syrup16g – 突然の解散から6年。再始動したsyrup16g東名阪ツアーのうち、9月22日に行われた東京公演を、編集部員&ライター・三宅正一氏それぞれの目線でレポートする【ライブレポート】

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 突然の解散から6年経った今年6月、syrup16gは再始動とニュー・アルバムのリリースとツアーを行うことを発表した。その発表どおりアルバム『Hurt』が私たちのもとに届いた。そして9月19日名古屋、9月22日東京、9月25日大阪でsyrup16gは多くの人の前に帰ってきたのだ。
今回、東名阪ツアーのうち9月22日東京 国際フォーラム・ホールAでのライブを観ることができたWHAT’s IN? WEB編集部員、そしてライター・三宅正一氏、それぞれが目撃したsyrup16gの“再発”をレポートする。

TEXT BY 熊谷 綾、三宅正一/ PHOTOGRAPHY BY 古溪一道

 

バンド解散から6年の時を経て、今年6月27日にsyrup16gは再始動&ニュー・アルバムのリリースを発表。それからちょうど2ヵ月後の8月27日、予告されていたとおり全11曲すべて新曲を収録したアルバム『Hurt』が私たちの手元に届いた。9月19日名古屋、9月22日東京、9月25日大阪でアルバムのリリース・ツアーが開催されたが、五十嵐 隆、キタダマキ、中畑大樹の3人が同じステージに立つのは2013年に突如行われた五十嵐のソロ・ライブ“生還”以来(その時は、いつ、どこで、何時から……という最小限の情報しか発表されていなかったため、当日のサポート・メンバーがキタダと中畑だったという実に感動的な出来事は多くの人を驚かせた。ちなみに五十嵐は昨年 “UKFC on the Road 2013”にソロ弾き語りで出演。アコースティック・ギターを抱えた五十嵐が椅子に座り淡々と、全6曲すべてsyrup16gのアルバム『COPY』からの楽曲を演奏し「ありがとう」以外五十嵐はほぼしゃべらなかった)。——とにかくsyrup16gは復活したのだ。今回、東名阪ツアーのうち9月22日東京 国際フォーラム・ホールAを観ることができた。 

TEXT BY 熊谷 綾

たしかに目の前のステージに3人がいる

19時を少し過ぎた頃、客電が消え客席からは大きな歓声と拍手が沸き起こると、3人がゆっくりとステージに現れた。1曲目に鳴らされたのは「Share the light」。五十嵐 隆の徐々に激しいうねりをあげていくギター、キタダマキの太く芯のあるベース、力強くリズムを刻み続ける中畑大樹のドラム──君の涙を切り取って海に沈めたなら──五十嵐の第一声が聴こえた瞬間、誰もが“この瞬間を待ってた!”、そう思ったに違いない。ステージサイドからの光で3人の姿がはっきりとは見えなかったが、たしかに目の前のステージに3人がいるんだという事実に胸が熱くなる。2曲目は1stアルバム『coup d’Etat』に収録されている「神のカルマ」。五十嵐の「オイ!」というたった2文字の叫びにとてつもなく興奮し、感動した。続いて“行き詰まった状態で 立て籠ってる 崇高な希望”という究極のフレーズが突き刺さる「Stop brain」、一瞬でも人と繋がっていたいという人間の本音を歌った「ゆびきりをしたのは」を披露。ここで五十嵐がようやく「ようこそ。めちゃくちゃ緊張してますけど、なんとか最後までやりきれるように頑張ります」と言葉を発した。その、はっきりとして少しテンション高めな五十嵐の声を聞くと、彼らも今日という日をどれだけ待ち望んでいたのかが伝わってくる。その後は過去作「君待ち」「生活」や最新アルバム収録の「生きているよりマシさ」「哀しきShoegaze」など新旧の楽曲を織り交ぜながら披露。ステージの作りは、スクリーンに映像を映し出しながら披露した楽曲もあったが、ほとんどは3人の演奏のみで構成された極めてシンプルなもので、彼らの姿がスクリーンに映し出されることは一度もなかった。

