きのこ帝国 SINGLE「東京」ディスクレビュー

東京

SINGLE

きのこ帝国

東京

DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT

2014.09.09 release

<CD>


「東京」史上に残る名曲、堂々誕生!

 今年2月の渋谷クアトロでのワンマン・ファイナル公演で初披露されて以来、ライブで演奏される度にオーディエンスの間でざわめきが起こっていた、きのこ帝国の“噂の新曲”である。イントロなし、スーッと小さく息を吸ったあと、いきなり佐藤が歌うサビから始まるこの曲は、一度聴いただけで脳裏にメロディと歌詞が鮮烈に刻まれる、すさまじい伝播力と拡散力を持った、きのこ帝国史上最もキャッチーな楽曲と言っていいだろう。

 それが単なる偶然の産物ではなく、狙い澄ました楽曲であることは、そこに彼女/彼らが「東京」と名付けたことからも明らかだ。矢沢永吉、桑田佳祐、B’z、Mr.Childrenといった超ビッグ・ネームから、サニーデイ・サービス、GOING UNDER GROUND、くるり、銀杏BOYZ、Base Ball Bearといったオルタナティブ系のバンドまで、これまで「東京」というタイトルの曲は数えきれないほど作られてきた。その歴史の末席に、まだデビューして2年あまりのバンドが不遜にも乗り込んでいくこと。しかも、まさにその曲のコーラスで“東京 東京”と歌い上げること。それは、よほどの覚悟と自信がなければできることではない。

 血中洋楽濃度の高いシューゲイザー的轟音ギターノイズと端正なソング・ライティングで、これまで着実に熱心な音楽リスナーの支持を集めてきたきのこ帝国。その一方、ボーカル&ギター&ソングライターの佐藤が音楽活動を始めたルーツには、宇多田ヒカルや山崎まさよしといったシンガー・ソングライターの音楽があって、そのリリシズムの片鱗はソロ・プロジェクトであるクガツハズカムの活動からも伺い知ることができた。本作「東京」では、進境著しい4人のバンド・サウンドと、佐藤の非常にパーソナルで、ある意味フォークソング的とも言える詩情が完璧なる融合を果たしている。
 
 すでに情報解禁されているように、本作は10月末にリリースされるきのこ帝国の2ndフル・アルバム『フェイクワールドワンダーランド』からの先行シングルとなる。いち早く聴かせてもらったので、ここではっきり言ってしまおう。そのアルバムは、この「東京」をファンファーレに、きのこ帝国の大いなる飛躍と変化が刻まれた、2014年に音楽シーンに燦然と輝く堂々たるマスターピースに仕上がっている。“だったらアルバムまで待とうか”なんて呑気なことを言っている場合じゃないよ。店舗限定、100円(!)、5000枚限定でリリースされる予定だった本作は、オンエア&MV解禁と同時にすさまじい反響を呼んで急遽増産が決定されたという。今すぐCDショップに走らないと手に入らないかもしれないよ!

(宇野維正)

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