金を払ってもらいたいから。その結果として金持ちになりたいんですよね。

──対価を得てね。

そう。そういう感情でずっとバンドをやってきてるから。サポート・ドラマーの武並(“J.J.”俊明)さんも「FoZZtoneはもっと評価されてもいいと思う」って言ってくれるんですけど。

──僕も心底そう思ってます。

あはははは。『NEW WORLD』というアルバム以降、それを“どうだ、すごいだろ! お金を払う価値があるぞ!”ってこれでもかという感じでアピールしてきたんですけど(笑)。

──そうですね。“ドヤー!”って。

そう、心からの“ドヤー!”で(笑)。“ドヤロック”という感じでやってきて。

──オラオラ状態で。

オラオラでしたね。そのやり方が失敗だったとは思わないし、よかったなというのは今やってる月イチで過去のアルバムを1枚ずつ振り返っていく“追加公演”というライブ・シリーズでもちゃんと実感できていて。チケットもちゃんとソールドアウトして興行としても成り立ってるし、お客さんにも十分楽しんでもらってる。でも、今は過去のモードとは明らかに違っていて。ちょっと欲張りすぎてたなとも思うんですね。果てしなく金持ちになろうと思いすぎてたなって(笑)。で、現状が思ってたほど金持ちになってないのがショックだなって。

──もちろん、その道のりで得たものも大きいけど。

得たものもあるけど、欲望がちょっと大きすぎてそこまで到達してないっていう。この3作で“ドヤロック”をやって、“ちょっと、どうよ……?”って思ったっていう。メンバーでお互い顔を見合わせてそういう感じになっていったんですよね。あと、セカイイチと一緒に“セカフォズ”(セカイイチとFoZZtone)をやって、大人が子どもみたいに楽しく音楽をやることってホントにいいなと思って。子連れのお母さんがライブに来て、子どもウケもよかったりして。“セカフォズ”があったおかげで楽しいムードは結構補充できたので。それは大きかった。

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