8月9日からスタートした初の全国ホール・ツアー“八枚目でやっと!九枚目でもっと!”。その直前にこのツアーに対する想いを、クリープハイプ尾崎世界観に聞いた。

クリープハイプ

全国ツアー“八枚目でやっと!九枚目でもっと!”が始まった。その初日、かつしかシンフォニーヒルズのライブを観させてもらったが、素晴らしいライブだった。今の自分たちが進むべき方向にしっかり向き合った、そしてバンドと会場に来てくれたお客さんとの関係に真面目に向き合った証のようなライブだった。
そんな初日を間近に控えた8月上旬のある日、彼らがリハーサルを行っているスタジオを訪れた。今回は、ツアー“秋、零れる程のクリープハイプ”から約8ヵ月ぶりの、そして規模を拡大させて行われる初の全国ホール・ツアーでもある。このツアーに対して尾崎世界観は何を思っているのか。リハーサルを観させてもらったあとに時間をもらい、彼に話を聞いた。ここで語られた想いと共に、彼らは全国を廻る。
(編集部注:極力、ネタバレはしないように書いてはいますが、より白紙の状態でライブを楽しみたい方は、ライブ後にお読みください)

INTERVIEW & TEXT BY  河口義一(WHAT’s IN? WEB)
PHOTOGRAPHY BY 関信行(go relax E more)
HAIR&MAKE BY AOKI(holy)【メイン写真】


ずっと続けていくために、すごく重要なツアーになると思います

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「歌える状況じゃないんです、体力的に。新しい曲の制作もずっとやっているし、「エロ/二十九、三十」のプロモーションで、ひとり地方に行ったりとかもあって。作った曲のことを話ながら、新しい曲を作って、同時にライブの準備って……。ホントに練習できてないですからね。1日が38時間くらいあったらいいなって思います(苦笑)」
インタビューで開口一番、尾崎はそうつぶやいた。

この日、スタジオを訪れると、通しリハ(リハーサル)の直前だった。通しリハとは、本番と同じ曲順で頭から終わりまで演奏して、それを元に細部を調整していく過程のことだ。それほど広くないスタジオに、メンバーとコンサート・スタッフがそれぞれのポジションで準備をしている。その中でなんとか観る場所を作ってもらったところで、リハが始まった。
そのリハを最後まで観たとき、僕は正直言うといろんな意味で泣きそうになるポイントがいくつもあった。そのくらいいい演奏だと思った。だから、尾崎のインタビューでの最初の言葉に“おや?”と思ったのも事実だ。たしかに尾崎に疲れが感じられないかというと嘘だし、その後メンバーが集まって、細かく修正ポイントを確認しているのを聞くと、表現者としてのシビアさを改めて感じもした。それにしても彼が“もっとやれていなきゃいけない”と思うこのハードル設定の高さは、このツアーに対する彼の想いが関係しているのではないだろうか?

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──4月に日本武道館2デイズ公演は行っているけど、ツアーとしては、2013年5月〜6月の“クリープハイプの窓”、10月〜11月の“秋、零れる程のクリープハイプ”以来です。今回のツアーはバンドにとってどんなものになりそう?

去年とは状況も違ってきていて……。去年までは(クリープハイプを)よく知らないけどなんだろうなって興味を持ってくれてる人がすごく多かったけど、今年はそういう人たちがもういなくなって、本当に好きな人たちだけがライブに来てくれる状況になってると思うんです。もちろん全員がそうじゃないとは思うけど。ある意味、落ち着いた状況の中でツアーをやるわけだから、よりシビアになるし、しっかり見極められるだろうし。状況が落ち着いてきたっていうことに対する焦りみたいなものはありますね。

──前回のツアーはどうだったの?

初めて行く土地も多かったし、こういう感じで待っていてくれるんだなって実感したし、行くだけで“行って良かったな”って思えてたんで。だけど、もう今回のお客さんはそうじゃないと思うんです。だから、バンドもそうだし、お客さんもそうだし、お互いこれからもずっと続けていくために、すごく重要なツアーになると思います。

──そのためには、次に進もうとする何かが大事になってくる?

