the pillows – アルバム『ムーンダスト』について、山中さわおが今の気持ちを真摯に語る。超ロング・インタビュー&結成25周年記念ライブのレポートを。

the pillows

結成25周年を祝うスペシャル・ライブ<the pillows 25th Anniversary NEVER ENDING STORY“DON’T FORGET TODAY!”>の興奮も冷めやらぬなか、いよいよthe pillows待望のニュー・アルバム『ムーンダスト』がリリースされる。アルバムとしては『トライアル』以来、実に約2年9ヵ月ぶりとなる本作。そこに至るまでの間には、周知のとおり約1年にわたる活動休止期間と、25周年のアニバーサリーという、対照的なふたつの出来事があった。それらを潜り抜けながら、彼らは果たして、どんなアルバムを生み出していったのだろうか。the pillowsのフロントマン=山中さわお(vo、g)に今回もまた、バンドと音楽に対する忌憚のない想いを、そして本作『ムーンダスト』に込めた様々な想いを、率直に語ってもらった。

INTERVIEW & TEXT BY 麦倉正樹


3人でバンドをやっているんだっていうことを、もう一度頭に置いて

──いよいよアルバム『ムーンダスト』がリリースされます。本作の制作は、いつ頃からやっていたのですか?

曲を作った時期は、もうバラバラすぎて……古いのはホントに古いんだけど。

──タイトル曲となった「ムーンダスト」も、活動休止前に作ったと言っていましたよね。

活動休止前というか、活動休止を世の中に発表する前に、メンバーでいろいろ話し合いをするじゃない? そのときから、俺は復活したらこれをやろうと思って作っていて。で、そのあと、俺がソロ・アルバム(『破壊的イノベーション』2013年2月発表)を出してみんなに嫌われつつ(苦笑)、“俺、べつにthe pillowsやるのになあー”、“今はこういう荒療治が必要なんだけど、そんなことお前らにはわからないからしょうがないね“って思いながら作っていましたよ(笑)。

──はい(笑)。

だからそれが、2、3年前ぐらいになるのかな。そうやって作曲自体はそのぐらい前から始めていたけど、実際のレコーディング作業は……シングル(「About A Rock’n’Roll Band」)に関しては去年のうちに録っていたけど、今回のアルバム制作っていうイメージは、今年の4月ぐらいですかね。

──そもそも、どんなアルバムにしたいと思って、今回の制作に臨んでいたのですか?

とにかく俺としては、ふたりに宿題を出すような感じで活動を休止させたわけで……でも、俺が審査員みたいな気分でいるのではなく、俺は俺でやっぱり3人でバンドをやっているんだっていうことを、もう一度頭に置いて制作に臨もうとは思っていたかな。つまり、俺が曲を生み出したときに浮かんだイメージをあまり潔癖にすまいというか、ふたりから出てくるものが俺の想像の範囲内だったとしても、ひとまずそれを良しとしようという。やっぱり、俺が思ったとおりではつまらないというか、想像を超えたもので俺を唸らせてほしいっていう理想が、バンドという形態を取っている以上、もちろんあるわけだよね。

──そうですよね。

まあ、活動休止明けなので、サボる気持ちでスタジオに来ることは絶対にありえないっていうのは、もうわかっていたから……そこでどんなプレイをしようが、ちゃんと考えてそれをやっているんだと信じようと思ったのかな。例えば、「About A Rock’n’Roll Band」みたいにコードでしか弾いていないような曲でも、いろいろ考えた結果、これがいいと思ってやっていると信じたいという。そういう気持ちで、俺もスタジオに行かなきゃならないっていうのは思っていたんだよね。

──なるほど。

で、最初の曲出しの日に、俺がその場で10曲ぐらいバーッと弾き語りで披露しながら、それに対してパッと反応して合わせるっていうことをやったんだけど、あまり俺が思ったようにはならなくて。で、ちょっと不満みたいなものを俺が口にしたら、(佐藤)シンイチロウが「いやいや、お前はもう長い間その曲を温めてきたんだろうけど、こっちは今初めて聴いているんだから、こんなもんだろ」みたいなことを明るく、べつに不穏な感じではなく俺に言ってきて。で、それに対して俺も明るく「でも、そこでパッと聴いてパッとやれるのがthe pillowsじゃないの?」って言って……まあ、そうやって楽しく会話できたんだよね。

──お互い心の中で思っているのではなく。

うん。実際、口に出して。だから、それはちょっと良かったかな。

──休止明け初のアルバム制作というのは、やっぱりいつもとは違いましたか?

