UNISON SQUARE GARDEN ALBUM「Catcher In The Spy」ディスクレビュー

Catcher In The Spy

ALBUM

UNISON SQUARE GARDEN

Catcher In The Spy

トイズファクトリー

2014.08.27 release

初回限定盤 <2CD>
※LIVE CD付き(UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2014 “桜のまえ” at Zepp Tokyo 2014.03.22)
通常盤/写真 <CD>


無敵、快適、攻撃的。むきだしのロック・アルバム。

 田淵智也のソング・ライターとしての優れた才能を思いきりぶちまけ、ロック・バンドとして、音楽家としての意地と執念を爆発させた前作『CIDER ROAD』とは対照的に、あらたに届いた作品は、シンプルでソリッドなバンド・サウンドを極めた生々しいロック・アルバムになった。これまでのアルバムで最も短い、今バンドでできることをストレートに詰め込んだ49分。常に新人バンドのようなぶち切れたアクションとすさまじいテンションで、音を奏でる喜びを謳歌する最近のライブを観ている人ならば、一発で気に入るはずだ。斎藤宏介のギターがこれほどワイルドに暴れまわる作品はかつてなかったし、鈴木貴雄のドラムがロック、ファンク、ラテンなど様々な要素を消化して、これほどグルービーに響くことも初めてだ。無敵、快適、攻撃的。サウンドがかきたてる高揚感という点では、過去最高作と言いきりたい。

 一方で、歌詞が描く風景がかなり変貌しつつあるのがとても興味深い。メロディと言葉とサウンドが一体となって加速する独特の作詞法、意味と響きが融合する少々難解な言い回しが特徴だった田淵の歌詞が、ここでは非常にわかりやすくストレートになってきているのだ。それは1曲目「サイレンインザスパイ」の一行目“ああ 青春が止まらない”から、ラスト曲「黄昏インザスパイ」の“今日が辛いから明日も辛いままだなんて思うな”まで、すべての曲に通じている。自分の歌には“ぐちゃぐちゃの理想が詰まってる”と叫ぶ「シューゲイザースピーカー」や、“一人だけど 独りじゃない”とつぶやく「何かが変わりそう」。さらに、“強く生きてね 元気でね”という言葉にすべてを込めた「君が大人になってしまう前に」など、これまでにはなかったタイプの率直な歌詞が深い感動を運んでくる。すべての曲に、刹那と永遠が交錯する青春の風景がきらめいている。

 原点回帰と呼ぶにはあまりにたくましく、力作と呼ぶには肩の力が抜けていて、傑作と薦めるほど大袈裟なものじゃない。ただ、現在の彼らの姿をさらけ出すことで、聴き手の心を激しく揺さぶる等身大のアルバム。今後に向けて、大きな転換点になりそうな重要な作品だ。

(宮本英夫)

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