セカイイチ MINI ALBUM「Anaheim Apart」ディスクレビュー

Anaheim Apart

MINI ALBUM

セカイイチ

Anaheim Apart

Anaheim Records

2014.10.15 release

<CD>


アナハイム・アパートにある無数の引き出しが開かれる

 セカイイチというバンドは、割と損な役回りを演じてきたところがある。’03年に結成された頃、リーダーの岩崎 慧の歌もの指向……わけてもバンド・サウンドの中でホワイト・ソウル路線を生かすような、割と正攻法な音作りは、シティ・ポップ再評価に沸く現在を先取りしていたようなところもあったが、まだ、例えば様々な方法論が細分化され尽くされていた当時の気風の中でやや埋もれてしまいがちだった。さらに、岩崎 慧というソング・ライターは貪欲すぎるところがあり、例えばよりバンド・サウンドの割合を増やそうとすると音圧が強くなりすぎてほかの曲とのバランスが悪くなることもしばしばあった。それゆえに、真意が伝わりにくくなっていたところがこれまでなかったわけではないだろう。言ってみれば、一見スマートでなんでもできるようで、実は不器用なバンドだということだと思う。

 例えば、あらたに設立した自主レーベル=Anaheim Records第一弾となるこのミニ・アルバムにおいて、その不器用さが露骨に出ているのが5曲目の「ウォルターの報われない世界」だ。ヘビーでずっしりと重い低音が不穏な空気を醸し出し、そこに加工しまくった声で綴られる岩崎のポエトリー。マイク・パットンやイギー・ポップもかくや、というような重量感あるこの曲が、たった7曲というコンパクトなフィールドの中の色彩を一気に変えてしまっている。しかしながら、ルパート・ホルムズのようなAOR然とした3曲目、ウィルコあたりを視野に入れて作ったような4曲目、デヴェンドラ・バンハートの初期を思わせるフォーキーな6曲目、レゲエ風の7曲目……と今回もそもそもが触れ幅が大きい、というよりも、リスナーとしての引き出しを次々と開けてしまったかのような構成になっており、このバンドの後先を考えない無邪気さが最終的に大きな魅力になっていることを強く認識させられる、という具合だ。

 もちろん、収拾がついてないじゃないか、という意見もあることだろう。要は一点にフォーカスさせるような自分たちの見せ方をしない、効果的なプレゼンの仕方がうまくないのだ、彼らは。結成からこの10数年、それゆえ彼らは割を食ってきたところがある。だが、そこで今作のアルバム・タイトルを見てほしい。自分たちの新しいレーベルの名前を集合住宅になぞらえたタイトルからは、たくさんの部屋(引き出し)があって結構、だって、このアパートこそが僕らの音楽性そのものだもの、といった堂々とした自負が感じ取れる。そっちがその気なら、こっちも懐を大きくもって受け止めてやるしかないじゃないか。今、私はそんな親のような気持ちで聴いている。

(岡村詩野)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人