VOLA & THE ORIENTAL MACHINE MINI ALBUM「Regalecus russelii」ディスクレビュー

Regalecus russelii

MINI ALBUM

VOLA & THE ORIENTAL MACHINE

Regalecus russelii

actwise

2014.10.22 release

<CD>


VOLAは君をモラトリアムごと踊らせる

 2014年はNUMBER GIRLのデビュー15周年イヤーであり、リマスター作品が続けてリリースされるなど、ファンにとってはうれしい1年となった。そして、そんな盛り上がりを見ていると、つい“もしかして、再結成とか……”なんて、淡い期待を抱いたりもしてしまうが、やはりそれは実現することなく、メモリアル・イヤーは幕を閉じていきそうだ。まあ、向井秀徳はZAZEN BOYS、田渕ひさ子はtoddleやbloodthirsty butchers、そして中尾憲太郎もART-SCHOOLやSEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HERに参加するなど、それぞれが精力的な活動を続けているので、再結成をする理由は特に見当たらない。

 そして、“再結成はない”ことの決定的な理由は、アヒト・イナザワの不在であった。ZAZEN BOYSからの脱退後、2005年に自らがフロントマンとして結成したVOLA & THE ORIENTAL MACHINEは、2010年に傑作『PRINCIPLE』を残すも、徐々に活動のペースが落ち、活動休止状態に突入。この間、アヒトは東京を離れ、地元の福岡に戻っていたのだ。しかし、今年の6月に2年ぶりの復活ライブを行うと、レーベル移籍を経て、5曲入りの新作『Regalecus russelii』を完成させた。

 まずお伝えしておきたいのは、彼らが少しも錆びついてはいないということ。’70年代後半から’80年代前半の欧米におけるオリジナルのポスト・パンク~ニューウェイブと、ナゴムを起点とするジャパニーズ・ニューウェイブの双方を並列に愛し、’00年代のリバイバル・ブームと共振して生まれたVOLAのダンサブルなロックは、同じく今年復活を果たしたsyrup16gのドラマーでもある中畑大樹をはじめとした歴戦の猛者たちが、そのプレイヤビリティを惜しげもなく注ぎ込むことによって、今も輝きを放っている。

 全体的な傾向としては、『PRINCIPLE』のカラフルなエレクトロ路線がやや後退し、ギター主体のソリッドなバンド・サウンドに回帰しつつも、一曲一曲のアレンジはどれもかなり凝ったものになっている。POLYSICSからthe telephonesへと受け継がれている、語尾を裏返す唱法がいかにもニューウェイブな「Kick & Knife」は、バンドの帰還を告げるアッパーな一曲で、間奏ではダブサンバとでも言うべき不思議なサウンドスケープを展開。不機嫌極まりないポスト・パンクの「DOMINO CASTLE」、本作中では最もポップで、スティールパン風の音色も印象的な「Honey Honey」と続き、ラストの「妄想 Rader」ではダブステップを取り入れて、ダークな世界観で作品を締め括っている。

 しかし、本作の最重要曲は間違いなく「Far Tokyo」だろう。ボーカルに深いエコーがかかったサイケデリックなミドル・チューンで歌われるのは、バンドの再始動と、それに伴う自身の心境の揺らぎを綴ったドキュメント。レーベルメイトとなったMONICA URANGLASSの68が歌詞の中に登場したりと、おそらくはほぼノンフィクションなのだろう。そもそも、『Regalecus russelii』とは、深海魚の“リュウグウノツカイ”を意味し、現在の拠点である福岡を竜宮城に例え、東京との距離に思いを馳せるというのが、本作に通底するムード。その中でも最も生々しいのが「Far Tokyo」で、この曲を収録したことこそが、空白の期間に決着をつけ、あらたな歩みを始めることの宣言であるように思う。

 アヒトは「Far Tokyo」で、“永遠の モラトリアムさ”と歌っている。“ロックンロールは君の悩みを解決したりはしてくれない ただ、悩んだまま踊らせるのだ”という名言を残したのはピート・タウンゼントだが、現在VOLAが鳴らしているのは、モラトリアムを抱えたまま、それでも人を踊らせるダンス・ミュージックだ。福岡と東京の距離は少なからずインターネットが埋めてくれるが、心の距離は結局のところLINEでは埋まらない。だからこそ、僕らは踊ることをやめないのだ。

(金子厚武)

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