うん。そうなんですよね。cts23


全曲を通して演奏する形で行われたリハーサルはあっという間に終わった。いや、そう感じさせられたのかもしれない。MCも何もなく進むので、もちろん実際のライブよりは短い。が、それにしてももう終わりなんだ、と思えるほど演奏に引き込まれたのは、あるべきところにあるべき曲が収まっているセット・リストになっていたからというのも大きいだろう。これからライブを観る人のために、セット・リストは明かせないが、あんな曲やこんな曲が、全体の中での位置、前後の曲との関係性で、“こんなふうに聴こえるんだ”、“あ、この曲が出世してる”なんていう発見もいろいろあった。今回は、ニュー・アルバムをコンセプトにしたツアーではない。では、彼らはどんな想いで演奏する曲を選んだのだろうか?

──アルバムを引っ提げてのツアーではないから、セット・リストの構成の自由度はあった?

でもね、そんなに(やりたい曲を)やれてないんですよね。あ、ここまでしかできないんだってびっくりしたし。武道館で2日間曲を替えてやったっていうのもあると思うんですけど。今回はアルバムじゃないので、もっといろいろ見せられるなって思ってたけど、意外と、でしたね。だから、曲が増えたなって、長く続けているんだなって、改めて実感しました。

──そういう中で、曲を選ぶ基準はあった?

これはやらなきゃいけないっていうものを決めていったら埋まっちゃいましたね。あとは2枚のシングル(「寝癖」「エロ/二十九、三十」)をしっかり出すってことを考えたら、あっという間にいっぱいになっちゃって。やっぱりお客さんのことを考えると、あえてやらないとか、そういうのはイヤなので。好きでもないヤツを裏切るのはいいと思うけど、好きな人を裏切る意味はないと思うんで。

──でも、それは裏を返すとマンネリという感覚も潜んでるよね。

べつにそれでイヤならいいし、飽きるなら。もちろん、それだけじゃなくて、ほかの曲もやってるし。

──同じ曲でも、全体の中でどう見せられるかっていうのもあるしね?

そうですね。今まではわりと最後のほうに(代表曲を)取っておいて、たたみかけてお腹いっぱいになって、観たなあって思ってもらえるような形が多かったけど、今回はそれをまんべんなくばらしたし、わりと最初のほうに比重を置いたっていう感じで。だから、それでちゃんと成立させられるかどうか。そこも今回の大事なところですね。cts24
今回は、シングル「寝癖」と「エロ/二十九、三十」に収録されている曲たちがツアーとしては初めて演奏されるナンバーとなる。リハで聴くそれらの曲たちは今のクリープハイプを生々しく映し出すのと同時に、過去のナンバーと混じることで、相互作用的に新しい曲のキャラクターを生み出していた。そんな新曲について聞いてみた。

──ライブの中で「寝癖」は尾崎くんにとってはどういう曲だって思う?

確認し合うような曲という感じがしますね。お客さん側の気持ちとバンド側の気持ちを近いところに持っていける、そこで調節するみたいな。

──武道館でやったとき、初めてやったとは思えないくらいしっくりきたって言っていたけど、そう感じられたのが大きかったのかな?

そうですね。特に2日目は最後にやって、(そこから次のクリープハイプが)始まった感じがしたんで。ひとつまた基準にしたいっていう曲が出来たというか。(リリースしたときの)インタビューでも言ってたんですけどね。“真ん中”だって。

──「エロ」はこの間の自主企画のイベント“ストリップ歌小屋”で初披露してましたが。

盛り上がってました?

──うん。ライブの中では「寝癖」に近い感じがしたけど。

たしかに、「社会の窓」とかも発売前なのにライブで盛り上がってましたから。そういう曲っていうのもありますね。

──でも「エロ」は詞の世界は半径数メートルな感じだけど、ホールという大きな会場で歌う違和感ってある?

いや、全然ないですね。感覚としては変わらない。人が多いからそういう(サイズの)気持ちを歌おうとかじゃなくて、(ライブもCDも)ちっちゃい個人的な気持ちから始まってるのは変わらないですね。cts6

今でも嫌いですよ(笑)。できればやりたくない

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──「二十九、三十」は?

