夜の本気ダンス ALBUM「DANCE TIME」ディスクレビュー

DANCE TIME

ALBUM

夜の本気ダンス

DANCE TIME

actwise

2014.11.05 release

<CD>


本気と書いてマージーと読む

 音楽的には初期のthe telephonesとThe Mirrazから生まれた子供のように思えるキュウソネコカミがなぜ2010年代に成功したのかを考えると、それは“洋楽との断絶”がポイントであったように思う。ザ・ラプチャーやアークティック・モンキーズといったルーツに遡ることなく、ユニークな日本語詞と、フェス受けする派手なステージングという、今の日本のロック・シーンで求められる要素にフォーカスすることで、キュウソの爆発は起こるべくして起こったのだ。

 キュウソと同じく関西発ながら、こちらは京都出身の夜の本気ダンスも、ガレージ・ロックとダンサブルなビートの組み合わせはthe telephones、リズミカルで言葉数の多い日本語詞とキャッチーなサビはThe Mirrazを連想させるが、彼らはキュウソとは逆に、むしろそのルーツである洋楽との接点のほうがより色濃く感じられる。余計な装飾を施さず、リフ主体で押していく構成や、フレーズの繰り返しによるサビメロの作り方などは非常に洋楽的。もしかしたら、それを物足りないと感じる人もいるかもしれないが、そのシンプリシティから生まれる抜けの良さこそが、彼らの大きな魅力だと思う。

 また、アルバム前半こそ直線的なビートで攻め立てるコンパクトなナンバーが並ぶものの、BPMをやや落として横揺れを誘う中盤を経て、後半ではよりギター・ポップ的な、メロディ主体の楽曲へと変化していくことも非常に印象的。正直に言ってしまえば、the telephonesが浮上した2000年代後半から、KANA-BOON(彼らも関西ですね)が登場した2010年代前半へと時代が移り、今“ダンス・ロック”は再び飽和状態を迎えていて、夜の本気ダンスの登場には、やや後追い感があることは否めない。しかし、アルバム後半の楽曲によって、彼らは“ダンス・ロック”の枠組みから解放され、シンプルにいいメロディを書くポップ・バンドとしても立つことができていると言えよう。

 ここで話が一気に飛躍するのだが、1960年代の前半、まだアメリカ産の音楽が国内のシーンを席巻していたイギリスから、黒人音楽を独自に解釈してイギリスならではの音楽性を形成し、それがアメリカに逆輸入されて人気を博す、“ブリティッシュ・インヴェイジョン”というムーブメントが起きた。なかでも、ザ・ビートルズをはじめとしたリバプール出身のバンドたちは、街中を流れるマージー川を由来に、“マージービート”と呼ばれていたことは、洋楽ファンの方ならきっとご存知のはず。さて、なんで急にこんな話になったのかというと、ここに今の日本とのちょっとしたリンクを見出したから。それはつまり、元を辿れば国外に行きつくものの、あくまで国内のシーンの中で独自に形成された音楽性のバンドが、特定の地域から次々と現れているということ。そして、夜の本気ダンスの作るメロディが、UK寄りの泣きの入ったメランコリックなものであることも踏まえて、『DANCE TIME』というアルバムは、日本産の“本気(マージー)ビート”であると思えたのだ。もちろん、かなり強引だと思うし、一言で言えば、駄洒落である。しかし、“夜の本気ダンス”なんて名前を本気で名乗っている彼らには、これぐらいの思い切りがちょうどいいだろう。ちなみに本作には、“Do you have Japanese Style?”と問いかける「Japanese Style」という曲があることも追記しておく。

(金子厚武)

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