そうだね。でも、そのわりにはふたりともすごいフラットだったと思う。だってシンイチロウ、相変わらず酒飲んでたからね(笑)。あれだけ俺に言われても、普通に飲んでたし……なんだろう、イニシアチブの取り合いみたいな感じにはならなかったんだよ。“お前がやる気を出せって言うから、やる気を出したよ”みたいな感じでもないっていうか、そういう対抗意識みたいなものもなく、音作りとかに関しても、お互い普通に意見を言い合ったりとかして。

──そこはわりとフラットに?

うん。“お前がそう言うんだったら、俺だって意見があるぞ”みたいなパターンも、一応あり得るわけじゃない? そういうのは、まったくなかったからね。あくまでも最終決定は山中で、でもアイデアとか情熱は注ぐよっていうスタンスだったから。俺が逆の立場だったら、たぶんそうじゃなかったと思う。まあ、俺が3人いたら、そのバンドは即解散だよね(笑)。そういう意味で、ふたりは大人だったなって思った。まあ、大人っていうか、ちょっとお爺さんになりかけているのかもしれないけど(笑)。

そういう“残り時間”みたいなものは、やっぱり考えているんですよ

──いやいや(笑)。具体的な楽曲についても聞いていきたいのですが、1曲目の「Clean Slate Revolution」から、非常に勢いのある抜けの良いロック・ナンバーになっていて。しかし、その第一声が「The last period」であるという。

ああ、そうだね。

──この曲に限らず、本作は“残された時間”みたいなものを、どこか意識したアルバムになっているのかなって、ちょっと思ったのですが。

うん。“残された時間”っていうのは、最近すごく考えていると思う。「ムーンダスト」もそうだよね。あれは、実際に“ムーンダスト”っていう花があって、その花言葉に“永遠”っていうのがあったから付けたタイトルなんだけど。まあ、花言葉からタイトルを考えるなんて、ちょっと乙女チックで気持ち悪いなと思いながら……これを言うたびに、いつも自分で気持ち悪いんだけど(笑)。

──(笑)。“ムーンダスト”というのは、青紫色をした……。

カーネーションだね。その花言葉が“永遠”なんだけど、やっぱり肉体は永遠ではないので、いつか何かしらの終わりを迎えるわけだよね。でも、あのときの気持ちはずっと持っていたいというか、あのとき楽しかったなって思う気持ちは、永遠と思いたいなっていう。そういう願いも込めて付けたんだけど。まあだから、そういう“残り時間”みたいなものは、やっぱり考えているんですよ。でも、元気っていう(笑)。

──あ、そこは元気なんですね(笑)。

うん。たぶん、2、3年前は、そうやって残り時間とかを考える元気が、俺になかったんだと思う。

──というと?

なんかね、ちょっとそこは受け入れて……いや、そこはもう通り過ぎたんだな。だから、なんかちょうどいい時期なのかもね。もう本当にさ、余命何ヵ月の親とは、お墓の相談とかできないわけですよ。

──えっ、“お墓の相談”ですか?

いや、ホントに。たぶん、元気なときは、言ってくるわけよ、「お墓、どうしよう?」とか。で、そういうときは俺も、「わかった、考えるよ」みたいなことを言えるわけ。だから、俺は今、新曲も書けていて、身体も元気なんだけど……あと5年とか経ったら、みんな結構いい歳だなとか、そういうことをリアルに考えるわけですよ。やっぱり、“残り時間”っていうのはあるんだなって。

