横山 健 – Hi-STANDARDのメンバーとして一時代を築き上げ、現在は精力的にソロ活動を続ける横山 健の“生き様”を捉えた貴重なドキュメント。

横山 健

パンク・シーンの巨星・Hi-STANDARDのファンはもちろん、2004年からのソロ・アーティスト・Ken Yokoyamaのフォロワー、もっと言えば横山 健という人物についてまったく無知な方にも、このドキュメントは女房を質に入れてでも観てほしい。4年にわたって撮影された生々しい映像に加えて、横山の独白のような形で語られる生い立ち、成功の軌跡、その裏にべったりと張り付いた葛藤と苦悩……。あくまで自然体だが、強い信念と覚悟のもとに洗いざらい吐露されるその“生き様”は、きっと観る者すべてに、何かに立ち向かうための勇気(のようなもの)を届けてくれるはずだから。劇場公開から1年あまり、ついにDVD化される本作について、横山にじっくり聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 奥村明裕


望んでいたことではあったかな。自分の半生を映像で収めてもらうってことは

──昨年11月に映画館で上映されたドキュメントが、晴れてDVDとしてリリースされます。

うん。でもね、もともとはDVDで出すために録りはじめたもので。内容自体も、「DEAD AT BAY AREA」(2010年10月に神戸国際展示場と千葉幕張メッセにて開催)っていう、アルバム『Four』のツアー・ファイナルで完成させようっていう話で、『Four』のレコーディングからカメラに入ってもらって、プロモーションしてるところを録ってもらったりして。_ww_tokusyu_jibunbakari_5_09

──横山さんの半生を総括するような今の形ではなく、アルバム『Four』にまつわるドキュメントになる予定だったと。

そう。『Four』っていうアルバムは、日本のロックがこんな扱い受けてていいのかよ!? っていう問題提起があって、そういうことをすごく吠えてたものだったから、その熱をパッケージ化したかったのね。それで監督にお願いして、一度編集も済んだところで震災(東日本大震災)があって。これはもうちょっと録る必要があるとみんな思って。そのあとにHi-STANDARDの再始動であったり、被災地にKEN BANDで向かう姿を収めてくれて。で、『Best Wishes』のツアーまで録ってくれたところで、ここで区切りましょうって言ってた頃に映画上映の話がきて。DVDにするために作ってたものが先に映画館で上映することになったの。

──映画館での上映は、まったくの想定外だった?

想定外だったね。実際、足掛け4年くらい録ってるんだけど、どんどん性質が変わっていって、60の劇場で3万人が来てくれて。このDVD化にあたっては、公開からもう1年くらい経ってるわけだから、その1年間の自分もちゃんと見せたくて。それで新曲を付けて、特典映像としてあらたにインタビューも録りおろしてもらって。今年の7月の自分の気持ちはちゃんとパッケージされてる。

──初めて観る方はもちろん、すでに劇場鑑賞された方も楽しめる内容になっていると。

うん。3万人が来てくれたとはいえ、限定公開だったから。仕事の都合で行けなかった人もいるだろうしね。

──なるほど。映画館での作品上映というのは、横山さんの長いキャリアの中でも初めての表現形態だと思うんですが、実際やってみていかがでした?

うれしはずかしって感じ(笑)。普通にうれしかったし、照れくさかったし。編集のときに何回も観てるんだけど、初日の舞台挨拶のあとに自分でも観てみるとまた味わいがちがって、(しみじみと)うれしかったなあ。

──改めて感じ入ったシーンとか、発見とかありました?

これはしょ〜もない話なんだけど、監督とのやり取りはデータで送ってもらってパソコンで観てたのね。それで、飛行機で俺が帰ってきて長男坊が迎えに来るシーンがあるんだけど、その長男坊のとなりにはかみさんがいるとずっと思ってたの。それが、大きいスクリーンで観たらウチのローディーだったっていうね(笑)。

──パソコン上では小さすぎてわからなかったという。

映画館で観ていちばんびっくりしたな(笑)。ローディーじゃねえか! って。

──はっはははは。撮影にあたって、こんなふうに録ってほしいとか、横山さんからの要望はなかったんですか?

