tofubeats ALBUM「First Album」ディスクレビュー

First Album

ALBUM

tofubeats

First Album

unBORDE

2014.10.02 release

初回盤 <2CD>
通常盤 <CD>


世知辛い世の中で、ささやかな夢を見たい人たちへ

 今年7月に、日本のラッパーKOHH(コウ)が発表したアルバム『MONOCHROME』は、ドラッグが身近にある環境などを正直に告白しながらも、「I’m Dreamin’」という曲では多くの人に響く普遍的な逡巡を吐露したりと、現在の日本が抱える一側面と雰囲気を表象する内容だった。それゆえ、ヒップホップ好きだけにとどまらない波及力を秘めている。

 そうした『MONOCHROME』と、tofubeats(トーフビーツ)のメジャー1stアルバム『First Album』は相通ずると思う。ドラッグの話題はないが、“WiFiあったらどこでもいい”という一節が登場する「#eyezonu」は、インターネット世代と言われることも多いtofubeatsの背景がうかがえる歌詞だし、藤井 隆をボーカルに迎えた「ディスコの神様 feat.藤井隆」では、“不景気だとか世知辛いことばっかで息が詰まるのさ”という印象的なフレーズが耳に飛びこんでくる。いわば本作は、tofubeatsのパーソナルな視点を色濃く反映させたことで、日本の今が自然と浮かび上がった作品だと言える。

 9曲目「Populuxe」から4曲続くインスト・パートも面白い。キャッチーなポップ・ソングが多く収められた本作の中で、この4曲は現在の音楽シーンを賑わすサウンドに通じるからだ。ポリリズムが特徴的な「Populuxe」は、ロンドンのレーベルPC Music周辺などに多いバブルガム・ベースと呼ばれる音楽を想起させ、Amazonで購入した炭酸水の音をサンプリングしたという「content ID」の音色とグルーヴは、アメリカのレーベルFade to Mindの作品群を連想させる。そういった意味でインスト・パートは、現在のダンスフロアを賑わすアンダーグラウンド・ミュージックにリスナーを導くガイド的役割も孕んでいる。こうした側面とたくさんのポップ・ソングというアルバム構成に、電気グルーヴの『VITAMIN』をダブらせる人もいるだろうか。

 そんな本作に触れると、音楽を聴いているときくらいは、ここではないどこかへ想いを馳せようじゃないか! そう思えてくるから不思議だ。

(近藤真弥)

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