サカナクション ALBUM「さよならはエモーション/蓮の花」ディスクレビュー

さよならはエモーション/蓮の花

ALBUM

サカナクション

さよならはエモーション/蓮の花

ビクターエンタテインメント

2014.10.29 release

初回限定盤 <CD+DVD>
通常盤 <CD>


純粋に音楽と向き合い、アート・ワークとしての精度を高める

 言うまでもなくサカナクションは、現在の音楽シーンを代表するバンドだ。「アイデンティティ」「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」などのヒット曲を持ち、アルバム『sakanaction』はオリコンチャート1位を獲得、幕張メッセ2デイズ公演を成功させ、NHK『紅白歌合戦』にも出演。メインストリームにここまで深く浸透しているバンドはほかに存在しないと言っていいだろう。そして、何よりも素晴らしいと感じるのは、彼らが自らの芸術性をしっかりと追求しながら、現在の地位を獲得していること。ニュー・シングル「さよならエモーション/蓮の花」を聴いて筆者は、その想いを改めて強くした。

 特に心を揺さぶられたのは、1曲目の「さよならエモーション」だった。昨年「東進2013全国統一高校生テスト 全国統一」のCMソングとして楽曲の一部がオンエアされたこの曲を山口一郎は、1年以上の時間を費やし、バンドのあらたな代表曲というべき作品へと昇華させた。フォーク、エレクトロニカ、ギター・ロックなどがさらに高い次元で融合されたサウンドも印象的だが、この曲の中軸にあるのは、やはり山口の言葉と歌だと思う。リズムやサウンドと心地よく一体化しながら、ひとつの詩としても成り立たせ、ポップスとしても楽しめる。これまでも彼はふさわしい言葉を探り当てるために膨大な時間を費やしてきたわけだが、「さよならエモーション」の歌詞はひとつの頂点だと言っていい。

 すべての優れた歌がそうであるように、この曲も様々な解釈が可能だと思うが、個人的にはやはり、“自らの芸術性を追求し続けるんだ”という山口の決意が感じられることに感動してしまった。瞬間的な盛り上がり、刹那的な一体感を要求される現在のシーンにおいて、純粋に音楽と向き合い、アート・ワークとしての精度を高めようとするサカナクションの姿勢ははっきりと際立っている。おそらく山口は、この曲で自らのスタンスを改めて示そうとしたのではないだろうか。
「蓮の花—single version—」はダブ、サイケ、ファンクなどを肉体的に反映させたミディアム・チューン。ゆったりとしたテンポの中でしっかりとリスナーの身体を揺らす(夜中の野外フェスで聴いたら昇天しそう)バンド・グルーヴからは、メンバー個々の卓越したプレイヤビリティが感じてもらえるはずだ。シーンとか流行とはまったく関係なく、その音楽性を突き詰めるサカナクション。やはりこのバンドは信頼できる。

(森朋之)

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