いや、特別なかったね。オレのドキュメント録ってって持ちかけたけども、撮影がはじまってからはなんの注文もなくて。PIZZA OF DEATHの連中がいろいろ考えてくれて監督と話し合ってくれたけど。

──冒頭にも話したとおり、紆余曲折を経て半生を総括するような作品になりましたけども、今のスタイルへの移行はスムーズでした?

もともと生い立ちから語ってほしいってことは監督が言ってて。誰かの証言とか交えずに、全部横山さんに語ってほしいって。オレはいろんな人に褒め称えてもらいたかったんだけど(笑)、監督がそれはしたくないって。だから、結果的に自分で自分のことを語り尽くす映画になったんだけど、それをさせてくれたのは監督なのね。で、震災があってからは、ドキュメントの着地点をどうするかっていうのがみんな共通の悩みであって。監督も悩んでたけど、いろいろあったけど結局KEN BANDに戻っていくオレの姿っていうのを見せたかったみたいで。

──偶然ながらも、これまでの歩みを総括すべきタイミングだったというか。そういう感覚はぼんやりとでも横山さんの中にありました?

……自分ではそう思ったことはなかったけど、もしかしたら、世の中がそれを求めてたのかもしれないなあ(遠い目)。_ww_tokusyu_jibunbakari_5_09

──急にロック・スター発言出ましたけど(笑)。

はっはははは! 世の中が横山を求めてたのかもしれない。(猛爆)って書いといて(笑)。でも、“生い立ちから語ってもらいます”ってなった時点で、ただの『Four』のドキュメンタリーじゃなくて、横山 健っていう人間の半生を描いたものになるっていうのはわかってたから、準備はできてたというか。海外のミュージシャンって、よくドキュメンタリー出してるでしょ? そういうの観るのすごく好きだし、そういうところからその人のアティチュードを汲み取ったり、音楽をより深く理解できたりするから。だから、オレも望んでいたことではあったかな。自分の半生を映像で収めてもらうってことは。

目の前で酷いことが起こってたらさ、やっぱり本能的に“Stop!”でしょ?

──こうやって過去を総括することで、未来に向かっていけるところもあるでしょうし。

そうそう。すごくビッとしたしね。やっぱり、今後も自分らしく筋を通して生きていかなきゃいけないなっていう指針にもなるし。

──横山 健という人間がどういう生き方をしてきたかがより伝わりますよね。ここまで仔細に生い立ちを語るのは初めてじゃないですか?

数年に一回はあったかな? 取材とかで話してるうちに、どんな育ちをしてきたかを語ることもたまにはあって。振り返る作業っていうのは、オレにとって特別なことじゃなくて。

──自らPIZZA OF DAETHのホームページ内のコラムで書かれたりもしましたし。

そうそう。自分の育ってきた家庭環境の話だったりとかも書いてるわけだから。意外と普通に話せるかな。

──なるほど。4年にもわたって密着されて、つねに傍らでカメラがまわってるわけじゃないですか。そこに対してストレスを感じることはなかったですか?

いや、全然。ドキュメンタリーの映像作家にもいろんなタイプがいると思うんだけど、MINORxU監督は“化かしあい”をしたい人で。

──化かしあい?

録ってるよって言って録ってなかったり、録ってないふりして録ってたり。それでオレの感覚を麻痺させたわけ。撮影がはじまったばかりの『Four』のレコーディングの頃は、監督がいると“あ、録られてるな”って意識がたしかにあったけど、同行してもらううちに普通になっていったというか。ツアーとかだと、もう監督はツアー・クルーになってたし、カメラ持ってるローディーみたいな?

