感傷ベクトル ALBUM「君の嘘とタイトルロール」ディスクレビュー

君の嘘とタイトルロール

ALBUM

感傷ベクトル

君の嘘とタイトルロール

ビクターエンタテインメント

2014.10.08 release

初回限定盤 <CD+DVD>
通常盤 <CD>


よりパーソナルな表現を掘り下げた2ndアルバム

 ボーカル、ギター、ピアノ、作詞、作曲、作画を担当する田口囁一と、ベースと脚本を担当する春川三咲によるユニットの2ndアルバム。音楽と漫画の二面性で世界観を作り上げる彼ららしく、曲ごとに丁寧な情景描写と、独白にも似た歌詞がこまやかに語られていく。サウンドの基本となっているピアノに寄り添うように感情の起伏を紡いでいくメロディ、緻密に組み上げられながらも翳りのあるアンサンブル、そして憂いを湛えた歌声が確実に心に刻印を残していく。湿り気を帯びた全体像はまさにバンド名が象徴する繊細な想いの彷徨であり、心象風景を綴る歌詞は結論を急ぐことなく、イメージの輪をどこまでも広げていく。

 冒頭を飾るのは、細かい場面展開に驚かされる「神様のコンパス」。カラフルで鮮やかな構成が聴き手のテンションを高める。「エンリルと13月の少年」はMVでも話題になった曲で、たたみかけるようなリズムで突き抜けていく疾走感と、それでもなおつきまとう焦燥感が込められたナンバー。対照的にフォーキーな「ひとりの週末」は力の抜け具合いがアクセントになっている、このアルバムの折り返し地点。まっすぐな叫びと祈りを込めた「光のあと」、ダンサブルなビートに乗せて怒りにも似た感情をぶつける「終点のダンス」がアルバム後半の勢いを加速させる。内省的な「その果て」のあと、締め括りはアルバム・タイトルと対になるタイトルの「僕の嘘とエンドロール」。アグレッシブなサウンドと、終わりのあとに始まりが待っている高揚感こそがこのアルバムのテーマなのを、改めて知ることになる。

 荒れ果てた光景を前にして、それでも光を求めようとする語り手がどの曲にも登場するように、不完全さともどかしさを明日への希望へと繋げる、喪失と再生のアルバムだ。

(岡本明)

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