Lyu:Lyu SINGLE「ディストーテッド・アガペー」ディスクレビュー

ディストーテッド・アガペー

SINGLE

Lyu:Lyu

ディストーテッド・アガペー

SPACE SHOWER MUSIC

2014.09.24 release

<CD>
※生産枚数限定


人間の最も深い場所にコミットする歌とサウンド

 このバンドに関しては、その歌詞の世界の独自性が取り沙汰されることが多いのだろうが、まず耳を引きつけるのは計算され尽くされたそのバンド・サウンドの巧みさだ。歌と一緒にエモーショナルになるのではなく、歌に込めたエモーションを引き立たせる絶妙な押し引きのバランス。歌詞の一言一句をリスナーに聞き逃させまいとする繊細でていねいなアレンジ。音楽が好きだから/バンドでライブをやるのが好きだから/歌うのが好きだから/音楽の世界でプロになりたいから、などなど、バンドを組んで音源をリリースする理由は人それぞれだが、このLyu:Lyuというバンドはまず“伝えたいこと”があって、それを今の社会で最も効果的に伝えるための手段としてバンドをやっているのだろう。

 本作「ディストーテッド・アガペー」の表題曲はボーカル&ギターのコヤマヒデカズがWHAT’s IN? WEBで連載していた同名小説を基にしたものだ。昨今、物語と音楽をリンクさせた表現といえば、例えば人気ボカロPの作品などを思い浮かべる人も多いかもしれない。極めて個人的な“書く”という作業と、自宅のベッドルームでひとりPCに向かって打ち込みによって生み出される音楽は、言うまでもなく親和性が高い。本作収録のコヤマヒデカズ自身によってエレクトロニカ風にリミックスされた「メシア -コヤマヒデカズ remix.-」の完成度の高さからもわかるように、彼はそうしたデスクトップ・ミュージックにも精通しているし、実際にナノウという名義で優れたボカロ作品を発表している。一方で、このLyu:Lyuではあくまでもバンドであることにこだわり、その必然性を圧倒的な説得力でもって鳴らし続けている。バンドとは他者に深くコミットすることであり、他者と深くコミットするというのはとてもめんどくさいものである。しかし、そのめんどくささを引き受けたところからしか始まらない表現というものは確かにあるのだ。そのめんどくささは、どこかで誰かの魂を救っているに違いないLyu:Lyuの歌の世界とも密接に繋がっている。

(宇野維正)

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