SAKANAMON MINI ALBUM「ARIKANASHIKA」ディスクレビュー

ARIKANASHIKA

MINI ALBUM

SAKANAMON

ARIKANASHIKA

Getting Better

2014.10.01 release


消えないルサンチマンを、2割の働きアリの気概で歌う

 2月に発表された2ndアルバム『INSUROCK』がオリコン初登場17位を記録し、過去の記録を大幅に更新したSAKANAMON。“文系ギター・ロック希望の星”がひとつの成果を示し、“大きな自信を手にしたのでは?”と思いきや、彼らは本作でも相変わらずルサンチマンを爆発させている。しかも、「手を指し伸べてくれるのは特殊な感性持つ貴方だけ 十分幸せですが何か」(「幼気な少女」)や、「何れにしても繁栄は無いから 身分に見合った世界を期待裏切ってご提供」(「アリカナシカ」)と、かなり生々しいというか、これまで以上にギリギリなことを歌っていたりするのだ。オリコンで17位になっても、いや、おそらくは1位を獲ったとしても、彼らが培ってきたルサンチマンは決して消えることなく、「アリカナシカ」で判断されてしまう世界に対し、きっと悩みは深まるばかり。それでも、曲を作り続け、時々あの子のことを思い浮かべて酩酊し、日々を重ねていくことでしか、答えを見出す手段はないのだ。もちろん、“答えはない”とわかっていても。

 ライブでの盛り上がりが目に浮かぶ衝動過多なロック・ナンバーにして、アウトロでサラッと聴かせるコーラス・ワークがにくい「幼気な少女」、前作に収録されていた「TOWER」に続く、エレクトロニックなテイストのダンス・ナンバー「アリカナシカ」の2曲が本作の軸だと言っていいと思うが、個人的には、母親がなぜか選んでしまう食品の謎なチョイスについて、軽やかなリズム・チェンジで描いた「マザーラインナップ」に、藤森元生のストレンジな作家性が強く伺えるように思う。また、アルバムのラストを飾るストーカーチックなラブ・ソング「君の○○を××したい」にはKEYTALKの小野武正がゲスト参加し、エモい曲調に合わせた勢い重視のギター・ソロを披露しているが、彼はステージングこそ派手なものの、実はKEYTALKのときは理論に基づいた職人的なギタープレイを聴かせることが多いので、このテイクはコラボならではの貴重なものだと言えよう。

 ジャケットに描かれたアリの巣は、『ARIKANASHIKA』というタイトルから連想されたものであろうことは言うまでもなく、“どうせ俺たちは働きアリさ”なんて自虐も入っているのかもしれないが、女王アリなんていうのはほんの一握りで、僕らは大概が働きアリである。そんな働きアリの中でも、“2:6:2”の割合で、よく働くアリ、普通のアリ、働かないアリがいるそうで、これはまさに人間社会そのもの。つまり本作は、“どうせなら最初の2割の働きアリとして、世に作品を提示し続けてやろうじゃないか”という気概と、“で、もしかしたら女王アリに気に入られちゃって、○○を××できるかも”なんて妄想が入り混じった、やはり何ともSAKANAMONらしい一枚なのである。

(金子厚武)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人