チーナ MINI ALBUM「DOCCI」ディスクレビュー

DOCCI

MINI ALBUM

チーナ

DOCCI

SOPHORI FIELD COMPANY

2014.08.06 release

<CD>


“どっちにだって行ける”という意思を示した新作

’12年に1stフル・アルバム『GRANVILLE』を発表。バイオリン、コントラバスを交えた楽器編成、“クラシカルでオーガニック”という先入観を気持ちよく裏切るダイナミックな演奏、そして、ボーカル・椎名杏子の凛としたボーカリゼーションによって大きな注目を集めた5人組バンド、チーナから約2年ぶりの新作「DOCCI」が届けられた。前作のリリース以降、椎名はバンドの方向性について考えを巡らせてきたという。“DOCCI(どっち)”というタイトルにはこの2年間における逡巡が反映されているわけだが、本作に収められた楽曲を聴けば、あらゆる可能性の閉ざすことなく、“どこにだって行けるんだ”という思いに至ったバンドの現在地を確認することができる。

 本作の大きな特徴は、椎名の歌がさらに際立っていることだろう。ドラマチックなメロディとともに“若者よ空は飛べないね 地面を歩いて行きなさい”と歌い上げる「シラバス」、“ちんけでもいいから、テレビドラマみたいに仲良くしたい”と語りかける「テレビドラマ」、“誰かのマネをしないのは とてつもなく難しいことだろう”というフレーズが心に響く「大きな渦」。通奏低音のように流れているのは、膨大すぎる情報と他者との比較に晒されながら、それでも“個として生きていきたい”という願いだ。ありふれた日常のなかで、自分だけの感情をしっかりと守りながら、誰のマネでもない、独創的な歌へと結びつける——彼女の歌は本作によって、確かなオリジナリティを獲得しつつあるようだ。

 クラシック、ポップス、ギター・ロック、エレクトロなどの要素をきわめて自然に共存させたサウンドメイクも、さらに自由度を増している。音楽的なルールを意図的に無視するようなフレーズが随所に散りばめられ、ポップ・ミュージックの枠を気持ちよくハミ出してしまうこともあるが、その奔放なスタンスこそが、このバンド本来の魅力なのだろう。常識や既存のスタイルを踏襲することはない。どこまでも自由に、自分だけの表現・生き方を求めればいい。「DOCCI」を聴いていると、素直にそう思える。

(森 朋之)

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