ircle ALBUM「iしかないとか」ディスクレビュー

iしかないとか

ALBUM

ircle

iしかないとか

YAMANOTE RECORDS

2014.09.03 release

<CD>


信頼のもと放たれる、結成14年目にして初のフル・アルバム

 言い訳だらけの人生に嫌気がさしてる自分を晒しまくる「ノーリタイア」、ニルヴァーナのあの曲のギター・リフをブチ込みながら、絶対に届くはずのない理想をめがけてもがき続ける様を描いた「アイロニー」、思うように生きられない自分自身を“失敗作かもしれません”と位置付けてしまう「失敗作」、鋭利な疾走感をたたえたビートのなかで“夢が夢で終わるのが嫌なだけ”と叫ぶ「セブンティーン」、自分を好きにならないか? と問いかける「本当の事」。結成14年目の1stフル・アルバムにおいてこのバンドは、自らの感情と衝動をどこまでも生々しく表現している。

 大人と言われる年齢になれば誰でもわかると思うが(いま10代の人も10年後にはわかります。意外とアッという間です)、どんな人間もやり切れなさ、物足りなさ、こんなはずじゃなかった感、どうしようもない倦怠を抱えながら生きている。そのことを受け入れられる(=諦められる)かどうかがひとつの分かれ道だと思うが、ircleは拒絶することも諦めることもなく、ただあるがままの自分たちをシャープなサウンドともに放ちまくっているのだ。これは相当にキツイことだと思う。誰でも本当の自分なんて見たくないし、考えたくないからだ。しかし、だからこそ、リスナーにとってこのアルバムは大きな効果を与える可能性を備えている。実際、こんなにもリアルな思いがぶちまけられているにも関わらず、本作を聴いたあとは不思議と気分がスッキリしているのだ。その感覚はまさにカタルシス(浄化)という言葉がよく似合う。

 装飾を徹底的に排除し、ライブの臨場感を伝えるサウンド・メイク、そして、どんなに激しく叫んでもしっかりと歌を伝えることができる河内健悟のボーカルも素晴らしい。理屈を超えたところで、“このバンドは信頼できる”と思わせてくれる濃密なアルバムである。

(森 朋之)

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