ドレスコーズ EP「Hippies E.P.」ディスクレビュー

Hippies E.P.

EP

ドレスコーズ

Hippies E.P.

EVIL LINE RECORDS

2014.09.24 release

初回限定盤A <CD>
初回限定盤B/写真 <CD>
初回限定盤C <CD>
初回限定盤D <CD>
通常盤/写真 <CD>
※初回限定盤は紙ジャケット・UV加工印刷仕様/全4種類


性急な進化の過程にいるドレスコーズからの生々しい現状報告

 問題作、と言いきってしまって構わないだろう。ドレスコーズ、今年初のリリースにして、レコード会社移籍第一弾となる5トラック収録のEP。4月に移籍を発表した際、志磨遼平は“ダンスミュージックの解放”というテーマを掲げていた。“ドレスコーズがダンス・ミュージック?”。多くのファンの頭の中に浮かんだはずのそんなクエスチョンマークへの回答が本作となるわけだが、これが一筋縄ではいかない仕上がりとなっている。’90年代渋谷系テイストを感じさせるポップ・ソウル「ヒッピーズ」、エレクトロクラッシュ風のパンク・チューン「ドゥー・ダー・ダムン・ディスコ」、軽快なリズムと上物のシンセ音が印象的な「Ghost」、メロウなトラックにのって三浦康嗣(□□□)と志磨が掛け合いラップ(!)を披露する「メロディ」、エレクトロニカ色の強いサイケデリックな4つ打ちソング「若者たち」。いずれも広い意味でのダンス・ミュージックではあるが、その方向性はバラバラ。1曲ごとの完成度は高いが、やはり5曲通して聴くと、現在のドレスコーズが何らかの過渡期にあることに嫌でも気づかされる。という意味で、これは回答と言うよりもドレスコーズからの現状報告的な作品である。

 そもそも、志磨の言う“ダンスミュージック”とは、音楽のジャンルとしての“ダンスミュージック”ではない。頭で考えるのではなく、まず身体が動いてしまうこと。音楽シーンや自分たちのオーディエンスに対するリアクションではなく、まずバンドの内側にあるものに突き動かされて能動的に動くこと。同世代のミュージシャンの誰よりも“ロックンロール”という概念そのものを意識的に作品化してきた志磨は、ここで“ダンスミュージック”というキーワードをある意味で踏み台にして、ドレスコーズの音楽をネクストステージへと性急に進めようとしている。

 表題曲となった「ヒッピーズ」についても少し解説が必要だろう。ここで言う“ヒッピー”とは、いわゆる’60年代の楽観主義的なフラワーチルドレンを直接的に指す言葉ではない。無謀な理想主義を抱えたすべての者、つまりは、やがて夢が破れて挫折することになるすべての者を象徴する言葉としての“ヒッピー”。ドレスコーズにとって今回のレコード会社移籍はさらに勝ちにいくための、攻めの姿勢を明確に打ち出したものであったはずだ。それでもなお、まずは敗者の美学を歌わずにはいられなかったミュージシャン志磨遼平の業の深さに、胸を締めつけられずにはいられない。

(宇野維正)

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