BUMP OF CHICKEN DIGITAL SINGLE「You were here」ディスクレビュー

You were here

DIGITAL SINGLE

BUMP OF CHICKEN

You were here

トイズファクトリー

2014.08.01 release

※配信限定


From BUMP OF CHIKEN

 全国ツアー<BUMP OF CHICKEN TOUR “WILLPOLIS 2014”>の最終公演。東京ドームの巨大なステージに立つBUMP OF CHICKENの姿を見て、会場にいたオーディエンスは、彼らとの出会いの記憶が古ければ古いほど、その出発点を思い出していたのではないだろうか。個人的な話で恐縮だが、僕は1999年に下北沢のライブハウスで初めて彼らのライブを観たときのことを思い出していた。それはまだインディーズで活動していた彼らが、たしかシングル「LAMP」をリリースした頃だった。荒削りの演奏でストレートな熱情を走らせる、キャパ的にも彼らの音楽的にもまだまだ小さかった彼らのステージはしかし、当時全盛だったいわゆる下北系ギター・ロックと呼ばれたバンドの多くと明らかに一線を画す“何か”があった。いや、当時のBUMP OF CHICKENは演奏のスキルこそかなり頼りなかったが、すでに格別な“何か”の塊だった。ハタチとは思えない円熟味さえ感じさせる藤原基央のボーカル。シンプルな言葉を紡ぎ真理を射抜くリリシズムと物語性を浮かび上がらせる歌詞と、普遍的でありながら独創的な像を結んだメロディが融合した歌(やがてそれは日本のバンド・シーンにおけるおおいなるロールモデルにもなるわけだが)の絶対的な求心力。ときにブルースやカントリーのテイストを織り交ぜ、ギター・ロックのクリシェに陥らない展開を見せるアレンジ力。そして、ステージに流れる空気だけで感じ取れるメンバーの“離れがたい”結束力。藤原のMCは現在と異なり言葉数も多く、ヒリヒリした緊張感を漂わせていた。しかし、楽曲の核にあるものが不変であるように、彼が口語で伝えたいことの本質もまたあのころから不変だ。オーディエンスに向けた“ありがとう”という言葉に込められた、“ありがとう”という言葉だけでは心の奥底から沸き上がる感謝の念を補完できないのだという思いもそうだし、4人の関係性もそうだ。

 近年、BUMPの活動は必然的な段階を踏みながら、最新アルバム『RAY』を起点に世間にも向かうようになり、ライブもエンターテインメント性の高い演出を導入するようになった。そのひとつの到達点と始発点が交差する大きなポイントとなったのが東京ドームであった。BUMPがドームでライブをする。そこには意外性を帯びた響きもあったが、今のBUMPならドームが似合うだろうなとも思えた。事実、序盤の派手な演出を取り入れた近年の楽曲も、この国のギター・ロックのアイコンになりながらも完全に独立した世界で生まれた名曲群も、狭小なライブハウスでやっていた頃とまったく温度差なくナチュラルな様相で鳴られた初期曲も、ドームの会場で有機的に共存していたのが本用に感慨深かった。2014年7月31日を契機にBUMPにとってドームライブが異例じゃなくなる。その始まりの日になったのは確かだ。だからこそ、ツアー中に誕生し、本編のラストに披露された新曲「You were here」のBUMP OF CHICKENをBUMP OF CHICKENたらしめる心臓の音がそのまま鳴ったような、ライブで築き上げたオーディエンスとの関係をつぶさに綴ったバンド史上屈指のミニマムなサウンドをまとった歌が、とても大きなスケールで鳴らされたのはあまりに感動的だった。BUMPを取り巻く風景は変わったが、何も変容していない。それを証明する1曲である。その真ん中にあるのは、言葉だけではいつまでも言い尽くせない“ありがとう”だ。

(三宅正一)

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