THE NOVEMBERS ALBUM「Rhapsody in beauty」ディスクレビュー

Rhapsody in beauty

ALBUM

THE NOVEMBERS

Rhapsody in beauty

MERZ

2014.10.15 release

<CD>


感性を麻痺させる相対化の真逆からの“問い”

 正しい意味も知らずに”ラプソディ”という単語に何か優美さやエレジックなイメージを抱き続けてきた(ジョージ・ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」しかり)が、実は”高揚した感情の表現”や”熱狂的発言”といった意味を持つことをこのアルバムタイトルを知る機会に改めて確認した。小林祐介はこのアルバムに対するコメントの一部で「いつのまにか排除され、削られ、疎まれてきた物事
としての”ノイズ”と”美しさ”の間にはいくつかの物語があります」と記しているが、受け手としては、物語は”差異”や”誤解”と読み替え可能だ。これは憶測だけれど、小林はタイトルにももうひとつの物語を仕込んだのではないかと私は踏んでいる。

 オープニングからいきなりすさまじいフィードバック・ノイズと残響が暴風のように吹き荒れ、歌はその壁の向こうに微かに確認できる程度。だが、轟音の強度が増すほど静寂を感じるという得難い体験もできる。2曲目はメタルやミクスチャーを想起させるギターリフという珍しいフックがあるが、ここでもまだ歌は壁の向こうだ。3曲目にしてようやく歌というか言葉が掴めると、神経症的
なギター・フレーズにさえ安堵を覚える。まるで暗闇の中でようやくラジオのヘルツを受信したように。主に序盤には物理的にノイジーな楽曲が配され、5曲目にようやく幻惑的だが牧歌的な「tu m’」のニュー・バージョンが登場が聴こえてくる。でもすでにもう何がノイズで何が美しいのか、この時点でリスナーは言語化できないだろう。そうしてこの作品は相対化された”ノイズ”と”美しさ”をリスナーであるあなた自身の感性で一旦破壊し再定義させる。それもごく自然に。

 そうした構造の面白さと同時に今作はこれまでになく、外部からの影響や刺激を素直に表明しているところがある。ケヴィン・シールズの轟音の哲学や、ボリスが持つロックの危うさ、BLANKEY JET CITYの架空の街で鳴っているようなロックンロールのロマン、そして顕著なのがスイートなソウルネスさえ感じるメロディと時空がねじ曲がったサイケデリアと乾いたグルーヴを持つ「Romancé」。連想されたのは坂本慎太郎やOGRE YOU ASSHOLEの近作だ。加えてアルバム・タイトル曲には小林が愛してやまないL’Arc~en~Cielの高揚と品性が同居するメロディへの羨望も伺える。その素直さはすでに彼らが狭義のバンド・シーンや自らのイメージという仮想敵を過去のものにした証左だと思う。それでいて音像はおよそロックでもオルタナティブでも過去に例のないバランスで鳴らされている。まさにテーマにあるように”ノイズ”と”美しさ”の間に私たちは何を聴き取り、心地良いと感じるのか? これ以上ない具体、それがこの『Rhapsody in beauty』である。

(石角友香)

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