大森靖子 SINGLE「きゅるきゅる」ディスクレビュー

きゅるきゅる

SINGLE

大森靖子

きゅるきゅる

avex trax

2014.09.18 release

<CD+DVD>/写真
<CD>


大森靖子は面白い。たぶんではなく、絶対面白い

 26歳のバース・デーに待望のメジャーデビュー・シングル「きゅるきゅる」をリリースする大森靖子(せいこ)。彼女は自身の音楽性を、ジャンルを、活動や立ち振る舞いを、決してうまくまとめさせてくれない。括らせてくれない。

 アイドルじゃないのにTIFに2年連続で出演する一方で、この夏は“ARABAKI ROCK FES.”や“JOIN ALIVE”、“夏の魔物”や“FUJI ROCK”など、多数のロック・フェスに参戦。リフトで流れてきたファンとキスをしたり、MCでの「結婚予定の恋人と肉体関係を持ったアイドルがいる」という爆弾発言がネットニュースを騒がせたりもした。また、昨年12月にリリースされたアルバム『絶対少女』の収録曲である「ミッドナイト清純異性交遊」と「君と映画」のミュージック・ビデオから派生し、彼女が主題歌や劇中かはもちろん、原案や脚本の共同制作に携わった映画「ワンダフルワールドエンド」(監督:松居大悟、出演:橋本愛、蒼波純ほか)の劇場公開も決定。さらに、新作のMVに、今最も旬の芸人である日本エレキテル連合や、元bisのコショーメグミが出演したことも話題を呼んだ。音楽のみならず周辺要素も全部込みで表現と捉え、自らをニュース化できる才能を持った彼女は、多様化したメディアへの見せ方をわかっている現代的アーティストだと言える。だが、その実体は、どれだけ熱心に聴いても、掴めそうで掴めない。

 例えば、表題曲「きゅるきゅる」は、ピアノが弾み、シンセがカラフルな色彩を放ち、ギターも歌い、ベースとドラムが踊りを誘い、「誰でもいいなら私でいいじゃん」というメッセージも込められたキュートなポップ・ソングだけれども、タイトルの意味はいくら考えてもわからない。わからないけど、頭の中でずっと流れてて消えてくれないから困ってしまう。続く「私は面白い絶対面白いたぶん」は、ダブ・ステップに興味を抱いたハードロッカーが、KICK THE CAN CREWと真心ブラザーズとうる星やつらを飲み込んだような楽曲で、一曲の中で何度も曲調が変わり、奇想天外な展開をする。3曲目の「裏」はアコースティック・ギターの弾き語りで、私には裏なんて何もない、ただの“おんな”だと歌っている。これは、自分の中の“女性性”を使って戦っていくという意味ではなく、前作『絶対少女』で「全ての女の子を肯定する」と言っていた彼女だから、音楽を使って、様々な“おんな”になるという宣言ではないかと想像している。

 歌の中であれば、アイドルにもなれるし、ロック・ミュージシャンにもなれる。仕事と恋の両立にくたびれ果てたOLにだって、夢ばかり見てるダメ男に貢ぐ女の子にだってなれる。時には甘くて無垢なロリータとなり、時には口汚いビッチにだってなったりする。つまり、聴き手は彼女の音楽に触れるたびに、異なる女の子、少女、女、女性、レディーやウーマンに出会っていることになる。だから、彼女がどんな女性なのか、掴めなくて当然だ(と思うことにした)。わからないから余計に気になって、ついつい本気で聴き入り、何度も何度も聴き返したくなる。彼女の歌には、そういう引力がある。メジャーに舞台を移した彼女が、次はどんな“女”になろうとしているのか? 今はそれがただ、楽しみでならない。

(永堀アツオ)

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