The Mirraz – “全部シングル曲のクオリティにしたい”というところから制作をスタートさせた新作『OPPORTUNITY』について畠山が語る。

The Mirraz

The Mirrazがメジャー2ndアルバム『OPPORTUNITY』を完成させた。“海外のシーンとリアルタイムでリンクしたバンド・サウンド”という従来のスタイルに、ポップ感に溢れたメロディと前向きな視点に貫かれたリリックをプラス。「すべてシングル・クオリティの楽曲を揃える」(畠山承平/vo、g)というテーマを掲げて制作された本作は、The Mirrazのポジションをさらに引き上げることになりそうだ。今回もフロントマンである畠山にインタビュー。バンドのターニングポイントとも言える本作の制作過程、そして、彼自身の意識の変化について語ってもらった。

INTERVIEW & TEXT BY 森 朋之


一つひとつの曲のクオリティを保とうとした

──ニュー・アルバム『OPPORTUNITY』はThe Mirrazにとっても大きな意味を持つ作品だと思います。楽曲のクオリティも確実に上がっているし、何よりも前向きな気分を感じさせる歌詞が素晴らしいな、と。

今回のアルバムを作るにあたっては、まず、“全部シングル曲のクオリティにしたい”というところからスタートしたんですよ。今までは歌詞にしても曲にしても、ひとつのネタで押し通すというか、勢いで最後まで完成させることが多かったんです。でも今回は勢いで作ったものをそのまま出すんじゃなくて、客観的に聴き直してから、もう1回作り直すという作業をしたというか。そうすることで、一つひとつの曲のクオリティを保とうとしたんですよね。

──歌詞に関しても同じような作業があったんですか?

そうですね。ミイラズに対して、攻撃的な歌詞だったり、社会風刺みたいなことを歌ってるというイメージを持っている人も多いと思うんですよ。自分的にはそれはひとつの面でしかないと思っているんですけど、メジャーに来た当初も、レコード会社のほうから攻撃的な歌詞やサウンドを求められたんです。自分たちとしては、インディーズで4枚アルバムを作ってきて、やりたいことも結構変わってきてるし、成長もしてきたわけで、今さら「1stアルバムみたいなことをやってほしい」と言われても全然ピンと来なかったんだけど。ただ、“ミイラズは知ってるけど、聴いたことない”という人がそういう(攻撃的な楽曲の)イメージを持っていることについては、“確かにそうだな”と思ったので、メジャー1stアルバム(『選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ』)のときは、攻撃的な楽曲を狙って作るということに取り組んだんですね。でも、それが結構キツかったんですよ、今振り返ってみると。

──というと?

このバンドを始めた最初の頃は、たまたま自分の目の前に不満なことがあって、無責任に思ったことを書いてただけなんですよ。ギャグのつもりというか、歌詞が全然思い付かなかったから、“こんな感じでいいでしょ”っていうところもあったし。でも、最近はちょっとずつ売れてきて、例えばフェスに出ると1万人くらいの人が集まってくれるわけじゃないですか。責任のある立場になってきてるし、無責任なことは言いたくないというのもあるんですよね。もちろんエンターテインメントな無責任さも楽しいんだけど、それだけではなくて、聴いてくれる人に対して何かを残したいという気持ちも当然あって。

──真っ当な考えだと思います。無理に攻撃的なことをやり続けるのも、ちょっと違うだろうし。

そうなんですよね。意識的に攻撃的な歌を作ろうとすると、その対象を見つけなくちゃいけないんですよ。心のなかの汚い部分、人間の暗い部分をあえて見るっていうのは、かなりきついんですよね、精神的に。そんなもの、全然見たくないし。で、そういう作業に疲れたというか、“なんでこんなことやってるんだろう?”と思うようになって。例えば正義と悪にしても、そんなもの立場によって変わるじゃないですか。そのことをわかっちゃってるから、“これは完全に攻撃していい”というものを見つけるのもすごく大変で。

