Yogee New Waves ALBUM「PARAISO」ディスクレビュー

PARAISO

ALBUM

Yogee New Waves

PARAISO

bayon production/hmc

2014.09.10 release

<CD>


今年を代表する傑作としても本作は光り輝いている

 角舘健悟(vo、g)、松田光弘(g)、井上直紀(b)、粕谷哲司(ds)によるYogee New Waves(ヨギーニューウェーブス )。彼らのことを知ったのは、1st EP「CLIMAX NIGHT e.p.」を友人にプレゼントされたから。都市の夜景をジャケットにしたその作品には、一聴してすぐ耳に馴染むメロディと、豊穣な音楽的素養を感じさせるサウンドがこれでもかと詰まっていた。そのEPを聴き終えると瞬く間に彼らの虜となったのは言うまでもない。その後ライブを観る機会にも恵まれたのだが、そこでもまた驚かされた。ステージにはメンバー4人いるにも関わらず、それぞれがどこか孤独感を漂わせていたのだ。それでいて、心地よいバンド・アンサンブルを生み出す連帯感は抜群。こうした掴みどころのなさも彼らの興味深いところで、筆者がその存在を知ってから熱心に追いかけてきた所以でもある。

 そんな彼らの面白さは、記念すべき1stアルバムの本作『PARAISO』で深化している。ザ・バーズといった古き良きUSロックの匂いが漂う彼らの音楽を形容する際、’80年代にここ日本で流行ったシティ・ポップなる言葉がよく用いられる。はっぴいえんどを連想させる洗練された音作りが際立つという点では、それも妥当だろう。だが、歌詞に目を向けてみると、シティ・ポップの一言では括れない面白さがうかがえる。’80年代シティ・ポップのほとんどは、高度経済成長時代を終えてなお、安定期に突入しながら成長を続ける豊かさが反映された都会的風景を描いていた。ところが本作には、そのような豊かさが見られない。あるのは都会で暮らすことの面倒くささであり寂しさ、さらにはそこから逃れたいという逃避願望である。そういった意味で本作は、シティ・ポップではない。強いて言うならその次、いわばポスト・シティ・ポップと呼んだほうがしっくりくる。

 とはいえ、その逃避願望の中には、6曲目「Earth」にある一節“世界はここしかないのさ 一緒にいようよこの街で”が示すように、ここで生きるしかないという諦念と迷いも存在する。だからこそ彼らは、良い歌に良いメロディという音楽自体の普遍的な魅力だけでなく、現在に住む多くの人が抱える葛藤を表象する同時代性にもリーチできたのだ。今後が楽しみな将来性もさることながら、今年を代表する傑作としても本作は光り輝いている。

(近藤真弥)

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