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「ハピネス」「理想的なスピードで」などではギターからアコギに持ち変えた五十嵐が椅子に腰かけ演奏をする場面も。そこから、レーザーが会場全体に放たれたラスト・ナンバー「リアル」まで、3人はとにかく、実にていねいに──曲間で客席から沸き起こる拍手を受けながら──1曲1曲演奏していった。「ありがとう」五十嵐はそう言い、3人はステージをあとに。会場からは大きな拍手が鳴り止まなかった。誰もが、“もう1曲、もう1曲、syrup16gの曲を聴きたい”、そう思っていたに違いない。

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“君とまた会えるのを待ってる”

大きな拍手を受け、ツアーTシャツ(胸元に五十嵐の直筆で「再発」と書かれたバージョン)に着替えた3人が再びステージへ。1回目のアンコールのラストでは「あんまり好きじゃない曲をやります」というMCのあと「旅立ちの歌」を演奏。“君とまた会えるのを待ってる”という、ストレートかつここまで希望を孕んだ“未来”が見える歌詞を書いた五十嵐はきっと、“待ってる”と歌うのが恥ずかしかったからああいうMCをしたんだと解釈した。でも……この一小節、この日のライブのためなんじゃないかと思うくらいシンプルだがとても胸の奥深くに響く歌詞だ。5000人の観客ともっと言えばレーベル・スタッフや関係者全員が、syrup16gにいつかまた会えるのを待っていたし、それはようやくファンの前に立つことができたステージの3人も同じだったはずだから。

客席のアンコールに答えまたも3人がステージに。「41歳ですけどはしゃいでいいですか?」という五十嵐のMCのあと始まったのはなんと、2003年に、彼らにとって初めてのシングルとしてリリースされた「パープルムカデ」。息がぴったりというよりは、終始、“この3人だからこそ鳴らせるんだ”という幸福な音が響き渡っていた。そしてラスト・ナンバーとして彼らが選んだのはアルバム『coup d’Etat』より「空をなくす」だった。演奏を終えステージをあとにする3人──キタダの肩に腕をまわしステージを去る五十嵐、その後ろを歩く中畑──つくづく、バンドっていいな、と思った。

“もしかするとこのライブが最後なのかも”とか“今日本当にライブはあるのだろうか”とかいろんな不安めいた気持を抱えながら会場に向かったのは正直なところだ。だが、ライブを、そして3人がステージから去るあの姿を見て、これはsyrup16gの復活の幕開けにすぎないんだと確信した。“アルバムをリリースしてツアーをやる”という自然の流れに則ってsyrup16gが2014年を生きていることがうれしくてたまらない。そしてその事実が多くの音楽ファンにとってどれだけ意味のあることか。何年かかっても構わない、また、新しい作品を聴かせてほしい。そしてまた今日のような素晴らしいライブを観れることを心から楽しみにしている。

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syrup16gにとって再始動後初のツアーにしてニュー・アルバム『Hurt』のリリース・ツアーでもある“再発”は、名古屋、東京、大阪で開催された。その中日、最大キャパの東京国際フォーラム公演を目撃した筆者が感じたことは──。 

TEXT BY 三宅正一

syrup16gの音と旋律と言葉が響いた

まるで長い空白などなかったかのように、ただただ楽曲ごとに忘れがたい余韻が発生し、折り重なり、漆黒の色をした強大な塊となっていくsyrup16gの音と旋律と言葉が響いた。それゆえに終始、深淵な緊張感は漂ってはいたが、それはこのバンドにずっと付随しているものだし、いまさら特筆すべきものではない。客席から上がった「お帰り!」という声を受けて不器用な口ぶりで挨拶をする五十嵐の姿に僕が見たのは、むしろ一刻も早くこの“再始動、おめでとう”ムードを取っ払った空間でライブがしたいという思いでもあった。そういう意味では、東名阪を回った今回のツアー“再発”で群を抜いてキャパシティが大きかった(5000人動員)この東京国際フォーラム・ホールAという会場にバンドが戸惑っていた部分もあったのではないかと邪推している。序盤に見られた演奏の固さは、再始動後初のツアーだからというよりも、会場の規模が影響しているのではないかと。だからといって、この夜のライブの内容が低調だったかというと、まったくそんなことはない。

