The Mirraz ALBUM「OPPORTUNITY」ディスクレビュー

OPPORTUNITY

ALBUM

The Mirraz

OPPORTUNITY

Virgin Records

2014.10.15 release

初回限定盤 <CD+DVD>
通常盤 <CD>


主人公は誰だ?~What a Wonderful Opportunity

 本作のタイトルの由来となっている火星探査車の“オポチュニティ”が打ち上げられたのは2003年7月7日。未だ現役で、10年以上運用され続けているのに対し、ミイラズがメジャー・デビューを飾ったのは2012年10月3日なので、まだたったの2年ちょっとしか経っていない。それでも、この2年間でミイラズは数多くの困難に直面してきた。メジャーからの最初のフル・アルバム『選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ』のリリース後、インディーズ時代のベスト盤が非公式で発売され、それに対する恨みつらみも含んだミニ・アルバム『夏を好きになるための6の法則』のリリース後、今度は長らくドラマーを務めていた関口 塁がバンドを離れることとなった。また、この2年間で次世代バンドが次々と台頭して、なかにはミイラズと、その同期とも言うべきthe telephonesからの直接的な影響を感じさせるキュウソネコカミのような存在も現れた。本作には「プロタゴニストの一日は」や「スピンオフ」など、“自分はこの世界の主人公なのか?”と自問自答する曲がいくつか含まれているが、フル・アルバムのインターバルとしては過去最長となるこの1年8ヵ月は、まさに自らの立ち位置を模索し続けた期間だったと言っていいだろう。

 そんな時期を経て、ミイラズは本作で“ミイラズはやはりミイラズである”ということを力強く証明してみせた。そう、ミイラズというバンドは、現在進行形の海外のムーブメントや素晴らしいロック・バンドへの目配せを忘れることなく、それをいかに日本のシーンに適した形で、オリジナリティを失うことなく表現するかを命題とするバンドであり、本作はそれを今までにないやり方で、今まで以上のクオリティで、見事に形にしているのだ。特徴としてまず言えるのが、コンパクトなロックンロールのイメージも強い彼らの作品としては初めて、一曲の平均時間が4分半を超えているということ。これはつまり、本作では一曲一曲が相当作り込まれているということであり、前作がシングルの「僕らは」を軸にした作品だったのに対し、本作はバラエティ豊かでありつつも、いかにもなアルバム曲は一切なし。畠山は事前に“ヴァンパイア・ウィークエンドの最新作のような全曲シングル・クオリティの作品を目指す”と語っていたが、まさにそんな作品に仕上がったと言える。

 また、一曲の尺が伸びたというのは、単純にミドル・テンポの曲が増えたということでもあって、これは前述の次世代バンドの多くがBPMの速い曲を持ち味としていることに対し、違うアプローチを試みたとも言えるかもしれないが、それ以上に、現在海外ではインディ・ロックとR&Bが接近しているので、本作にもそのムードが反映されたと見るべきだろう。ループ感のあるギターと、タンバリンを交えた跳ねたリズムで聴かせる「レイトショーデートしよう」は、その最たる一曲と言える。また、畠山は『グランド・セフト・オートV』のサントラに入っていたエレクトロの影響も公言していて、おそらくは2 Many DJ’sの活動でも知られる、ソウルワックスあたりの影響が強いのではないかと思うのだが、本作中最もポップな「i luv 日常」あたりに、そのテイストを感じることができる。一方では、ミイラズらしいアッパーな曲ももちろん健在で、新メンバーの新谷元輝による手数の多いドラミングの貢献が非常に大きい。歪んだベースのリフを軸としながらも、リズム主体でバウンシーな「オポチュニティレポート」、お馴染みのミイラズ節ながら、ふたつのサビを畳み掛けるような攻撃的ナンバー「プロタゴニストの一日は」などは、抜群にかっこいい。

 また、ここではミイラズとくるりの親和性についても言及しておきたい。ファンの方ならご存知かとは思うが、畠山は常にくるりに対する愛情を公言していて、本作に関して、「『TEAM ROCK』のような外側に開かれた作品を意識した」とも語っているし、エンジニアもくるりの作品に関わっている宮崎洋一と高山 徹を起用している。くるりというバンドは最新作『THE PIER』でも示したとおり、異文化の音楽を独自のバランスで混ぜ合わせて、聴いたことのない音楽を生み出す能力に長けたバンドであるが、ミイラズもまたそのときどきでいろいろな音楽を混ぜ合わせる、編集的な曲作りを得意とするバンドであり、実は近い性質を持っているのだ(言ってみれば、アークティック・モンキーズもそういうバンド)。そして、本作の中で最もくるりを連想させるのが、モータウン風の軽快なリズムが印象的な「バックパッカー」という曲。本作の歌詞は男の子的なロマンティシズムに溢れていることが特徴で(これもとてもミイラズらしい)、宇宙やTVゲームといったモチーフもそうだし、「バックパッカー」で描かれる“旅”というモチーフも、やはり男の子的。そして、この“旅”の感覚というのは、くるりの作品がつねに内包している感覚なのである。

 しかし、「バックパッカー」でアルバムを締めくくらずに、近年のアークティック・モンキーズに近い、ややダークでヘビーな「O!M!!G!!!」がラストを飾っているというのが、なんともミイラズらしいところである。やはり、この1年8ヵ月というのは、クソッタレで、OH MY GODな期間だったのかもしれない。しかし、誰かがかつて「Wonderful Opportunity」という曲で歌ったように、やはり“トラブルは素晴らしいチャンス”なのだ。ミイラズは改めて自らの武器をじっくりと見つめ直し、何度目かの傑作を見事にものにした。

(金子厚武)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人