RHYMESTER ALBUM「The R 〜 The Best of RHYMESTER 2009-2014〜」ディスクレビュー

The R 〜 The Best of RHYMESTER 2009-2014〜

ALBUM

RHYMESTER

The R 〜 The Best of RHYMESTER 2009-2014〜

キューンミュージック

2014.09.24 release

初回生産限定盤 <CD+BD>
初回生産限定盤 <CD+DVD>
通常盤 <CD>
完全生産限定盤レコード3枚組


再始動後の5年間を総括するベスト盤登場

 2009年のシングル「ONCE AGAIN」から現在に至る作品の中から選んだ代表曲に、新録音と未発表曲を加えた結成25周年記念ベスト。この時期のライムスは約2年間の活動休止(ライブはやっていたが)が明けて再出発の気迫を前面に押し出し、「ONCE AGAIN」を筆頭にスケールの大きな、ある意味ロック的なカタルシスを備えたドラマチックなサウンド・メイクが目立つ。ファンのニーズにもぴったり合ってセールスやチャートはそれ以前よりも着実に上昇、めっきり減ったメジャー・レーベルのヒップホップ・アーティストの中でも揺るぎない地位を固めて現在に至る。曲は知ってるけどアルバムを全部チェックしてなかった、というリスナーは手に取って損はないと断言する。日本語ラップ(ってもう死語かな)の黎明期から繋がる伝統をきちんと踏まえ、ライトなファンへの敷居を低く間口を広げることを忘れない、たゆまぬ努力と才能が見事に合致した全17曲に隙はない。

 それにしてもよくこの3人が揃ったもんだと改めて思う。年齢順で言うと、稀代のコンセプターであり韻を踏むボキャブラリーの数では他の追随を許さない宇多丸、ライミングもすごいがむしろ畳みかけるフロウに特徴があり、特に早口ラップでは無敵のスキルを発揮するMummy-D、非常にソウルフルでキャッチーなトラックを作れてラップもいけて、それでいて人格的には控えめでバランサーに徹するDJ JIN。自己主張の激しいヒップホップの世界で20年以上グループが続いているのは、音楽はもちろん人間関係のバランスがいいおかげだろう。

 音楽的には外部プロデューサーを積極的に起用してきたことも重要で、今作でも「ラスト・ヴァース」「余計なお世話だバカヤロウ」など聴いてすぐにDJ WATARAIだとわかるゴージャスなソウル・フィーリング溢れる曲や、そのスタイルを受け継いだと思われるBACHLOGICの「ONCE AGAIN」「Walk This Way」など、アッパーでグルービーな曲の完成度が高い。一方で、ディープなオールドスクールっぽさを現代的に味付けしたMaki The Magicの「ComeOn!!!!!!!!」、ボサノバとソウルを組み合わせたようなDJ Mitsu the Beatsの「フラッシュバック、夏。」など、曲調の幅は想像以上に広く、娯楽性も高い。

 リリックに関してはひとことではまとめられないが、あえて言うならば“いいこと言い過ぎ”。ちょっとした生きるヒントをコンセプチュアルに展開する「K.U.F.U.」、子供たちへの優しい愛の歌のように聴こえて、幼児虐待などの問題などを想起させる「Hands」、政治家からネットの書き込みまで、信用できないものを羅列しながら最後に“選ぶのはキミだ”と言い切る「The Choice Is Yours」など、多面的な視点でリスナーの意識をひっくり返すリリックの深みは相変わらず一級品。「ちょうどいい」みたいな気楽な曲がもっとあってもいいとは思うが、斜に構えているようで万事熱血漢でもある彼らゆえ、これぐらいがちょうどいいのかもしれない。

 小野瀬雅生(CRAZY KEN BAND)を迎えた「サマー・アンセム」、SCOOBIE DOとのガチンコセッション「This Y’all,That Y’all」など、バンド・グルーヴを生かした娯楽性の高い曲もしっかり入った17曲。初回盤は2002年以降の秘蔵のライブ映像をたっぷり盛り込んだDVD/BDがついた2枚組で、こちらを押さえれば完璧だ。

(宮本英夫)

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