──はい。

でも、それが悲しい感じじゃないんだよ。というのはたぶん、俺の人生は幸せだっていう烙印を、もうすでに押してもらえたというか……これから先どうなろうと、the pillowsの25年っていうのは、きっと幸せだったんだよ。だから、若手のバンドたちに対しても、“俺はもう証明したけど、君たちはこれからまだ証明しなきゃならないから大変だね。大変だけど楽しいよ”って思えるというか、俺はもう証明できちゃったっていうのがあって。俺が明日、痴漢とかで捕まらないかぎりは、もう大丈夫だっていう(笑)。

新曲を書かなくてもいいやみたいな気持ちが、初めてちょっと生まれた

──なんかこのアルバムは、ちょっと不思議な感じがあるというか、すごく抜けの良いロック・アルバムであると同時に“いつまでもいると思うなよ”という感じが、どこか宿っているような気がします。

ああ……そういうのは、まあ出ちゃったのかな。でも、俺の気分としては、まだまだ全然……シーナ&ロケッツ先輩みたいになりたいと思っているというか、そんなに新譜は出さなくても、たまにフェスとかに出て、俺の聴きたい曲をやってくれたら、もう最高に楽しいみたいな。そう、俺は今、新曲を書いているけど、書かなくてもいいやみたいな気持ちが、初めてちょっと生まれてしまったんだよね。

──えっ?

っていうのは、今まで作ってきた曲を、全然やれてないことに気づいたんだよ。この1年は、そういうちょっと懐かしい曲とかもライブでやってみたりしていたんだけど、そしたらそれがすごい楽しくてさ。で、その曲を久しぶりにやるために、その前後に入っている曲とかも聴き直してみるじゃない? そしたら、“これ、全然いいのになあ”とか思ったりして。そこに対して今、なんかワクワクする気持ちでいるんだよね。たぶんそれは、さっきの墓の話じゃないけど、きっと今、新曲を書けているからなんだっていうのはわかっているんだけど。新しい曲が書けなくなって、ネガティブな気分で昔の曲をやるのはつらいけど、そうじゃなくて俺は今、すごく元気だから。それで、自分が入るお墓のデザインとかを考えて、なんかウキウキしているみたいな感じなのかな。

──また、ドキッとするような発言を……。

まあ、そうかもね(笑)。でも、そんな感じはあるんだよね。

──でも、なんとなくわかります。切ないことを、ウェットにならず、どこか楽し気にやっているというか。もちろん、「About A Rock’n’Roll Band」のような抜けの良い曲もあるわけですが。

でも、あれも“あの日のロックンロール”って歌っているから、ちょっとノスタルジックなほうだったりするわけじゃない? でもまあ、それが自然なのかな。

──今回のアルバムの後半部の流れは、結構すごいと思っていて……「アネモネ」なんて、ちょっと珍しいくらいストレートなラブ・ソングになっていますよね?

えーと、その曲はね……俺はメロディを先に作るので、そこにその歌詞が乗ってしまったというか、そこがいちばん最初に出来て、歌詞もあとで変えようぐらいな感じでAメロ、Bメロと考えていったんだけど、そうやってやればやるほど、絶対にこの歌詞がいいと思って……最近、そういうのが多いんだよね。「ハッピー・バースデー」のタイトルも、“ハッピー・バースデー”なんて絶対ダメだと思ったのに、いろいろ考えた結果、絶対にこれがいいっていう。日常的に口にする言葉を考えたら、誕生日のときにポエトリーなことなんて言わないわけじゃない? 誕生日には、やっぱり「ハッピー・バースデー・トゥー・ユー」しか歌わないよなって思って。

──そこにひねりはいらないと。

そう。むしろ、それがいいなっていう。この「アネモネ」もそうなんだよね。「誰よりも好きだよ」とか、そういうオリジナリティのない言葉がいいというか。普通、作詞家っていうのは、他人が使っていない言葉で、遠回りをして伝えることを競ったりするんだけど、そうじゃないときの何か……伝わるスピードとか、強さのある言葉っていうのかな。そういうものを使いたかったんだよね。でもそれは、自分がオリジナリティのある歌詞を書ける自信がないとできないというか、アルバム全体を通して良い歌詞を書いたなっていう自信があるからこそできたんだよね。

