後藤まりこ – レーベル&事務所を一新し、あらたな環境の中から生み落とされたアルバム『こわれた箱にりなっくす』。柔軟性を増したように見える彼女の今の心境を探る。

後藤まりこ

後藤まりこが前作「m@u」から約1年ぶり、ソロとしては通算3枚目のアルバム『こわれた箱にりなっくす』を完成させた。昨年まで所属していた事務所とレコード会社を辞め、無所属のまま開催となったSHIBUYA-AXでのワンマン・ライブのチケットが「1週間前まで半分以上売れ残ってる」と自らのTwitterで告白。大きなニュースとなったが、当日は超満員となった会場で、秋にアルバムを発売することを発表し、最後のMCで「ボクと一緒に一回死んで生き返ろう。共に歩んでください」と語った。アルバムのタイトルの“箱“とはパソコンで、“りなっくす“はフリーのOS“Linux“のことであり、その言葉から、中身を入れ替えて生き返ろうというメッセージが込められていることがわかる。一回死んで生き返って作られたアルバムには、アイドル界隈のアレンジャーが参加しており、観客と一緒に歌い、踊りたいという願いも強く込められているように感じた。これまでにない他人との関わり、聴き手への配慮も伝わる全9曲が生まれた過程を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ


このアルバムを作ることに関して、なるべく委ねたいなって思ってた

──2014年はどんな1年でした?

あっという間やったんですけど、すごい昔のことのようにも思えます。

──あっという間だったと感じるのは、充実してたから?

だったらいいなと思います。こうやってCDを出せるのも、当たり前のようで、当たり前ではないことなのでうれしいなと思います。

──5月にはSHIBUYA-AXでのワンマン・ライブがあり、10月には舞台『ロミオとジュリエットのこどもたち』でジュリエットも演じました。

ボクはすべてのことが音楽に還元できればええなって思ってて。そやから、すべての出来事が、たぶん、音楽に影響してると思います。今年の舞台に関しては、まだそんなに日にちが経ってないから音楽活動への影響はまだ実感してないんですけど、それが音に出てたらいいなっていう望みはあります。

──アルバムはいつ頃から作り始めたんですか?

ちゃんと作り出したのは今年の初夏かな。曲を作り始めたのは3月くらいです。

──ソロとして3作目になるアルバムはどんな作品にしたいって考えてました?

1曲目に出来たのが「シンデレラタイム」で、2曲目が「触媒」、3曲目が「好き、殺したい、愛してる」で。それらの曲を作ったときは、ただ、次のアルバムを出したいな〜と思ってただけで。こんなアルバムにしようっていうコンセプトは全然なくて。ただ、曲が出来るっていう感じでした。

──「シンデレラタイム」はどんなときに出来たか覚えてます?

前の事務所とレコード会社を辞めたときですね。特に何も考えてなくて。事務所とレコード会社との話し合いが終わったあとに、渋谷の街を歩いてるときに自動的に出来た。そのあと、ボク、気持ちがすごく高ぶってたので、家でギターを弾いてたら、「触媒」が出来て。

──この2曲はアレンジャーにAKB48の「ポニーテールとシュシュ」や「フライングゲット」で知られる生田真心さんを迎えてますね。

今回のアレンジャーさんに関しては、Tom-H@ckさん以外は自分から(リクエストを)言ってないんですよね。キングレコードの方にこの人がいいっていうアレンジャーさん案を出してもらったときに、“あ、いんじゃないか”って思って。ボク、このアルバムを作ることに関して、なるべく委ねたいなって思ってたので。

──今作はそこがいちばんの変化だと思うんですが、どうして委ねたいって思いました?

うーん……そんなに深い理由はないです。

──生田真心さんに何かリクエストは出しました?

