高橋 優 ALBUM「今、そこにある明滅と群生」ディスクレビュー

今、そこにある明滅と群生

ALBUM

高橋 優

今、そこにある明滅と群生

ワーナーミュージック・ジャパン

2014.08.06 release

初回盤/写真 <CD+DVD>
通常盤 <CD>


そこに光と闇があるからこそ、奏でられる音楽

 音楽のパワーが全開のアルバムだ。聴き手の気持ちを揺さぶったり、奮い立たせたり、考えさせたり、問いかけさせたり。内面に強く働きかけて、示唆やきっかけを与えてくれる作品なのだ。高橋優はこの世界の中で今、自分が何を歌うべきなのかということに対して自覚的なソング・ライターなのではないだろうか。「パイオニア」に「光探すより自分が照らせる暗闇を見つけたい」というフレーズがある。見つけたその闇に光を当てていくのだという意志を読み取ることもできそうだ。「WC」や「犬」のように憤りや嘆きなどの負の感情がモチーフとなった楽曲もあるのだが、断罪したり、非難したりするのではなくて、それらの曲の根底から闇にピンポイントで光を当てていこうとする意志が感じ取れるところがいい。

 アルバム・タイトルにある“明滅”という言葉がこの作品の特徴を明確に示していると言えそうだ。光のみを描くのではなくて、光も闇も視野の中に入れて歌っているからこそ、そして彼独自の言葉で表現しているからこそ、深みと説得力が備わっていく。「BE RIGHT」の「既読」「ニコ生」、「裸の王国」の「LINE」「tweet」など、最近頻出している言葉を多用することで、2014年の日本の空気も浮き彫りになっていく。はやりの言葉を使うのは実はリスキーだ。安易な使い方をすると、年月が経ったときに曲が古びたり、色褪せたりしてしまうからだ。が、明確な目的意識を持って自覚的に使うことで、その時代の空気を封じ込め、後世に伝えていく普遍性を獲得していける。このアルバムもそうした作品となっていくだろう。

 「BE RIGHT」の「悲観したってしなくたって光なら射すよ」とか「WC」の中の「誰しもがきっと似た者同士」など、うならされる名フレーズがたくさんある。だが、この作品が素晴らしいのは言葉だけが突出するのではなくて、歌詞、メロデイ、サウンドが一体となっているところにある。強靱なグルーヴから陽性のパワーがほとばしっていく「BE RIGHT」、フォーキーでなおかつソウルフルな歌声が見事な「明日への星」、体温のある歌と演奏がじわじわ染みてくる「同じ日々の繰り返し」、恋愛の光と闇とが叙情的なタッチで描かれていて、儚さや切なさが滲んでくる「ヤキモチ」などなど、音楽的にも実に豊かな作品なのだ。この作品をひとりでも多くの人が聴いたならば、世の中はほんのちょっとは良くなるんじゃないだろうか。そう思わせてくれるようなヒューマンなアルバムだ。

(長谷川誠)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人