──「Break a time machine!」も結構ストレートな歌詞ですよね。英語詞ですけど「オレたちはタイムマシーンを壊しにいくつもりだ!」って。

あ、それはもう、ザ・コレクターズ先輩の「僕の時間機械(タイムマシーン)」を勝手に受け継いだ歌詞というか、もう一回、僕、歌わせてもらいますっていう曲なんだけどね。まあ、ザ・コレクターズは「壊しにいく」とは歌ってないけど、タイムマシーンはいらないっていうテーマの歌なので。それは常々俺が思っていることでもあるんだよね。

──続く「都会のアリス」も、言葉遊びの曲のようでいて「キミを前に運ぶのはキミの足だけさ」という、今のthe pillowsとシンクロするような歌詞が入っていたりして……。

うん、なるほど。

──あと、「Song for you」というタイトルも、いつになくストレートだなと。

その曲は、全体のバランスを見ながら、いちばん最後に入れた曲で……だから、歌詞もちょっと「アネモネ」に寄せることを意識して作ったんだよね。こっちは英語詞だけど。で、曲自体は結構古くて、もともとは俺のMDに入っていたもので。だから、相当古いんだけど……そう、俺、アルバムの曲順は、すごい早い段階で考えたいほうなのね。やっぱりアルバムっていうのは、音楽的なリズムとかキーの並びが大事だと俺は思っているので。で、これがいいと思うものを並べて、それでいいってみんながOKするんだったら、この「アネモネ」から「メッセージ」に行く間にふさわしいやつを、俺が作るって言って。で、その2曲の間に入るような曲を……歌詞は英語詞にしたほうが、伝わり方の部分でクッションになっていいだろうっていうことで、作っていったんだけど。

ひねらないブームがきた(笑)

──なるほど。

そう、曲順のことで言えば、「プレイリー・ライダー」から「ハッピー・バースデー」の流れっていうのが、最初どうもしっくりこなくてさ。「プレイリー・ライダー」のエンディングのドンカドンカっていう楽しげなシャッフル・ビートが、どうも「ハッピー・バースデー」に繋がらなくて。しかも、「ハッピー・バースデー」は録ったのがずいぶん前だから、音もちょっと違っているんだよね。それで“うーん”とか思って、「あ、ストリングスを入れよう」って俺が言って、真鍋(吉明)くんにストリングスの音を作ってもらったの。「ハッピー・バースデー」もストリングスの音が入っているから、「プレイリー・ライダー」のバンド・サウンドがジャーンって終わったあとに、ストリングスが十何秒か流れて「ハッピー・バースデー」にいくのがいいんじゃないかって。それは全部の曲順を決めてから、新しく付け足したものなのね。っていうふうに、曲順っていうものに、俺はすごくこだわるんだよ。

──「Song for you」も、その考え方で作ったと。

そうそう。で、何か作ろうと思ったら、昔のMDの中に、いいものを見つけて、よし、これをやろうって思って。で、これもあんまりアレンジを凝らずに、ギターもコード弾きで、ソロもない感じにして。たぶん、ザ・ブリーダーズとかが大好きだった時代に……まあ、ザ・ブリーダーズは今も好きだけど、いちばん聴いていた時代に作った曲だと思うんだよね。

──ただ、曲のタイトルが「Song for you」で、それに続く楽曲のタイトルが「メッセージ」ですよ?

ああ、タイトルがね……たしかに、いつもよりひねってないかもしれない(笑)。やっぱり、なんかそういうブームがきているんだね、今、俺の中で。ひねらないブームがきた(笑)。

──その「メッセージ」という曲の「過去と未来の自分に手紙を書いてみるんだ」という歌詞も、どこか今のthe pillowsの状況を想起させるのですが。

ああ、なるほど。でもね、そのくだりは、自分ではおそらく……俺の嫌いなやつとか、本当にくだらない人間とかも、生まれた瞬間からそうだったんじゃないはずだっていうのがあって。生まれた瞬間から悪意を持っていたとは、やっぱり思えないというか。だから要するに、どんなくだらないやつも、ちょっと過去を思い出せよっていう気持ちと、この先、自分の中身が成長していったときに、いろいろくだらないことが恥ずかしくなるよっていうことが言いたいわけ。自分の過去と理想的な未来っていうのを、ちょっとは思い出したほうがいいんじゃないの、バカどもが、っていう。まあ、そういう歌です(笑)。

バンドらしい仕上がりの曲に、やっぱり俺は愛着を覚える

──(笑)。そして、そのあとにアルバム・タイトル曲である「ムーンダスト」がくるわけですが……この曲の制作現場は、どんな感じだったのですか?

