ザ・クロマニヨンズ ALBUM「GUMBO INFERNO」ディスクレビュー

GUMBO INFERNO

ALBUM

ザ・クロマニヨンズ

GUMBO INFERNO

アリオラジャパン

2014.09.24 release


スパイスたっぷりザ・クロマニヨンズ特製ガンボ 

 “ガンボ”とはアメリカ南部の煮込み料理で、その地方独特のリズムを持った音楽のことでもある。ジャケットの大鍋は何かを煮込んでいるらしい。キレのいいロックンロールに秘伝のスパイスを効かせた特製ガンボは、一度味わったら病み付きだ。

 1曲目「旅立ちはネアンデルタール」の切ないメロディにグッと掴まれてしまう。ふざけたようなタイトルや歌詞にクロマニヨンじゃないのか、と突っ込みたくなったりもするが、テーマはアフリカの大地に誕生して世界中に旅立って行った祖先たちへの想いだろうか。マーシーこと真島昌利らしい歴史観と壮大なテーマを感じさせる曲を聴くうち、ついネアンデルタール人についてググってしまった。いつもながらザ・クロマニヨンズの曲には、そんなポイントが満載だ。

 芯の通ったロックンロールのビートに絶妙なメロディを乗せる彼らの曲は、メロと歌詞がひとつになって、一度聴いたら耳から離れない。「ウォルターに一撃!」を聴けば、リトル・ウォルターって誰? と思うし、ついでにキャデラックやサンダーバードも調べたくなる。こうしたビンテージ・カーが’50年代頃には成功の象徴で、有名なブルース・ハープ奏者であるリトル・ウォルターの曲名にもなってる、なんてことを甲本ヒロトはインタビューで教えてくれた。

 ヒロトの真骨頂は、先行シングルにもなった「キスまでいける」だ。初デートの歌ではなくて、歌詞に出てくる「翼よあれがパリの灯だ」という有名な映画で重要な意味を持つ鏡やキスを持ち出して、誰もやらないことをやる素晴らしさを歌っている。インタビューで珍しくヒロトはこの映画に子供の頃どれほど感動したかを語っていたが、そんな想いを今も生き生きと歌にするところがヒロトならでは。

 マーシーも彼にしか書けない歌ばかり。自分の意思や気持ちはどこなんだと問う「流行のクルマ」や、便利と危険が並んでいると指摘する「B&K」、蒸気機関車の魅力を描く「ドードードドードー」や、「原始力自転車」なんて素敵な発明(?)も飛び出す。こんなふうにピリッとしたスパイスさながらの視点を散りばめた曲を聴いて、何かを感じないわけはない。聴くたびに気が付いてるだろ、勇気を出せよと、背中を押されている気がしてくる。もしひとりでは気後れしちゃうと思っても、クロマニヨンズがついてる。「君が一人で行けば 僕も一人で行く」と歌う「孤独の化身」が勇気をくれて、木星だろうが工事現場だろうが、どんなところへでも行けそうな気がしてくる。そうか、旅立つのはネアンデルタールじゃなくて自分なのか、と最初から聴き直したくなってしまう。この特製ガンボは本当に病みつきになる。

(今井智子)

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