最初に出来た3曲に関しては、ボクもアレンジャーさんとやるのは初めてだったので、やりとりの仕方っていうのを手探りしながらやってて。だから、あまり何も言わなかったです。アレンジってこういう感んじなんやって思って。とにかくアレンジャーさんとやるのがまったく初めてだったので、こういうやりとりをして、こうやるんやと思って。

──「シンデレラタイム」というタイトルの意味についても聞いていいですか?

後付けでは、女性の限られた時間っていう意味でも考えられるんですけど、ボク、曲を作ったり、曲のタイトルを決めるときに、あんま何も考えてないことが多くて。音で付けてます。

「大丈夫かな?」って聞いたら、「大丈夫」って言ってくれたので

──2曲目に出来た「触媒」は、どういう曲ですか?

誰かとおったとしたら、ボクがおることによって、その人や物事の進行を早めて、でも形状は変わらない。そういう、普遍的なものでありながら、すべての進行を潤滑に、スムーズに、相互作用で良くなれるものになりたいなと思って。自分という存在じゃなくて、そういう現象という意味。これもアレンジに関しては何も言ってないです。最初にレコード会社の人に「どう思う?」って聞いて、感想を言ってもらえたら、そうしようっていう方向で進めていった感じです。

──「触媒」をアルバムの1曲目にしたのは?

今回、ボク、曲順も考えてないんですよ。お任せしました。

──「触媒」が1曲目になって、ご自身ではどう感じました?

違和感なかったし、一回、レコード会社の人に確認を取って。「大丈夫かな?」って聞いたら、「大丈夫」って言ってくれたので、大丈夫だと思いました。

──その確認作業がこれまでと違う点かもしれないですね……。3曲目に出来た「好き、殺したい、愛してる」のアレンジャーは、ドラマーとして、やくしまるえつことd.v.d.というユニットも組んでいたJimanicaです。

実は最初、このアレンジがあまり好きではなかったんですよ。でも、ライブでやったらすごい体に入ってきて、いいアレンジやなと改めて思って。今はすごい気に入ってます。Jimanicaには、歌録りのときとミックスのときに会いました。ただ、何かを話したわけではなく、いいとか悪いとか、テイクを選んでくれて。でも、結局はJimanicaが来てくれたときに録ったテイクは全部ボツにして。

──それはどうしてですか?

単純に今回のエンジニアさんとやるのも初めてというか、あんまり日にちが経ってない時期だったので、コミュニケーションの取り方がわからなくて。自分がもうちょっとこうしたいって考えていたのが、うまく伝えられなかったんですよ。だから、次にスタジオに行ったときに録り直して。一回でいいのが録れたので、そっちを使いました。

──このまま曲が出来た順番に話を聞きたいと思うんですが。

そのあとはどれやったっけかな? 3月に3曲出来てから結構、間が空いて……。うーん、たぶん、「正しい夜の過ごし方」が出来て、そのあとに「スナメリ」です。

──「正しい夜の過ごし方」のみ、バンド・セッションによる編曲になってます。

ソロで出した2枚のアルバムと、今もライブでやってるメンバーで。ボク、曲を作るときって、バンド・メンバーに集まってもらって、「こう弾いて」「ああ弾いて」「こう叩いて」って言って、作り上げていくんですよ。その感じで作り上げた曲を、そのままバンドで録りました。

──そのあとがリード曲の「スナメリ」ですよね。

そう。曲自体は8月の頭に出来て。最初は、AメロBメロ構成で、サビがなくて。レコード会社の方に聞いてもらったら、「サビを付けたほうがいいよ」って言われて。人に言われてサビを作るのも初めてやって。でも、サビを作ってみたら、すごく良くなって。サビに「愛を感じて笑って」っていう歌詞があるので、スナメリはずっと笑ってるように見えるので、タイトルは「スナメリ」でいいかなって。ボク、すごい好きな曲です。

──スナメリって、小さいイルカのことですよね。もともとスナメリが好きでした?

いや、別に、普通です。ただ、ボク、海の生き物が好きなほうだし、水族館で見たことはあります。

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