PAGE MINI ALBUM「ノンフィクション・ガール」ディスクレビュー

ノンフィクション・ガール

MINI ALBUM

PAGE

ノンフィクション・ガール

キューンミュージック

2014.09.17 release


フィクションの向こう側の現実へ。PAGEは全力で駆け抜ける

 パッと見どこを切ってもキャッチーなネタばかりで、オフィシャル・サイトにどーんと書いてある“10代ヲタニートが本気出してみた!”というキャッチコピーにそのまま乗っかれば実にわかりやすいアルバム。PandaBoy、中村彼方、ヒゲドライバー、fu_mou、中原麻衣、nishi-ken、Novoiski(Moonbug)、THE LASTTRAK、Koji Nakamura(iLL、LAMA)といった参加クリエイターの名前を聞いて“おおっ!”と思った方は当然チェックして損はない。デビュー当時から、そもそも素人ネットラッパーの時代からラップとアニメへの偏愛をチラ見せしてきたPAGEがリミッターをはずし本性を見せた作品という、モチベーションもテーマもターゲットも明確。アキバ系ラッパーというアイデンティティを得たPAGEは水を得た魚のように、きゅるきゅるピコピコした明るいアイドル・ポップ風トラックに乗ってラップしまくる。やりたいことをやっと見つけて楽しそうで良かったなと思う。1曲目「ノンフィクション・ガールは窓の向こう」と2曲目「あ・い・ど・る」までは。

 あれっと思うのは3曲目「飛び込めない駅のホームから」。fu_mouの手掛けたトラックこそキラキラポップ系だが、タイトルどおりにギリギリの閉塞感をあぶなっかしいホームの端っこに例えた歌詞の持つ強烈な鬱パワーにたじろぐ。4曲目「魔法みたい」はガラリと曲調が変わり、メロウなヒップホップ・トラックに乗せて切々とつぶやくのは手痛い恋の裏切りの物語で、声優・中原麻衣のふんわりしたコーラスがもの哀しい。アルバム冒頭2曲の仮想現実の中でもがき遊ぶ自分を見つめる俯瞰の視点が、ここでは完全に現実ヘスライドしていてやけに生々しく痛々しく響く。5曲目「クリープ・フーリガン」はこのアルバムの核心を成す一曲で、“聴こえてるか全国の負け組諸君”という強烈なアジテーションのもと、自分さえも例外とせずにあらゆる嘘と臆病を切りまくる不条理なフーリガン的心理描写が危険すぎる。続く「ニューデイノーミー」「Colourful」はもはやPAGE自身の人生の懺悔や告白と言ってもよく、とにかく嫌なことばっかりの日々をこれでもかと心理描写したあと、だけど“僕は生きていますよ”というひとことが抜けないトゲのように心に突き刺さる。

 アキバでオタクでアニメでバーチャルで、楽しそうな看板を掲げておいてここまで引きずり込んでおきながら、本当に俺がそれが好きだと思うのかい? と全部ひっくり返されたような、なんとも厄介でとんでもない吸引力を持ったアルバム。すごい作品だと思う。そしてまだまだ謎が多すぎる。だからPAGEには未来があると思う。

(宮本英夫)

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