──めちゃくちゃきついですね、それは。

しかも、曲を作っても「この歌詞だと問題になるかもしれないから、変えてほしい」ってサラッと言われたりして(笑)。自分としては、攻撃的な歌を作れって言われたのに“歌詞を変えて”っていうのは意味がわからないわけですよ。そういうやりとりが多かったんですよね、メジャーに来てからは。だから今回は、そういうことを一切しないで歌詞を書きたいと思って。なんて言うか、聴いてくれる人たちがもうちょっと希望を持てるような歌がいいな、と。もちろん世の中クソだなって思うことはいっぱいあるんだけど、そこを見ながら歌詞を書くのではなくて、“そんな世の中にも、マシなものがあるよね”というところで曲を作りたかったんです。そこから「この惑星(ほし)のすべて」みたいな曲も出来たんですけどね。

“ミイラズは孤立してる”って感じるんです

──いわゆる前向きな歌は溢れていますが、個人的にはほとんど共感できないんですよね。でも、このアルバムで歌われていることは本当に納得できました。それはきっと、今、畠山さんが言ったように“こんなにひどい世の中にも、マシなものがある”という視点によるものだと思うんですが。

僕自身もそうで、世の中のポジティブ・ソングには、受け入れ難いものがたくさんあるんですよ。自分で作るんだったら、自分なりの希望の持ち方を示さなくちゃいけないと思ったし……。これは昔から思ってることなんですけど、“ネガティブだと感じることは正しい”と思えれば、それはポジティブなんですよね。そういう自分をOKだと思えるような状況に持っていけばいい、というか。「なんでそんなに悪いほうに考えるの?」とかって言われることもあるけど、それで人生の危機を乗り越えられるんだったら、それは絶対にポジティブじゃないですか。

──たしかに。

俺らはバンドをやっているわけだし、お客さんのなかには自分と同じような考えだったり、自分と似た価値観を持っている人も結構いると思うんですよ。そういう人たちが“自分は正しいんだ”と思えるような作品を作ることも大事なんじゃないかな、と。よく“不思議だな”と思うんですけど、ミイラズのライブって、お客さんが同じ動きをすることがあんまりないんですよね。ほかのバンドのライブを観ていると“同じように動いて、一緒に盛り上がることに喜びを感じてるんだろうな”と思うことも多いんだけど、ミイラズのライブは一人ひとりが自由に楽しんでいて、決められた動きはしないっていう。それを見てると、なんにしても枠に捉われるのが好きじゃない人が集まってるんだろうなと感じることもあって。そういうこともポジティブに考えられるようなことも歌いたかったんですよね、このアルバムでは。もちろん、必ず明るい未来が待ってるなんて全然思ってないですよ? でも、そのなかで自分がポジティブだなと思えるものを見つけていくことは大事だと思うので。

──“OPPORTUNITY”(機会、好機)というタイトルにも、そういう思いを込めているんですよね?

そうですね。1曲目の「オポチュニティレポート」は火星の無人探査機の名前なんですよ。最初は“響きがかわいいな”って思っただけなんですけど(笑)、(“オポチュニティ”の)意味を調べてみたら“チャンス”みたいなニュアンスもあって。メジャー2枚目のアルバムっていうのは、ヒットを出すチャンスでもあるし、ピッタリだなと思ったんですよね。あと、何もない火星で“ここに水があったかもしれない”って探している状況が、ミイラズに似てるなと思って。これは最近よく考えてることなんですけど、対バンしたり、フェスに出たりすると“ミイラズは孤立してる”って感じるんですよ。自分たちと同じようなものを持っているバンドは見たことがないですからね、日本では。

──“もう二度と見逃さないでいたいんだ 流れ星 見つけるみたいにさ”というフレーズも印象的でした。自分にとってポジティブなこと、“いいな”と思えることを見逃さないように意識することも必要だというか。“もしかしたら、見逃してたかも”って思うことも多いし。

うん、そうですね。今の自分に満足できてないときは、“あのとき、失敗してたのかも”って思うこともあるので。それが本当に間違っていたかどうかは、さらに次に行ってみたいとわからないんですけどね(笑)。過去に違うことをやっていたとしても、現在が良くなってるかどうかもわからないし。でも、意識的に何かをやるのは大事だと思います。人間って、肉体を動かすことでスッキリするじゃないですか。

