布袋寅泰 ALBUM「New Beginnings」ディスクレビュー

New Beginnings

ALBUM

布袋寅泰

New Beginnings

Virgin Music

2014.10.01 release

初回限定盤 <CD/豪華三方背BOX仕様>


『GUITARHYTHM』から25年、布袋寅泰のあらたな旅

 布袋寅泰による完全海外仕様のアルバム作品『New Beginnings』。15枚目のオリジナル・アルバムとなる本作は、“ギター・ミュージック”をキーワードに4人の敏腕プロデューサー、そしてボーカルにイギー・ポップや、ベースメント・ジャックス作品に参加したヴーラ・マリンガを迎えた衝撃作となっている。そう、本作で布袋は1曲も歌唱することなく、クリエイター兼ギタリストに徹しているのだ。

 物語は、2012年の夏ロンドンへ旅立ったことから始まる。いや25年前、BOØWY解散後にリリースした初のソロ・アルバム『GUITARHYTHM』へと遡るのかもしれない……。『GUITARHYTHM』は、BOØWY解散後にソロ活動で海外での成功を夢見て全編英語詞で、コンピュータとロックを掛け合わせ生み出された意欲作だった。しかし、当時のイギリス・シーンでは相手にされることなく、商業的な成功には至らなかった。その後、布袋は吉川晃司との大型ユニットCOMPLEXとして活躍し、1991年以降はソロとしてヒット作を多数生み出し現在に至っている。

 しかし、布袋は実は1996年に作曲家マイケル・ケイメンからのオファーで、なんとアトランタ・オリンピックの閉会式にギタリストとして出演しているのだ。普通ではありえない展開だろう。さらに、2003年に映画「新・仁義なき戦い」に参加した結果、クエンティン・タランティーノからの熱烈なオファーにより、布袋が手がけた「新・仁義なき戦いのテーマ」が「Battle Without Honor or Humanity」として映画「キル・ビル」のメイン・テーマに起用され、世界中のスポーツ選手やテレビ番組で鳴り響くなど、日本に居ながらにしてワールドワイドな活躍の切符を手にしている。そんないくつもの偶然や必然が折り重なり、結果、叶えきれなかった夢を追い求めるためにロンドンへの移住、そしてワールドワイド仕様のアルバム制作へとつながったのだろう。

 ワイルドでエレガントな魅力溢れる最新アルバム作品『New Beginnings』を楽しむにはまず、イギー・ポップとコラボレーションした2曲目「Walking Through the Night(Feat. Iggy Pop)」から聴くべきだ。重厚なビートに祈るように吠える歌声がたまらない。まさに研いだ刃がギラギラ輝いている骨太キラーチューンだ。さらに、5曲目「How the Cookie Crumbles(Feat. Iggy Pop)」も、布袋らしさ満載のギター・ロックを、イギー・ポップをボーカリストに迎え、ハンマービートなリズムを掛け合わせワイルドに仕上げている。

『GUITARHYTHM』時代の香りも残っていることも聴き逃せない。ブライアン・イーノとコラボレーションしているプロデューサー、レオ・エイブラハムズのプロデュースによる「Kill or Kiss」での、デジタル・ビートに軽やかにギターが絡み合う様は、布袋らしさ満載のフューチャー・ロック・サウンドだ。

 4曲目「New Chemical」は、Apollo440として活躍したNoko 440が参加。ブレイクビーツ・ナンバーが気分を高揚させてくれる。8曲目「Texas Groove(Feat. Vula Malinga)」は、ヴーラ・マリンガとラドーナ・ハーレー・ピーターズによるブルージーな歌声と、跳ねるリズムが気持ちよいロック・チューンが胸に突き刺さってくる。

 布袋のすごさ、それは日本での退路を断ち、自ら海外で生活し、現地のミュージシャンと日々セッションすることで生まれたコネクションを紡ぎ合わせ自分の力で一歩一歩、あらたな未来を掴もうとされていることだ。かつての経験から、近道が無いことは知っている。しかし、下手に遠回りすることなく、自らが進むべき道を布袋は着実に前を向いて走り続けている。前人未到の海外展開。布袋のあらたな旅はまだ始まったばかりだ。

(ふくりゅう(音楽コンシェルジュ))

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