ライブでやるのが楽しみですね。曲調としても目に見えてリアクションが返ってくる曲ではないですけどね。今回、セット・リスト的には大事な場所でやるんです。この曲を、ライブを左右するような場所に持ってくるというのは、ホール・ツアーに対する気持ちのような気がしますね。自分たちが作った曲から逃げないことというか、シングル曲にした以上は大事なところに置いて、勝負しないとダメだなと思ったので。歌ってても、声をめちゃくちゃ張り上げるわけでもなくて淡々としてるから、心配になるときもあるんですけど。でも、そうじゃなきゃ伝えられないことを伝えてるつもりだし、頑張ってちゃんとやりたいなって。

──今までも「傷つける」とかライブの中で重要な曲で、スローやミディアムな曲もあったけど、今回はそういう曲をシングルのタイトル曲として出したじゃない? そこはシングルで出したかったんだよね?

こういう曲でちゃんと届いたらうれしいし、バンドを長く続けていけそうな気もするし。どっかひねくれてるんで、今の流れに逆らいたいっていう気持ちもあるし。

──それは周りの言う“クリープハイプっぽいよね”って曲を重ねていくんじゃなくて。

そうですね。自分たちで決めるべきだから、これがクリープハイプっぽいっていうのは。30歳になるって節目で、そういうテーマを持った曲を作って、それがしっくりきたっていうのが良かったんで、CDにも入れたし、ライブでもやりたいし。cts20

──でも、実は曲として強い曲だよね。

たまたま出てきたメロディで。最初はボーナス・トラックとかで使おうかなって思ってたんですよね。でもそれをバンドで合わせてみたときにすごく良くて、思ってた以上に。こういう曲ってアコースティックにしがちなんですけど、バンドの音をしっかり鳴らして。無理矢理強引に持ち上げない強さみたいな、すごい自然な……ナチュラルローソンみたいな感じですね。

──ん?

ナチュラルローソンのおにぎりみたいな。

──……。

ナチュラルローソンのパンみたいな(笑)。

──はは(笑)。ちょっと女子が好きそうなナチュラルね。

(笑)。でも、なんか芯がある感じがしたんです。自分のボーカルのスタイルとしてもまた新しい感じでいけたらいいなと思ったんで。ぎゃーって言ってるだけじゃダメだなって。

──歌詞もすごく尾崎くんの素が出ている歌詞だなって。

「R25」のタイアップというのもあったので、それで書きましたけど。すごくメロディに沿った歌詞になったなとは思いますね。無理したりとかへンに意識したりもしないで。「明日はどっちだ」って曲も、時間がなくて手癖で作った曲だったんですけど、この曲もそういう感覚でしたね。歌詞も、いつもは一回出来たものをそのあといじったりするんですけど、これは出てきたままで。でも、「明日はどっちだ」のときも、ホントに時間なくて“クソ! なんで時間ないんだろう”って悔しい想いで作ったけど、結局はお客さんにすごく響いて、いい形になって。あー、そういう歌詞なんだなって。

──作り込んでないっていうところが、強いんだろうね。

そうですね。あ!(突然気づいたように)でもこうやって今質問してもらったようなことを、お客さんにも考えて聴いてもらえる、そんなツアーにしたいですね。cts10

──改めて聴くけど、そういう意味では「エロ」はどういう曲なの? 「寝癖」のときはクリープハイプのベースにある「左耳」みたいな曲を作りたいっていうことだったけど。

ちょっと変わった感じの曲ですね。メロディも今までとちょっと違った感じだし、なんかひとつまた踏み込めたというか。自分としてはちょっと新しいことができたなって思ってるんですよ。その“ちょっと”というのがポイントなんです。

──(笑)。クリープハイプらしい次の一歩ね。

そうですね。だからそれがお客さんはどうだったのかは気になりますけど、今回は曲だけじゃなくて、曲のタイトルにかけていろいろ遊べたりもしたんで。エロサイトを作ったり、エロ本とかエロティッシュとか。いろんなやり方があるんだって思いましたね。

──次の一歩という意味では、「ホテルのベッドに飛び込んだらもう一瞬で朝だ」も、僕はそう感じてたんだけど。

この曲を今回のツアーでやるのは楽しみですね。

──この曲は前回のツアーでお客さんたちからもらったものを受けて作れた曲ですもんね。こんなにストレートにライブでの気持ちを尾崎くんが書くとは思わなかったし。そもそも以前は、ライブが嫌いだったんでしょ?