うーん、レコーディングは、ちょっと苦労したかな。真鍋くんのギターのフレーズが、なかなか出てこなくて。前までは、もう俺が全部考えて、“じゃあ、これ弾いて”っていう感じでやっていたんだけど、それはもうやるまいと思っていたので。だから、しっくりくるギターを弾くまで、いろんな方法を試したりとかして。すごい遠回りしながら、やっと辿り着いた感じだったかな。

──こういう曲は、3人で鳴らしてこそ、歌詞が活きてくるような曲ですものね。

そうだね。実際、「ハイブリッド レインボウ」とかも、俺のアイデアなんて全然少なくて、ちゃんとバンドっぽいものだし、俺のソロっぽくなった時代に作った「雨上がりに見た幻」も……そう、あの曲だけは違うんだよ。あれはホントにスッと真鍋くんがギターのフレーズを弾き始めて。だから、あの曲も俺はすごい愛着があるんだけど……そうやって、バンドらしい仕上がりの曲に、やっぱり俺は愛着を覚えるから、この「ムーンダスト」は、どうしてもそうしたかったんだよね。

──結果的に、素晴らしい仕上がりの曲になりましたよね?

うん、いいよね。良かった(笑)。

──なんか新しいタイプのセンチメンタルな感じが、この曲にはあるような気がします。

そうだね。特に「ムーンダスト」は、活動休止のときに作っているからさ。いつ復活するのか全然わからない段階で、歌詞まで書いてしまったので。まあ、きっと大丈夫だろうとは思っていたけど、変な話、この曲を書いたときは2〜3年前だったけど、その2〜3年間の思い出っていうのは、これはもう真実だっていうかさ。その思い出自体は、例え今後どうなろうとも変わらないっていう。そういうのが入っちゃっているよね。

──というと、この曲が発表されない可能性もあった?

いや、それはないけどね。俺は絶対に音楽は止めないから、ソロでもなんでも出したと思う。そう、この曲のデモはデモで、そのバージョンなりの良さがあったんだよ。ドラムとかは全部打ち込みだったけど、そういう平坦なビートの上に、俺がギターを乗っけていて。実は、そのバージョンも一度やってみたんだけど、なんかやっぱりthe pillowsには合わなくて。だからまあ、いつもどおりのドラマチックな感じでやってみたら、やっぱり俺がサビで声を張って歌うような、こういう仕上がりになって……でも、それがthe pillowsだなって思ったんだよね。

──“ムーンダスト”の花言葉は“永遠”でしたっけ?

やばいよね(笑)。俺もついに花言葉を使うようになったかって。でも、それはセットで知ったからしょうがないんだよ。サントリーが開発した青いカーネーションっていうのがあって、その花言葉は永遠っていうコピーがあって。それを見て、ああ面白いな、俺は青い花が好きだから覚えておこうと思って……それを出しちゃったね(笑)。あと、個人的なジョークとしては、デビュー・アルバムが『MOON GOLD』だったから、“ゴールド”でデビューして、25年経って“ダスト”っていうのが、まあ俺たち的には面白いかなっていう。