──ライブとかスポーツとか。

そうそう。そうやって自分をごまかすことって、結構簡単なんですよね。酒飲んで寝ちゃうのも同じですよね。でも、何も解決してないっていう。

自分のことよりも、聴いてくれる人のことを考えながら作ってた

──「レイトショーデートしよう」には、そのことがさらに具体的に描かれてますよね。レイトショーの映画を観に行くというシチュエーションのなかで、どうすればもっと楽しめるのか? と問いかけているというか。

メンバーも僕も「レイトショーデート〜」はすごく気に入っていて。音楽的にも歌詞の面でもいちばん良く出来たというか、満足度が高い曲ですね。最初は推し曲にしたいと思ってたんだけど、今のシーンのことを考えると「オポチュニティレポート」や「プロタゴニストの一日は」みたいな速い曲を最初に持ってきたほうがいいな、と。“楽しそうだな”と思って聴いているうちに「レイトショーデートしよう」みたいな曲に辿り着いてくれたらいいなという作り方ですね。レイトショーって、絶妙な立ち位置の行為だと思うんですよ。映画好きだったらわりと普通なんだろうけど、マニアック過ぎることもなく、ムチャなことでもないっていう。そういう楽しさを書いてみたかったんですよね。

──ミイラズが“子供のままじゃ楽しめないぜ”って歌うのもいいですよね。「スピンオフ」の“主人公に選ばれなかった主人公が 歌を歌ってるんだ”というラインにもグッと来ました。

「スピンオフ」は「プロタゴニストの一日は」のアンサーソングでもあるんですよね。どっちも“主人公になれなかった主人公”のことを書いてるというか、自分でもテーマが似てるなと思ったので(笑)。“歌を歌ってんだ”というのはもちろん自分自身のことでもあるんですけど、今回のアルバムは自分のことよりも、聴いてくれる人のことを考えながら作ってたので。この曲では“歌を歌う”という行為を提示してますけど、その人の仕事だったり、やりたいことに置き換えてもらえればいいかな、と。

──なるほど。サウンドメイク、アレンジについても聞きたいのですが、シングル・クオリティを求めるということは、より幅広いリスナーが楽しめる楽曲にするということでもあって。海外のシーンとリンクしながらサウンドを構築してきたミイラズとしては、聴きやすさとのバランスの取り方がかなり難しかったんじゃないかと思うんですが。

うん、まさにそのとおりで。なんでシングル・クオリティを求めようと思ったかというと、去年出たヴァンパイア・ウィークエンドの新作(『モダン・ヴァンパイアズ・オブ・ザ・シティ』/’13年)を聴いたからなんですよ。インタビューでメンバーが「全曲シングルにするつもりで作った」みたいなことを言ってたんですけど、ホントに作りがしっかりしていて、聴きやすかったんですよね。あのアルバムはバンドの立ち位置を上げるきっかけになったし、自分たちもそういうことをやる必要があるな、と。その頃はThe 1975とかFIDLARなんかも聴いてたし、やりたいことはいろいろあって……。あとね、「グランド・セフト・オート5」っていうゲームの影響もあるんですよ。ゲームのなかで車に乗ると、ラジオから実際に存在する曲が流れるんですけど、それがすごく良くて。BPMが90とか100くらいのエレクトロが多くて、“これをバンドでやったらカッコいいだろうな”って思ったんですよね。ちょうどその頃、ライみたいなR&Bも聴いていて、テンポが遅めでメロディックな曲を作ったんですよね。それが「世界一キレイなもの」や「レイトショーデートしよう」なんですけど。

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──なるほど。

制作の途中でツアーがあったのも大きかったですね。ライブをやると“やっぱりお客さんはノリを求めてるんだな”ということがわかるというか、盛り上がることも大事だよなって思って。で、ツアーが終わってから、盛り上がる曲をいくつか作って——「i luv 日常」はツアーのファイナルが終わった日に思い付いて書いたんですよ——バランスを取ったという感じですね。最初にも言いましたけど、かなり作り直した曲もあるし。今までは“Aメロ、サビ、Aメロ、サビ”で終わりっていう曲が多かったんですよ。洋楽って、そんな感じなんで。でも今回のアルバムの曲にはBメロ、Cメロを加えたものも多いし、ライブで盛り上げるためにアレンジを変えた曲もあって。途中で“やりすぎかな”と思ったこともあったんですけど、出来上がったものを聴いてみると“これくらいでちょうどいいんだな”という感じがしたんですよね、自分としては。今までのアルバムはちょっと雑だったのかなとも思ったし。

