The Wisely Brothers MINI ALBUM「ファミリー・ミニアルバム」ディスクレビュー

ファミリー・ミニアルバム

MINI ALBUM

The Wisely Brothers

ファミリー・ミニアルバム

primitive

2014.10.22 release


のどかな毒、棘のある温もりを携えたガールズ・バンドの新星

 The Wisely Brothersは、そのバンド名に反して、ガールズ・バンドである。初の全国流通盤となる5曲入りの1stミニ・アルバムのタイトルは『ファミリー・ミニアルバム』だが、ワイズレー姉妹なわけでもないし、アイズレー・ブラザーズのようにメンバーに親戚がいるわけでもない(と思う)。プロフィールを簡単に説明すると、2010年に高校の軽音楽部にて結成された、真舘晴子(g,vo)、和久利泉(b)、渡辺朱音(ds)からなる3人組のガールズ・バンドで、下北沢や新宿のライブハウスを中心に活動を開始し、この夏は“MINAMI WHEEL”にも出演し、大きな話題を集めた。彼女たちのFacebookを眺めていると、音楽を通してまさに家族のような信頼関係を持っていることがわかるし、今年、20歳になる彼女たちを取り巻く空気はとても穏やかで優しく感じる。クリスマスにチーズフォンデュを食べながらプレゼント交換をしたり、夏を満喫するために3人で鎌倉旅行に行ったりしている。爽やかなネオアコか、ほんわかしたボサノヴァかな〜なんて思いながら音源を聴くと、いい意味での裏切りと新しい刺激が待っている。

 真舘のボーカルスタイルはひと癖もふた癖もあるし、コーラス・ワークや楽曲の展開、テンポにおいても独特で、既存の枠には決して縛られない、自由奔放さを感じる。サウンドは、3人で“せーの”で録ったようなハンド・メイドな音作りがなされており、アルバムの中には、安産祈願に行きたかったのに行けなくなった“あなた”と“私”が主人公の「アンニュイ」や、一転して、クリスマスの夜に子を宿した「妊婦」があったりする。また、冷蔵庫のうなる音しか聴こえない、暗く孤独な部屋が浮かび上がってくるリード曲「トビラ」は、ハッピーでヒッピーな気分にもさせてくれるし、「ワンダーボーイ」では、「こんなくだらない毎日だって全部一度きりだから全てが愛おしい」と泣き、英語曲「I’m at watergate」では水門の前で、「誰にも愛してると言えない」と嘆き、「サンショウウオの海」では、愛のない愛が好きだと語る。すでに独特の文体を持っている真舘の歌いっぷりは、一見すると清潔で純粋でガーリィーなのだが、その奥底には女の子の繊細な激しさと、男性である筆者には計り知れないシュールさと言いようのない孤独感があるのだ。

 のどかで微笑ましいようで毒があり、尖っているようで温もりのある複雑な余韻を残す音楽を生み出す彼女たちは、今盛り上がりを見せるガールズ・バンド・シーンの中でも希有な存在として、ほかにはない独特の輝きを放ちながら、マイペースに颯爽と駆け抜けてほしいと思う。

(永堀アツオ)

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