the pillows – 決意もあらたに放たれるシングル「About A Rock’n’Roll Band」。結成から25年を経た今、山中さわおは何を思い、何を見つめているのか?

the pillows

結成25周年を迎えた今年、トリビュート盤『ROCK AND SYMPATHY -tribute to the pillows-』のリリースと、それに関連した対バン・ツアー<the pillows 25th Anniversary NEVER ENDING STORY “ROCK AND SYMPATHY TOUR”>を行うなど、数々のスペシャルな企画を展開してきたthe pillows。その彼らが、自身の26年目をキックオフすべくニュー・シングル「About A Rock’n’Roll Band」をリリースした。「今夜のロックンロールの引力は万能で 道なき道を切り開いて行くんだ」という歌詞のフレーズが表しているように、勢い溢れる8ビートのサウンドに乗せて、ロックの初期衝動とも言うべき熱い想いが、切々と描き出されている表題曲。この曲をあらたなスタート地点として、彼らはどこに向かって進もうとしているのか。そして、活動休止期間を挟んで実に約3年ぶりとなるニュー・アルバムは、果たしてどんなものになるのだろうか。the pillowsのフロントマン、山中さわお(vo、g)に聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY  麦倉正樹


だいたいのことは、もうやっちゃっている。なにせ25周年だから

──25周年のアニバーサリー・イヤーは、ここまでいかがですか?

想像以上に楽しめたし、達成感もあるかな。対バン・ツアーが相当楽しかったね。もうワンマン・ツアーをやりたくないぐらい楽しかったよ(笑)。

──(笑)。トリビュート盤の内容も、相当面白かったですよね。

まあ、今の若手は、俺たちが若手だったときとは全然違うよね。もう完成度がすごいというか、今のロック・バンドは早熟だよ。俺らの世代は、あんまりそういう感じではなかったというか、全体的に学歴も低くて、ロックンロールとパンクしか生きる方法を知らないみたいな人たちがやっていたんだけど、今回参加してくれた若いバンドたちは、みんな学歴も高くてさ(笑)。

──15周年のトリビュート盤(『SYNCHRONIZED ROCKERS』)に参加したバンドと、今回参加したバンドでは、the pillowsの音楽に対する接点みたいなものも、きっと違うのでしょうね。

そうだね。THE BOHEMIANSの平田(ぱんだ)くんに、「小学生のとき、聴いてました」って言われたから、“なるほど、そういうことになるのか”と思って(笑)。まあ、俺が小学生の頃、ゴダイゴとかYMOを聴いていたみたいに聴いてたってことなんだろうな、きっと。

──ただ、自分たちが普段やっている音楽は、あまりthe pillowsには似ていないですよね。

いや、ホントそうなんだよ。全バンドそうだからね。“憧れ”をストレートには感じられないというか、WHITE ASHなんて、バンド名までthe pillowsの曲から取っているのに音はまったく似てないって、どういうことだよっていう(笑)。唯一、カミナリグモの(上野)啓示くんだけは、ちょっと俺っぽいところがあるような気がするけど、彼が今やっている音はまた全然違うしね。ただまあ、RCサクセションとか大好きだった俺の音楽に、RCらしさが残っているかって言ったら、やっぱり残ってないわけでさ。まあ、そういうこともあるのかなって思っているよ。

──そんなトリビュートもありつつ、第1期(1989‐1993)や第2期(1994‐1996)の楽曲だけをやるというレアなライブもありました(※その模様は、映像作品『the pillows 25th Anniversary NEVER ENDING STORY “Do You Remember The 2nd Movement?”』に収録されている)。

第2期をやるのは、ホントつらかったな……。第2期っていうのは、the pillowsがジャズとかソウルとかに向かっていた頃の楽曲なんだけど、そういうものが、今はもうまったく抜け落ちているんだよね。最初のリハーサルのできない具合とか、ホントすごかったから。結構俺は、(佐藤)シンイチロウくんはドラムがうまいと思っているんだけど、最初のリハのときなんか“こんなにできないもんなんだ!”ってビックリしたし、俺は俺で、その頃の曲はキーが高過ぎて歌うのがしんどかったりして。だから、終わったときは、何か得体の知れない達成感があったよ(笑)。

──普段あまり使わない筋肉を使ったというか。

そうだね。やっぱり、アニバーサリーとかって……the pillowsの3人っていうのは、本人たちから“これやろう、あれやろう”っていうのが本来ないタイプなんだよね。だから、誰か身近なスタッフとかが号令をかけてくれないと、まあ、何もやらないんだよ。プライベートでも誕生日とか何もしないタイプなので。で、まあ、“せっかくなので何かやりましょう”ってことになって、いろいろ考えるじゃない? でも、だいたいのことは、もうやっちゃっているんだよね。なにせ25周年だから。で、やってないことってなんだろうと思ったときに、“あ、第2期やってないな”っていうのと、第1期──the pillowsの元リーダーである上田健司ともう一回やるっていうことはやってないなと。それで上田さんと一緒に新宿LOFTで──昔、俺たちがやっていた頃のLOFTとは場所が違うけど、一応LOFTにこだわってやってみようかっていう話になったんだよね。

いろいろあったけど、“まあ頑張ってきたよなあ”みたいな気持ちに、3人ともなったんだと思う

──なるほど。それにしても、活動休止明けからすぐにアニバーサリー・イヤーに突入して、わりといろんなことを慌ただしくやってきましたよね。

まず、「ハッピー・バースデー」のシングルが去年の9月に出て、そのあとにthe pillowsがたまにやっている“LOSTMAN GO TO CITY”っていう、リリースに関係ないツアーがあって……それがいろいろ良かったのかな。要するにそれは、過去の曲ばかりをやるツアーなので……活動休止明けに新曲を考えていくっていうのは、やっぱりちょっと緊張が走るわけですよ。

──というと?