──雑とは思わないですけど、性急で荒々しい手触りもミイラズの魅力ですからね。今回はポップスとしても成立しているというか。初めてミイラズを聴くという人も入りやすいと思います。

今の時代の音楽のエンターテインメントしては、これくらいしっかりしたものを作らないとダメなんでしょうね。そうじゃないと、CDを買うという行為までは至らないというか。まあ、「SUSHI A GO! GO! GO!」(1分半のガレージ系ロックンロール)みたいな曲もありますけどね(笑)。

──11月からはアルバムのツアーが始まります。『OPPORTUNITY』の楽曲がセットリストに加わると、ライブの雰囲気もかなり変わってくるんじゃないですか?

結構長い曲が多いから、そこはメンバーとも話し合ってるんですけどね。でも、アルバムの曲は全部やりたいと思ってます。

DISC INFORMATION

「OPPORTUNITY」
ALBUM 2014.10.15 release
Virgin Music

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初回限定盤 <CD+DVD>
通常盤 <CD>

<収録曲>
01. オポチュニティレポート
02. プロタゴニストの一日は
03. i luv 日常
04. 世界一キレイなもの
05. SUSHI A GO! GO! GO!
06. スピンオフ
07. この惑星(ほし)のすべて
08. 最高の人生
09. アスファルテームの味がする
10. レイトショーデートしよう
11. バックパッカー
12. O!M!!G!!!

PROFILE

ザ・ミイラズ/畠山承平(vo、g)、佐藤真彦(g)、中島ケイゾー(b)、新谷元輝(ds)の4人組ロック・バンド。2006年9月に畠山を中心に結成。2008年12月に1stアルバム『OUI! OUI! OUI!』を、2009年10月には2ndアルバム『NECESSARY EVIL』をリリース。2011年にメンバーチェンジを行い中島と佐藤が正式加入。同年6月に1stシングル「観覧車に乗る君が夜景に照らされてるうちは」、9月に2ndシングル「ラストナンバー」をリリースし、2012年1月にはアルバム『言いたいことはなくなった』を発表。7月にはEMI Music Japanへのメジャー移籍を発表し、同年10月にメジャー1st シングル「僕らは/気持ち悪りぃ」を発表。2013年10月31日にはドラムの新谷元輝が正式に加入し、現在のメンバーに至る。

LIVE

<ツアー>
The Mirraz 2014-15A/Wツアー~オポオポオポオポオポオポオポオポオポチュニティィィィィィィィィィィ!!!!~
2014年11月11日(火)千葉LOOK
2014年11月13日(木)神戸VARIT.
2014年11月14日(金)高知X-pt
2014年11月16日(日)徳島CLUB GLINDHOUSE
2014年11月20日(木)横浜LIZARD
2014年11月28日(金)仙台darwin
2014年11月29日(土)青森QUARTER
2014年12月4日(木)埼玉HEAVEN’S ROCK SHINTOSHIN
2014年12月12日(金)札幌Sound lab mole
2014年12月20日(土)新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
2014年12月21日(日)水戸 ライトハウス
2014年12月23日(火・祝)京都 磔磔
2015年年1月22日(木)岡山CRAZYMAMA KINGDOM
2015年1月24日(土)福岡DRUM Be-1
2015年1月25日(日)熊本DRUM Be-9 V2
2015年1月27日(火)静岡UMBER
2015年2月6日(金)郡山 #9
2015年2月8日(日)山形 昭和セッション
2015年2月11日(水)金沢Van Van V4
2015年2月13日(金)長野LIVEHOUSE J

The Mirraz Helloween Party with CHOKICHOKI
『ハローウィンウィン物語3~教師のビンビン俺のにウィンウィン2014~』

2014年10月31日(金)TSUTAYA O-EAST

rockin’on presents COUNTDOWN JAPAN 14/15
2014年12月28日(日)・29日(月)・30日(火)・31日(水)幕張メッセ国際展示場1〜11ホール、イベントホール
※The Mirrazの出演は12月31日(水)のみ

関連リンク

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