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大丈夫、syrup16gはこれからも続いていく、そう思えるライブだった

そんなことはないのだが──個人的には、ということを強調しておくが──とても不思議な感覚を覚えるライブだった。それはなぜかというと、この夜のライブに“恒常的な”印象しか受けなかったからだ。終演後の会場で複数の知人と言葉を交わしたが、感想がまちまちだったのも興味深かった。“素晴らしかった!”と興奮気味に大絶賛する人もいれば、“う~ん”と首を傾げる人もいた。“まだうまく噛み砕けていない”という人も。その一方で、僕はどの意見にも理解を示すことができた。それほどニュートラルなライブだと思ったし、それがうれしくもあった。大丈夫、syrup16gはこれからも続いていく、そう思えるライブだった。この感覚はなんだろう? と考えたときに、ああ、そうだと心中で膝を打った。ニュー・アルバム『Hurt』を聴いたときの印象に酷似している。本媒体の『Hurt』のレビュー枠で、僕は“これを最高傑作とは言わないまでも3本の指には入るほど好きな作品だというファンも少なくないだろうし、これから初めて音楽世界に触れる人は本作を入門編として聴いてもいいと思う。そういうアルバムだからこそまた、この続きを期待できる”と書いたのだが、この夜のライブを観て覚えた感覚も、まさにそういうものだった。そして、バカみたいに、このツアーは復活のそれであると同時に、『Hurt』のレコ発でもあるということにあらためて気づいた。

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『Hurt』の楽曲群は遜色ない存在感を放っていた

『Hurt』の収録曲以外には、「神のカルマ」「君待ち」「生活」「ex.人間」「ニセモノ」「ハピネス」「落堕」「リアル」「希望」「パープルムカデ」「空をなくす」がセットリストに組み込まれた。この夜、会場を埋め尽くしたオーディエンスの心底に永遠に取り除けない愛おしい刺のごとく刺さっている数々の名曲群に囲まれても『Hurt』の楽曲群は遜色ない存在感を放っていた。そこにこそ最たる意味のあるライブだったと思う。照れ隠し半分、本音半分といった感じで「あんまり好きじゃない曲をやります」と、五十嵐が言ったあとに鳴らされた1回目のアンコールラストの「旅立ちの歌」。しかし、やはりこの曲に今のsyrup16gが凝縮されていると僕は思う。これからも続いていくsyrup16gが。だから、どんどんライブをやってほしい。新しいリスナーと出会ってほしい。心からそう思っている。

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SETLIST

01. Share the light
02. 神のカルマ
03. Stop brain
04. ゆびきりをしたのは
05. 君待ち
06. 生活
07. 哀しき Shoegaze
08. 生きているよりマシさ
09. ex.人間
10. ニセモノ
11. ハピネス
12. 理想的なスピードで
13. 宇宙遊泳
14. 落堕
15. リアル

ENCORE 1
16. イカれた HOLIDAYS
17. 希望
18. 旅立ちの歌

ENCORE 2
19. パープルムカデ
20. 空をなくす

PROFILE

シロップジュウロクグラム/五十嵐隆(vo、g)、中畑大樹(ds)、キタダマキ(b)。1993年に五十嵐を中心に結成。1996年に前ボーカリストが脱退したのを機にバンド名を“Syrup16g”に改名。2001年に1stアルバム『COPY』をリリース。2002年にベーシストにキタダマキにが加入し現在の3ピースに。同年にはアルバム『coup d’Etat』でメジャー・デビューを果たしている。2004年には日比谷野外大音楽堂にてワンマン・ライブを大成功させるも2007年12月に解散を発表。翌年1月にラスト・アルバム『Syrup16g』をリリースし、同年3月に行われた日本武道館公演をもって解散、その後は個々でそれぞれ活動を続ける。2013年、突如開催された五十嵐ソロでのNHKホール・ワンマン“生還”では、サポート・メンバーとして中畑とキタダが参加。2014年6月27日にsyrup16gの再始動を発表し、8月27日に8作目となるオリジナル・アルバム『Hurt』をリリースしている。

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