今でも嫌いですよ(笑)。できればやりたくないですよ。でも、嫌いっていうのはやることが嫌いということではなくて、うまくできないのがイヤで。お客さんが来てくれて待っててくれるのはすごくうれしいから、うまくできないっていうのが嫌いなんです。

──なるほど(苦笑)。あと最近、ライブでしかやってない新曲もあるよね。エッジが効いた攻撃的な曲なんだけど、“表現”そのものや、いろんなことに対する愛が詰まってる大きなラブ・ソングで。あれはすでにライブの定番曲になってるよね。

盛り上がりますね。でも、ホールでどこまで盛り上がるかはわからないですけど。

──今回のファンはクリープハイプの本当のファンだから、あの曲で尾崎くんが歌っていることに対して、より背中を押してくれるよね。

なんか共犯みたいな。この曲は東京でしかまだやってないんで、ツアーでやれるのがうれしいですね。cts25


リハーサルの話に戻る。最初に「泣きそうになった」と書いたが、ライブのようなマジックが起きる場所でないリハーサルという場でもそう思わせることができるのは、バンドが成長、すなわち表現力が格段に上がっているということだ。曲によって、またはフレーズによって、ここはグルーヴで聴かせればいいのか、歌詞を聴かせたいのか、アンサンブルのキメが大事なのか、というようなことを頭で考えるのではなく、体に沁み込むレベルまでになっている証だと思う。そんな彼らが、“今のクリープハイプ”を携えて、いよいよ全国を巡る。バンドが奏でる演奏、尾崎が放つ言葉。それらと客の想いがぶつかり合う空間は、間違いなくそれぞれにとって貴重な一夜になるに違いない。最後に改めて、尾崎にツアーへの想いを聞いた。

──さっき「寝癖」が確認し合う曲って言ってたけど、今回のツアーもそういう意味って大きいんじゃないかなって思うんだけど。

どんどん決まりや確認し合うことが増えていくと思うし。でも、それが増えれば増えるほど飽きてくることにも繋がってくると思うので、そこはいいところを取っていきたいですよね。お互いがずっと興味を持っていられるような。

──そこで、“ちょっと”した一歩が大事になってくるんだね。期待されることを裏切らないようにしながらね。

そうですね。

──そんなツアーにできそう?

今はできなそうですけど……、しますよ!(笑)なんとかします。なんとかなってきたんで、今まで。

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DISC INFORMATION

SINGLE 2014.7.23 release
「エロ/二十九、三十」
ユニバーサル シグマ

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初回限定盤 <CD+DVD>
※4曲目に「なぎら」を収録(初回限定盤のみ)。

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通常盤 <CD>
※4曲目に「ベランダの外」を収録(通常盤のみ)。

「エロ」MUSIC VIDEO

「二十九、三十」MUSIC VIDEO

LIVE INFORMATION

“八枚目でやっと!九枚目でもっと!”
8月9日(土)東京 かつしかシンフォニーヒルズ・モーツァルトホール
8月12日(火)静岡 静岡市民文化会館・中ホール
8月15日(金)愛知 日本特殊陶業市民会館・フォレストホール
8月16日(土)兵庫 神戸国際会館こくさいホール
8月19日(火)埼玉 大宮ソニックシティホール
8月21日(木)新潟 新潟県民会館
8月24日(日)宮城 東京エレクトロンホール宮城
8月28日(木)大阪 オリックス劇場
8月29日(金)大阪 オリックス劇場
8月31日(日)福岡 福岡市民会館
9月5日(金)北海道 札幌市教育文化会館・大ホール
9月8日(月)神奈川 よこすか芸術劇場
9月12日(金)香川 サンポートホール高松・大ホール
9月13日(土)広島 アステールプラザ
9月17日(水)東京 NHKホール
9月18日(木)東京 NHKホール

PROFILE

尾崎世界観(vo、g)、長谷川カオナシ(b)、小川幸慈(g)、小泉拓(ds)。2012年4月にアルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャー・デビュー。2014年4月に初の日本武道館2デイズ公演を開催、5月にシングル「寝癖」をリリース。8月より初の全国ホール・ツアー“八枚目でやっと!九枚目でもっと!”をスタート。今作の「二十九、三十」は、“R25 30 オトコ テーマソング produced by THINK30”に起用されている。

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