Glider ALBUM「Glide & Slide」ディスクレビュー

Glide & Slide

ALBUM

Glider

Glide & Slide

SPACE SHOWER MUSIC

2014.09.17 release

<CD>


全身にスッと染み込む豊潤な音世界で日本語を歌う

 夏の間、どんなに暑てくも根をあげず咲き誇っていたベランダのマリーゴールド。季節は移り、そろそろコスモスに植え替えようとしたある日、思いがけずあらたなマリーゴールドと出会った。そう。この作品集の5曲目。ある時期の沢田研二さんを彷彿させるような甘さと意思の強さが混ざり合ったボ-カルの声。決して大仰にはならず、歌の目指す場所へ併走していくバンドのアンサンブル……。こうした、気がつけば心に住み着いていそうな楽曲に飢えていた自分としては、とても大きな収穫となったのだった。

 ほかにも作品集全体として思ったのは、日本語を彫りの深いものとして届けるためのコード進行の研究とか、そもそも日本語詞における心に染みる名文句の模索とか、もちろん作品を最大限魅力的にするバンド・アンサンブルやコーラス・ワークの追求とかに熱心な人たちだと見受けられる。さらにすでに結果も充分に出ている(高野寛くんもアイデア出して協力してるらしい)。

 「Overture」がボーカルをアカペラ・コーラスで支える構成でムムムと期待は膨らんだが、続く「Sky Is Blue」は、誰にも思い当たる心の中の“遠近”が、巧みに歌詞と曲とによってジワーンと表現されている。「Glider’s Monkey Job」と「Boogie Train」は彼らのロック性をより押し出した作品で、このバンドの魅力はこのあたりにもあることを知った。ちなみに「Boogie Train」はロックというよりロックンロール。そんな温故知新もなかなかにキマっていた(しかしこのタイトルは付けも付けたり、である)。最後の「Glider」で「Overture」とつながるけど、この「Glider」という曲の、誰が聴いても名曲とわかる水準の高さにより、きっとこのバンドは世の中へとテイクオフすることができたんだろうなと思った。

 メンバ-は栗田兄弟と椿田兄弟の4人で、しかも幼なじみなのだそう。兄弟というのは、物心ついてからしばらく、いちばん多くの時間を共にする間柄だし、しかも両兄弟が幼なじみということは、コトバを交わさなくても、音の交歓だけで同じ景色も描けるのだろう。ふと、そんなことも思ったのでした。今後の方向としては、今回の作品集のように硬軟というか動と静というか、両面みせる音源作りもアリだろうし、逆に音源はよりダビングなども多様した作品主義にして、そのぶん、ライブではとことんハジける、というのもアリだと思う。

(小貫信昭)

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