メレンゲ ALBUM「CAMPFIRE」ディスクレビュー

CAMPFIRE

ALBUM

メレンゲ

CAMPFIRE

キューンミュージック

2014.10.22 release

初回生産限定盤 <CD+DVD>
通常盤 <CD>


変わらぬ美しいメロディと、生きている物語

 最初に白状しておきます。僕のCD棚にあるメレンゲのCDは『少女プラシーボ』『サーチライト』『初恋サンセット』あたり。その後も折りに触れて聴いてはいたが、きちんと向き合うのはおよそ10年ぶり。今回はレーベル移籍後初のフル・アルバムで、「クレーター」「“あのヒーローと”僕らについて」「楽園」など、テレビドラマやアニメや大きなタイアップが付いたヒット曲も多数収録。もしかしてここから入る人も多いと思うので、同じように、新しいバンドを聴くようなフレッシュな気持ちで聴こう。

 淡く、切なく、複雑な感情の襞をそっと揺るがすような繊細さを持った、メロディ・メイカーとしてのクボケンジの天才はまったく不変。一見シンプルだが、実はコード進行や構成ががっちりとしていて展開が多く、ポップスとしての精密度と完成度の高さも不変。というよりもさらに上がって、エレクトロを導入した「“あのヒーローと”僕らについて」、ご機嫌なサックスがスウィングする「さらさら90’s」、ケルティックなフレーズが高らかに鳴り響く「シンメトリア」など、全体的にキラキラした分厚いアレンジ。ボーカルも、かつての高音の危うさは払拭され、音に負けない力強さを保ちながら、メロディと歌詞の持つ微妙なはかなさを表現する。10年以上バンドをやっていて、これほど瑞々しい新鮮さを感じさせるのは、奇跡的と言っていい。とてもいいアルバム。

 ただ歌詞はずいぶん変わった気がする。ガラス窓に描いた君の似顔絵。君が笑うだけで春が来た気がしたあの日。海辺で君と一緒に作った砂の城。思春期特有の恋の情熱と空想が溶け合ったいくつもの名シーンの主人公たちは、「東京にいる理由」「Ladybird」などでは、ずいぶん成長して人生の重みを感じるようになっている。もう少年と少女ではない自分たちに戸惑いながら、変わらない何かを探している、その姿に心が揺れる。まるで長い連作小説のような、新作を聴くとまた過去を振り返って確かめることのできる、こんなにイメージ豊かな歌詞を書けるソング・ライターはきわめて貴重だ。

 ヒット曲があるとかないとかは別にして、長く続けるアーティストには理由がある。メレンゲはその理由と意味をしっかりと持っている。

(宮本英夫)

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