サニーデイ・サービス ALBUM「Sunny」ディスクレビュー

Sunny

ALBUM

サニーデイ・サービス

Sunny

ROSE RECORDS

2014.10.21 release


ふと夏の魔物の誘惑に妄想させられてしまったかのような一枚

 そんな人はいないと思うが、このサニーデイ・サービス4年ぶりの新作の前に、もしまだであれば、曽我部恵一の最近のソロ作から聴いてみてほしいと思う。昨年の『超越的漫画』でも今年春に出た『まぶしい』でもいい。そうすれば、このバンドが曽我部にとってどういう存在なのかが際立って伝わってくることだろう。現在43歳の彼の、いや、仲間である田中貴、丸山晴茂という人生の半分を通過した同世代の彼らの、痛み、寂しさ、哀しみといった年齢を重ねるごとに増幅する情緒が、決して突っ張ることなく弱音を覗かせながらこちらに問いかけてくる。それは、曽我部が近年のソロでかなり強硬な姿勢で攻めの表情を見せているのとは割と対照的だ。

 “ねえ、夏ってどんなだっけ?”。

 では、訊ねよう。これは単純なノスタルジックなのか? いや、違うだろう。30年前の自分と対話しようとしているのだろうか? それもたぶん違う。“夏ってどんなだっけ?”と訊ねながらも、永遠に戻ってこない夏の強い日差しを恋しがるのではなく、これから訪れる秋の日の小さな日だまりの中にただまどろんでいたいだけなんだ、と呟くような、そんな感覚。ただ、今の自分の薄日さす日々の中に、ちょっと間違って昔の夏の日差しを重ねてしまっただけなんだ。恐らくそんな気分ではないかと思う。遠い記憶の中の夏という魔物にふと誘惑されちまったんだ、と。

 だから、実際には本作はおおむね穏やかな曲が揃うも、時折聴き手を混乱させるような曲が飛び出す。初恋の女の子に向けて綴られた「少年の日の夏」では、ストリングスがストレートに叙情性をかき立てたかと思ったら、“みんな はしゃぎすぎてるみたい”がひたすら繰り返される「エアバルーン」では、フィル・スペクターmeetsダイナソーJr.みたいな錯綜したラフな演奏で混沌とした気分を伝える、といった塩梅。しかしながら、本作は、まるでこれらがすべてベッドの中での妄想だったんだと言わんばかりに、部屋で無邪気に音を鳴らし合ったデモのような「きみが呼んだから」で終わる。そこには、もちろん秋の午後の柔らかい日だまりがそっと息づいているのだ。

 繰り返すが、曽我部恵一自身は近年のソロ作でとんでもなく挑発的で攻撃的な姿勢を見せている。しかしだからこそ、ふと夏の魔物の誘惑に妄想させられてしまったかのような本作はチャーミングなのだし、その甘やかな風合いもまとわりつくことなくサラサラと溶けていく。曽我部たちはなんて理想的に年齢を重ねていることだろう!

(岡村詩野)

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