──いつも隣にいてあたりまえの存在というか。

うん。いないと“なんでアイツいないの?”って。そういうような関係になっていって。冒頭の2011年の“AIR JAM”のライブ直後の映像って、結構ショッキングな内容だと思うんだけど、あれもカメラ回されてると思ってなかったから。モロに盗撮なの(笑)。Hi-STANDARDのライブが終わって、裏の駐車場でタバコ吸ってるところに監督がさーっと来て。思い出してみりゃあ、カメラ膝に置いてたなくらいで、まさかあそこが押さえられてるとは思ってもみなかったんだけど。

──たしかに、冒頭ではちょっとショッキングな告白があって。主催者があんなこと思ってたのかって、戸惑う人もいるかもしれない。

うん。でもあれは監督にだから話せたことで。最初に映像チェックで観たときも、“これがオープニングでいいの!?”って思ったから。こうやって作品になってみると、よくぞ録っててくれてたなって思う、本当に。しかも監督はね、聞き上手なの。なにかと質問してくるのね。それも彼の技術のひとつなんだろうな。撮影が終わった今でも質問攻めにしてくるし。

──なるほど。DVD化における大きなトピックは、久々の新曲がパッケージされるってことで。

最初に話したことと被るけど、公開されてから1年間の自分も見せたいっていうところから新曲をつけようって思いついて、だったら「Stop The World」がいちばんピッタリじゃないかなって。_ww_tokusyu_jibunbakari_5_09

──いつ頃生まれた曲なんですか?

曲自体は2013年中にはあって。今もツアーしながら新曲を作ってる状態で、その中でも比較的早い段階で生まれたんだけども、ちょっと扱いに困ってたの。全然KEN BANDらしくないから。レコーディングは今年の初夏にしたんだけど、そこで思ってることをバーっと歌詞に書いて。この曲が求めてる世界観と自分が言いたいことが、奇しくもこういうことだったっていう。

──曲調にしてもメッセージにしてもかなりヘビーなもので。悲痛な叫びのように感じられました。

ある人に言われたんだけど、「なんで“Change The World”じゃなく、“Stop”なんですか?」って。でも、目の前で酷いことが起こってたらさ、やっぱり本能的に“Stop!”でしょ? “止めて!”でしょ?

──今のこの世界に対する横山さんの認識は、「Stop!」って言いたくなるような惨状だと?

今だけじゃなくて、太古からずっとだと思う。国家なんてものができて、法律やお金ってものが世の中に生まれて……ちょっと話が大きくなっちゃうけど、世の中を良くするはずのものが、それだけじゃ済まないものになってて。みんなは盲信してるかもしれないけど、オレなんかは貨幣の価値って一体なんなんだろう? って思ったりするし。フェアじゃないし、貨幣なんていらないんじゃない? とか。

──世の中の仕組みそのものを疑ってるというか。

そう。かといってオレは共産主義者じゃないから、全部を平等にっていう清い人間でもないし。まだ言葉にならない価値観を抱えていて、ミュージシャンって結構そういう人は多いと思う。でも、どこかで自分が生きてるうちに良くなりゃしないっていう諦めの気持ちもあるし。

──結局、この世界を止めることも変えることもできないかもしれないと。

うん。でも、歌詞を書こうとするときには「止めて!」って言う自分もいるし。

──言ってしまえば、この世の中は狂ってますか?

世の中狂ってるし、数千年、狂い続けてると思う。だから、叫べる場所があるなら叫ぶべきだって気持ちがあって、それがこういう歌を作ることに向かわせたりして。もしオレがミュージシャンじゃなかったら、こんな狂った世の中もういいですよってなってるかもしれないけど、人前に出てみんなの笑顔見せてもらってる以上、少しでも世の中を良くしたいっていう気持ちがあるわけ。やっぱりそこに希望を求めてしまうのよね。

──横山さんの中でも大きな問題意識が込められた曲なんですね。

うん。でも、全部当たり前のことじゃない? みんなが思いつくことだと思うのね、この曲の歌詞って。きっとこの曲を書くには今のタイミングじゃなきゃダメだったと思うし、すごい大切な曲になる気がするな。

──じゃあ「Stop The World」こそ、このドキュメンタリーのテーマ曲だと。

あとづけではあるけれども、そう捉えられても全然いいかな。ドキュメントの中では戦争の話なんてしてないけどね。でもやっぱり、3.11で気付かされたこと、そこから広がっていった問題意識っていうのは、この「Stop The World」で描いた世界観と繋がってるものだから。

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