ストレイテナー SINGLE「冬の太陽 / The World Record」ディスクレビュー

冬の太陽 The World Record

SINGLE

ストレイテナー

冬の太陽 / The World Record

Virgin Music

2014.09.17 release

初回限定盤/写真 <CD+DVD>
通常盤 <CD>


“クリエイティブの怪物”を見た

 冷えた硝子を高熱のレーザーで削るかのようなリバース音、柔肌を撫でる歌声が、閃光のようなブレイクにより凶暴化。「冬の太陽」は、2000年のデビュー・シングル「戦士の屍のマーチ」以来、彼らが一貫して実験/実践してきた、静から動への場面展開/轟音によるショック療法を極めた圧巻のキラー・チューンだ。ていねいに紡がれたコードとメロディのタペストリーは、歌詞カードや五線譜には表現することのできない叫びへと凝固。その熱は1000℃の熱源を持つ線香花火にも似た爆発力と刹那を携え、冒頭の静寂を黒焦げにする。Bメロを一度しか使わない構成が演出するギリギリの均衡と、地鳴りのようなドラミング。ワウペダルを踏み込んだギター・ソロは、巨人の咆哮のようにも聴こえ、“秩序を破壊するための秩序”を見せつけてくれる。
 続く「The World Record」は、リフレインによる呪術的トランス感を研ぎすませた“音楽兵器”だ。英詞のスピード感~雄々しいコーラスの反復による“混沌”から、無重力状態の“祝祭”へと突き抜ける構成美に、三半規管がギシギシと揺れる。ミニマル&インダストリアルなスラップ・ベースといい、“日ごと夜ごとに 世界は破滅へと向かう ありえない!/俺たちが世界記録を破るんだ 切り拓け!”(歌詞対訳より)という矢のようなメッセージといい、これほどまでにリスナーを暴徒化させる楽曲というのも珍しい。世が世なら、国が国なら、国家を転覆させるためのテーマ・ソングとして、無人の焼け野原に鳴り響いたのではないかとすら思う。
 つまりは鉄壁の両A面。銀色に光るディスクの中で、両曲が睨みあっているかのようなすごみさえ感じさせる1枚なのだ。
 音楽そのものの魅力(や制作費)を超えるミュージック・ビデオが期待されるようになり、それをチェックするためのYouTubeにも煽動的な広告が入るようになったこの時代、いかに“音楽だけ”に集中させることが難しいか。私はこのCDをPCで聴き始めたが、すぐさまオーディオのCDプレイヤーへと場所を移し、ヘッドフォンの爆音で対峙した。そうでもしなければ戦えない。そんなふうに思わせてくれる作品に出会えたのは、本当に久しぶりのことだった。

 もはや距離感を失い、ミニチュアのようにも精密機器の内臓のようにも見える鳥瞰の風景。ジャケットに使われたこの写真が、彼らの到達した高みの過酷さをストレートに表現しているように思う。月産200枚の過激な妄想に埋もれてその才能を枯渇させる小説家のように、スパイスの中毒性に溺れてその舌を麻痺させる料理人のように、このシングルはどこか音楽家生命の最期を感じさせるかのような危うさにも満ちているが、しかしその危うさこそが人を惹きつけるというのもまた事実であり、その麻薬的なギャンブルに、彼ら自身が気づいていないわけがない、とも思う。
 彼らはそんな“クリエイティブの怪物”を、どこまで手なづけているのか。来たるべきニュー・アルバム最大の見せ場は、恐ろしく高い場所にあるのだ。

(祭蓮しずか)

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