ストレイテナー ALBUM「Behind The Scene」ディスクレビュー

Behind The Scene

ALBUM

ストレイテナー

Behind The Scene

Virgin Records

2014.10.22 release

初回限定盤/写真 <CD+DVD>
通常盤 <CD>


“悲しくも美しい”だけじゃない世界を自覚するということ

 このアルバムの直近のシングルが「冬の太陽 / The World Record」だったことである程度、想像できたことなのだが、3年2ヵ月ぶりのオリジナル・フル・アルバムであるこのアルバムの、やり散らかし寸前の自由な現在地を潔くパッケージしたような生々しさはなんだろう? こんなアルバムはテナー史上なかった。

 セルフ・タイトルを冠した前作からメジャー・デビュー10周年記念のファン・リクエストによるセットリストの武道館公演までのストレイテナーはバンドに期待されているバンド像にかなり生真面目に応えていた印象がある。それはエモーショナルで美しいメロディであり、悲しみを抱えたままでもどこまでも走れそうな予感をくれるビートであり、アグレッシブでありつつどこまでも清潔感と正義感の漂う世界観だったと思う。もちろん、それはもはやこのバンドの背骨としてこのアルバムにも存在している。が、大きくウィングを広げた部分がある。それはホリエアツシの歌詞だ。

 震災が起こる以前から彼の歌詞はあらかじめ失われてしまった世界であり、壊れてしまった過去をストーリー・テリングしてきた。しかしだ。今回のアルバムはSFだ。いやもっと言えばスチームパンクなんじゃないかと思う。その手法は最近のほかのバンドの作風で言えばくるりの『THE PIER』を例に出すとわかりやすいと思うのだが、これまでのロードムービー的なホリエの作風からすれば、ずいぶん色が違う。歌詞の中にアルバム・タイトルである“Behind the scene”が含まれる「Asshole New World」は“バチカンを稲妻が撃った”り、“小惑星は太陽に衝突”したりしている。また、「Super Magical Illusion」では“連れて行ってよ竜宮城”“駆け上がれ五重塔”(まぁこれは多分に韻を踏んでる部分もあるけれど)てな具合のシュールさが爆発。端的に言って感情移入して泣いたりできない。しかも”Wonder”と”California”が合体したイカれた「Wonderfornia」からワープした先は月(「A Man On The Moon」)。しかもこの曲、スティーリー・ダンばりの洗練された転調を伴っている。音楽的なことで言えばそのあとの「翌る日のピエロ」の降りてきたとしか言いようのない不穏なAメロ〜光が差すようなサビは白眉だが、爽快とは言いがたい。ラストの「78-0」も収縮するシーケンスと人力ブレイクビーツと端正なピアノが作るループが、摩訶不思議なSF的ムードに拍車をかけ、次の着陸予定地も不明なまま離陸するようなエンディングを迎えるのだ。

 それはこの混沌とした世界そのものかもしれない。でも、その暗喩としてのシュールな歌詞世界というより、バンドがあらたに付いた音楽的筋肉を使って、モノ作りを楽しんだ結果でしかないのだろう。”舞台の裏側”を意味するタイトルは世情を示唆しているだけではきっと、ない。

(石角友香)

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