──そして、その「ムーンダスト」でしっとり終わるのではなく、最後「Ideal affection」でカラッと明るくアルバムを締めるという。

まあでも、the pillowsは、いつもしっとり終わらないですよ。それはもう、佐野元春さんの『No Damage』の影響で。あのアルバムは「情けない週末」で終わらなくて、「Bye Bye Handy Love」っていう軽いスイングの曲で終わるんだけど、俺はあのアルバムが本当に好きでさ。ただ、中学生ながらに“あ、こういう曲で終わるんだ”って、ちょっと意外に思っていたんだよね。で、のちのちいろんな映画を観るようになって、感動的なラスト・シーンのあとに暗転して、エンドロールが上がるときに、軽い曲が流れる映画っていうのが結構多いことに気づいて。あのなんとも言えない切ないノスタルジックな感じが俺は好きで……もう、一生これでいいやって、俺は思っていて。だから、全アルバム、そういう感じの終わり方でいこうって、実は思っているんだよね。

とにかく身体と時間が足りないんだよ。もう倍くらい時間がほしい

──それにしても、こうしてアルバム全体を聴いてみると、また様々な新しい発見があって……。

まあ、新曲だからね(笑)。そういうものが出てなかったら、前のアルバムをもう一回リリースするのと同じというか。やっぱり新曲だから、いろんなものは出ちゃうよね。

──さわおさん自身は、完成したものを聴いて、どんな感想を持っていますか?

うーん。だんだんと気に入っていった感じかな。最初はやはり……ここ何枚かは、俺のソロ・ワークのような作り方をしていたんだけど、今回はわりと俺がここ数年やってきたゴールじゃないゴールに曲がどんどん向かっていったので、なんか普通だなって思って。the pillowsならではの良さってあんまりないのかなと最初は思っていたというか、そういう心配を俺はしていたんだよね。でも、そこからいろいろアイデアを足していって、だんだん“ああ、面白いか”とか“まあ、the pillowsらしいのかな”と思うようになって。こうやってインタビューを受けて、だんだんわかってくるような感じかな。

──新しいギアが入っているような気はしますが、決して変化球のアルバムではないですよね。

まあそれは、俺が考えてないからだと思う。俺が考えると、どうしても変化球がグイグイ入ってくるからさ(笑)。

──そういう意味でも、the pillowsらしい一枚、バンドらしい一枚になったのではないですか?

うん、そうだね。じゃあ、まあたぶん、とっても良かったんだろうね。結果的に、いろいろバンドらしくしたことが。

──そして、11月の末からは、年をまたいでの大規模な全国ツアーが始まりますが、その先の展開とかって、もうすでに何か考えているのですか?

うーん……まあ、いつものリズムだと、今年THE PREDETORSをやるはずだったんだけど、GLAY20周年、the pillows25周年でアニバーサリー同士だから、そこでTHE PREDETORSをやっているのもおかしいよねって今年は見送ったから、来年やりたいなっていう話はしていて……あと、アメリカ・ツアーとかもそうなんだよね。もうそろそろ行っておく時期なんだけど、それも来年かなあと。あと今、何曲か新曲を書いていて……そのくせ、あんまり新曲をやりたい気持ちがないっていうか……レコーディングはしたいんだよ。新曲をレコーディングして、自分で聴きたいとは思っているんだけど、それよりも過去の曲をライブでもっとやりたい気持ちが、今はすごいあるかな。そう、こないだ久しぶりに「ROBOTMAN」と「ビスケットハンマー」(※いずれもアルバム『Thank you, my twilight』に収録)をライブでやったんだけど、“これ、いいなあ”とか思って(笑)。こういうのをもっとやりたいなっていう気持ちで今、俺はわりと満たされているのかな。

──なんか精神的に余裕みたいなものがあるのでしょうか?

そうだね。まあそれもやっぱり、新曲を作れているからっていうことなんだろうけど。

──さわおさんの場合、それがとにかく大きいようですね。

うん。だから今はね、身体がホント3つ4つほしいっていう。the pillowsもやりたいけどTHE PREDETORSもやりたいし、ソロもやりたいし、新しく何かも始めたいし……とにかく身体と時間が足りないんだよ。もう倍くらい時間がほしい。

──それはいい話ですね。いろいろ大変でしょうけど。

いや、大変だとは思ってない。ただ、身体と時間が足りないっていう。やりたいことがありすぎて困っているんだよ。

──つまりは今、非常に元気であると?

