OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND ALBUM「FOLLOW THE DREAM」ディスクレビュー

FOLLOW THE DREAM

ALBUM

OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND

FOLLOW THE DREAM

トイズファクトリー

2014.09.03 release

初回限定盤 <CD+DVD>
通常盤 <CD>


積み重なる日々の中で醸成されたアコースティックな音楽

 ミニ・アルバム『夢の跡』から約3年半ぶり、フル・アルバムとしては『New Acoustic Tale』以来、約5年ぶりとなるOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND(以下、OAU)のニュー・アルバム『FOLLOW THE DREAM』。もともとは、BRAHMANのTOSHI-LOW(vo、g)とスコットランド系アメリカ人MARTIN(vo、violin、g)が意気投合し、そこにBRAHMANのメンバー全員とパーカッション奏者KAKUEIが加わる形で結成されたOAU。しかし、そこから約10年という歳月を経る中で、このバンドの持つ意味は大きく変わっていったように思う。BRAHMANの音楽とは180度異なるアコースティックなサウンドの奥深さを、無邪気に探求していた初期──言わば、BRAHMANの“オルタナティブ”として機能していた時代から、BRAHMANから切り放たれた“スタンドアローン”な存在として、独自の道を歩み始めた中期へ。OAU自身が発起人となって2010年よりスタートしたキャンプフェス“New Acoustic Camp”は、その時期を象徴する出来事だったように思う。そして迎えた2011年の東日本大震災。それをきっかけに、このバンドの持つ意味は、さらに大きく変化していったように思う。アコースティックならではの音の温かみや開放感といった音楽的観点のみならず、演者の心の揺らぎをダイレクトに映し出す音楽としてのアコースティック。あるいは、アンプラグドであるがゆえに時間と場所を選ばず奏でることのできるフットワークの軽さを持った音楽としてのアコースティック。そこから現在へと至るOAUの音楽は、その初期には予想もつかなかったほどメンバー自身の“人間性”を色濃く反映した、実にエモーショナルで地に足の着いた音楽へと変化していったように思うのだ。

 そして、今回の『FOLLOW THE DREAM』である。驚いたことに、そこには上記のように変遷していったOAUの音楽のすべてが混在しているのだった。パーカッシブな躍動の中にアコースティックならではの楽しさを感じる「Follow The Dream」、今年5回目を数える“New Acoustic Camp”のテーマ・ソングである「Making Time」、“震災後の日本を立て直す人々について描いてほしい”というMARTINの要望を受けてTOSHI-LOWが作詞したという「朝焼けの歌」。無邪気な喜びも、大自然の中で響く爽快感も、瓦礫の中に立ちすくむ人々の姿──そのすべてが、本作には刻み込まれている。その中でも、ある種象徴的な意味合いを持っているのは、最も古い時期の曲にあたる「夢の跡」だろう。震災前の世界で作られたはずのこの曲が、すべてをあきらめかけた時期に書かれたはずのこの曲が、おぼろげな希望を湛えた音楽として、今この世界に鳴り響くのは一体なぜなのか。“流れゆく時間”というよりも“積み重なる日々”の中で、静かにその味わいを変えながら、ゆっくりと醸成されていった音楽。それはときに、時間や人為を超えた、実に複雑で豊潤な味わいをもって、聴く者の心に響いてくるのだった。いわゆる“ニュー・アルバム”ではあるものの、その背後にOAUが辿って来た10年が、そして僕ら自身が辿って来た10年がうっすらと透けて見えるような、とても滋味溢れる一枚だと思う。

(麦倉正樹)

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