まあ、俺がメンバーにダメ出しをして休止したわけなので、それが復活して“どうなったんだよ?”みたいな感じになってしまうというか、そういう審査員みたいな感じに僕自身もなってしまうし、ふたりも審査されているような気持ちになる面が、もちろんあるわけだよね。でも、その「ハッピー・バースデー」というシングルに入っている3曲に関しては、あんまりそういうのがなく、すごく自然にできたっていうこともあったし、その後のツアーが昔の曲をやるツアーだったので、結構俺の期待どおりというか、期待以上のプレイをしていた時代の曲とかも、そこでやるわけだよ。

──そうですね。

そうすると、その頃の自分の記憶もまた甦るというか。すごい長い間、俺たち頑張ってきたんだなって、そこでまたちょっと、絆みたいなものを再確認するような気持ちにもなってしまったし。なので、そのツアーは楽しく回ることができたし、たぶん音楽以外でも、メンバーとコミュニケーション取って仲良くじゃないけど、そうしようというムードがふたりからもあったのかな。で、それを俺も受け入れたっていう感じだったと思う。それがあってからのアニバーサリーだったから……まあ、そうやって何かごちゃごちゃ忙しいのが良かったのかもしれないよね。

──そんな気がします。

特に、第1期、第2期の曲をやることに、すごいエネルギーが必要だったので……それが良かったのかも。なんかホントに、the pillowsの歴史を思い出させられたし、“上田さんとステージに出るの、22年ぶりだな”とか、そういう感覚が……最近いろいろあったけど、“まあ頑張ってきたよなあ”みたいな気持ちに、3人ともなったんだと思う。

──何か腹を割ってとことんまで話すよりも、一緒に音を出しながら、いろんなことを感じ合うほうが良かったというか……。

そうだね。あと、真鍋(吉明)くんとシンイチロウくんは、基本、腹を割って話さない人間なので、いつまで経っても信用できないんだよ(笑)。そういう話し合いの場でも、なかなか本音がわからないというか、耳心地のいいことしか言わないので、俺にとっては、むしろマイナスになるんだよね。だから、いろいろ慌ただしくしていたのは、結果的にすごく良かったんだと思う。

25周年を迎えたあと、壮大で感動的な曲を出すのではなく、もっと軽やかにサラッといくのがいいよって

──そして、そんな25周年のアニバーサリーに関する諸々を終えつつ、いよいよthe pillowsのニュー・シングル「About A Rock’n’Roll Band」がリリースされるわけですが……この曲は、すでにライブなどでやっていますよね?

えーと、ライブでやりつつ……というか、音源自体、去年録ってしまったので、結構前からライブ会場で流したりしていたんだよね。ライブが全部終わってから、客出しのBGMに使ったりとかもしていたし。

──ということは、制作自体は結構前に?

たぶん、去年の11月ぐらいには、もう録っていたと思う。もともとは、後にアルバム・タイトルとなる曲(「ムーンダスト」)をこのタイミングではシングルにしようと思っていて……その曲自体は、『破壊的イノベーション』っていうソロ・アルバムと同時にもう作っていて、復活したときにやろうと思っていたんだよね。で、そのあとに、この「About A Rock’n’Roll Band」が出来て、これをアルバムのタイトル曲にしようと思い始めて……。

──あ、そうだったんですね?

うん。ただ、そのノー・リリースのツアーをやるときに、“俺たちは元気にやっているし、新曲も作っているんだよ”っていうのを伝えたいなと思って。で、いろんな曲がある中で、一発で聴いてどんな曲かわかって、帰り道に“あの曲、良かったね”と伝わるスピードが速いストレートな曲と言ったら、やっぱり「About A Rock’n’Roll Band」だろうと。で、その後どうするかはさておき、仮でもいいから、ライブ会場で流す用に、一度録ってみようっていうことになって。

──はい。

録ってみたら、なかなかいいテイクが録れたんだよね。で、音も良いし、このままいけるよっていうか、やっぱりこっちがシングルだろうっていう話に、後々なっていったという。要は、25周年を迎えたあと、壮大で感動的な曲を出すのではなく、もっと軽やかにサラッといくのがいいよって、俺の気分が変わったんだよね。で、当初シングルのつもりだった、その「ムーンダスト」という曲は、そのままアルバムのタイトル曲になっていって……。

──そこで逆転現象が起こったわけですね。

そうそう。なんかアニバーサリーのタイミングで感動的な曲をリリースするのって、ちょっとありがちだなっていうのと、20周年のときに出した「雨上がりに見た幻」という曲が、まさにそういう感じの曲だったんだよね。

──あ、たしかに。

あの曲はとても気に入っている曲なんだけど、ちょっと壮大過ぎるから、全然ライブでやらないんだよね。特に、夏フェスとかイベントの短いセットに混ぜにくいところがあって。それがちょっと頭をよぎったのかな。また、このアニバーサリーだけ盛り上げて、その後あまりやらなくなる曲になるのは、ちょっと寂しいなと思って。もっと軽やかな曲で、アニバーサリーが終わっても、その後the pillowsの代表曲の仲間入りをして、ずっとライブで演奏できる曲がいいなって。そういうのもあったんだよね。で、それにふさわしいのは、やっぱり「About A Rock’n’Roll Band」だっていうふうになって。だから、この曲の据わる椅子のポジションが、だんだんと上がっていったというか。

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