うん。まあ、そういうことになるのかな(笑)。

DISC INFORMATION

ALBUM 2014.10.22 release
『ムーンダスト』
avex trax
<CD+DVD>
<CD>
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[CD収録]①Clean Slate Revolution②Break a time machine!③都会のアリス④About A Rock’n’Roll Band⑤プレイリー・ライダー⑥ハッピー・バースデー⑦アネモネ⑧Song for you⑨メッセージ⑩ムーンダスト⑪Ideal affection
[DVD収録]「ムーンダスト」(Music Video)/「Break a time machine!」(Music Video)

LIVE REPORT

<the pillows 25th Anniversary NEVER ENDING STORY“DON’T FORGET TODAY!”>
2014.10.4@TOKYO DOME CITY HALL

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「この25年、遠回りしたように見えるかもしれない。
でも、遠回りしたんじゃない。俺たちは、近道をしなかっただけだ」

結成25周年を祝うべく、約1年にわたって繰り広げられてきたthe pillowsの“NEVER ENDING STORY”シリーズ。そのクライマックスとも言えるこの日のライブは、“DON’T FORGET TODAY!”と名付けられていた。

暗転後、ホール側面のスクリーンに、幼少期の写真から歴代アーティスト写真まで、3人の足跡を辿るようなスライドが映し出されるなど、特別な雰囲気が漂う会場。そこに現れたthe pillowsが、まず最初に打ち鳴らしたのは、「夢の向こうまで 僕は旅を続けるつもりだよ キミを連れて」──そう歌い出される「スケアクロウ」だった。その後、一気にテンポを上げながら、またたく間に観客をロックしてゆくthe pillows。

最初のMCで、「今朝、目を覚ましたら、25年経っていました。目を覚ましたのに……まだ夢の中だ!」という記念日恒例のセリフが言えないことを、山中さわおは笑っていた。そう、この日は、the pillowsの結成日である9月16日から2週間ちょっと経った10月4日。しかし、その微妙なズレが、結果的にこの日のライブを、祝祭的なアニバーサリー空間とは、やや趣の異なるものにしていたように思う。誕生日をファンと盛大に祝うよりも前に、彼らはその先の未来に向かって、すでに歩き始めているのだ。とはいえ、この日のセット・リストには、やはり格別のものがあった。the pillowsの歴史を辿るというよりも、彼らが25年の間に鳴らし続けてきた音楽と、放ち続けてきたメッセージを凝縮したかのようなセット・リスト。「アナザーモーニング」や「サリバンになりたい」、「I know you」といったライブの定番曲から、「日々のうた」「確かめに行こう」「ぼくは かけら」といった比較的レアな楽曲まで、新旧織り交ぜながら次々と打ち鳴らされる楽曲たち。そこには、ある一貫したテーマがあったように思う。

特に後半、「キミの夢が叶うのは 誰かのおかげじゃないぜ 風の強い日を選んで 走ってきた」と会場中がシンガロングした「Funny Bunny」以降の流れは、本当に圧倒的だった。「ストレンジ カメレオン」「ハイブリッド レインボウ」という2大名曲はもちろん、「何度も何度も胸をこがして 生まれたばかりのような 夢をまた見る」と切実に歌い上げる「GOOD DREAMS」、「もう少しだけ あともう少しだけ 少しでも先に進もうか」と囁きかける“バンドソング”「クオーター 莫逆の友」、そして「聴こえてくるのはキミの声 それ以外はいらなくなってた」とファンに歌いかけるような「この世の果てまで」。

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冒頭の「スケアクロウ」ではないけれど、この日披露された楽曲の多くは、“夢”や“旅”、あるいは“道”といったものがテーマとなっていた。本編最後のMCで、山中は言った。「この25年、遠回りしたように見えるかもしれない。でも、遠回りしたんじゃない。俺たちは、近道をしなかっただけだ」と。

果たしてこの日、祝福されたのは誰なのか。祝祭的な華々しさ以上に、この日この場所に居合わせた人、それぞれの心の奥底で、とめどなく溢れ出すセンチメント。「DON’T FORGET TODAY!」──今日という日を忘れるな。そこで感じた“想い”こそが、道なき道を進む原動力となるのだ。それこそが、26年目に突入したthe pillowsが、自分たちの音楽を愛してくれたファンへと贈る、何よりのメッセージだったのかもしれない。

