アザヤイタ MINI ALBUM「人は愛を唄う」ディスクレビュー

人は愛を唄う

MINI ALBUM

アザヤイタ

人は愛を唄う

SPACE SHOWER MUSIC

2014.10.08 release

<CD>


人生が“鮮やく”瞬間を捉えたデビュー作。

 埼玉・川越市を中心に2013年から活動を続けている3ピース・バンド、アザヤイタの1stミニ・アルバム『人は愛を唄う』。1曲目の「azayaita」の“愛に満ちたこの世界のせいで 日々が鮮やいた”というフレーズがまず、強く心に残った。この曲のもっとも大事な部分には、“輝いた”でも“鮮やかになった”でもなく、“鮮やいた”という言葉こそがふさわしい——ソング・ライターの深井一史(vo、g)はおそらく、そんなふうに考えたのだろう。自分自身の日常と心情を注意深く見つめ、それにふさわしいフレーズを吟味し、エモーショナルなメロディとともに響かせる。自分のソング・ライティングに対して深いは、極めて誠実に向き合っているのだと思う。

 その姿勢はその他の楽曲にもしっかりと反映されている。肝心なことを言えないまま、悔し涙と作り笑いのなかですべてを失くしてしまった恋人たちを描いた「空が赤くなっていた」、“楽しかしたくないです、出来れば”という身も蓋もない本音をさらけ出す「散々前から知ってる」、ある朝、突然いなくなってしまった“君”に対する思いをどこまでもまっすぐに歌い上げる「朝のような人」。そこから伝わってくるのは、どうしようもない喪失感と痛み、そして、“それでも先に進んでいこう”という切実な意思だ。資料によるとアザヤイタは“3人とも別々に組んでいたバンドで活動に行き詰まり、居場所をなくしてた彼らが引き合うようにして”結成されたという。『人は愛を唄う』を聴いていると、ここに収められた楽曲は、彼ら自身のストーリーにも重なっているような気がしてくる。

 どこまでも強く感情を込めながらも、一つひとつのフレーズをていねいに伝えようとするボーカル、そして、深井の歌を際立たせつつ、強烈なダイナミズムを体現するバンド・サウンドもこのバンドの魅力。自らの人生と真摯に向き合うことから紡ぎ出されるアザヤイタの音楽はここから、多くのリスナーを強く惹きつけることになるだろう。それにしても“鮮やいた”っていい言葉だな。

(森 朋之)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人