SETLIST
M1. スケアクロウ
M2. Midnight Down
M3. I think I can
M4. HAPPY BIVOUAC
M5. アナザーモーニング
M6. バビロン 天使の詩
M7. I know you
M8. サリバンになりたい
M9. RUSH
M10. 日々のうた
M11. 確かめに行こう
M12. About A Rock’n’Roll Band
M13. ターミナル・ヘヴンズ・ロック
M14. ぼくは かけら
M15. Funny Bunny
M16. GOOD DREAMS
M17. クオーター 莫逆の友
M18. ストレンジ カメレオン
M19. TRIP DANCER
M20. Please Mr.Lostman
M21. この世の果てまで
M22. ハイブリッド レインボウ
M23. No Substance
ENCORE
EN01. ハッピー・バースデー
EN02. LITTLE BUSTERS
ENCORE-2
EN03. Ready Steady Go!
ENCORE-3
EN04. Advice

MORE RELEASE INFORMATION

SINGLE 2014.9.17 release
「About A Rock’n’Roll Band」
avex trax

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DVD&Blu-ray 2014.9.17 release
「the pillows 25th Anniversary NEVER ENDING STORY
“Do You Remember The 2nd Movement?”」

avex trax

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LIVE INFORMATION

the pillows“moondust tour”
11月30日(日)水戸 LIGHT HOUSE
12月3日(水)名古屋 CLUB QUATTRO
12月5日(金)大阪 BIG CAT
12月7日(日)長野 CLUB JUNK BOX
12月12日(金)赤坂 BLITZ
1月24日(土)高崎 club FLEEZ
1月31日(土)宇都宮 HEAVEN’S ROCK VJ-2
2月3日(火)岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
2月5日(木)松江 canova
2月7日(土)広島 CLUB QUATTRO
2月9日(月)宮崎 SR BOX
2月11日(水)沖縄 Sakurazaka Central
2月13日(金)福岡 DRUM LOGOS
2月15日(日)松山 SALON KITTY
2月17日(火)高松 DIME
2月19日(木)浜松 窓枠
2月22日(日)渋谷 TSUTAYA O-EAST
3月1日(日)仙台 Rensa
3月3日(火)宮古 KLUB COUNTER ACTION
3月5日(木)青森 Quarter
3月7日(土)札幌 PENNY LANE
3月8日(日)札幌 PENNY LANE
3月13日(金)新潟 LOTS
3月15日(日)金沢 EIGHT HALL
3月20日(金)大阪なんばHatch
3月22日(日)名古屋 Zepp Nagoya
3月28日(土)東京 Zepp Tokyo

PROFILE

山中さわお(vo、g)、真鍋吉明(g)、佐藤シンイチロウ(ds)。1989年に結成、1991年にシングル「雨にうたえば」でメジャー・デビュー。1992年にベーシストの上田健司(ケンジ)が脱退。結成20周年記念日の2009年9月16日に初の日本武道館公演を実現。2012年1月にアルバム『トライアル』をリリースし、 “TRIAL TOUR”を敢行後、7月に一時活動休止を発表しつつ、それぞれソロ活動を行う。2013年夏に活動を再開し、シングル「ハッピー・バースデー」をリリース。今年結成25周年を迎え、1月に初代ベーシストの上田健司を迎えたスペシャル・ライブ<the pillows 25th Anniversary NEVER ENDING STORY “Do You Remember The 1st Movement?”>を新宿LOFTで、3〜4月には東名阪で第2期のナンバーを披露するツアー<the pillows 25th Anniversary NEVER ENDING STORY “Do You Remember The 2nd Movement?”>を開催。また、2月にトリビュート・アルバム『ROCK AND SYMPATHY -tribute to the pillows-』を発表後、6月より対バン・ツアー<the pillows 25th Anniversary NEVER ENDING STORY “ROCK AND SYMPATHY TOUR”>を敢行した。

関連リンク

・ the pillows Official Website
・ YouTube
・ Twitter
・ facebook

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