ザ・クロマニヨンズ SINGLE「キスまでいける」ディスクレビュー

キスまでいける

SINGLE

ザ・クロマニヨンズ

キスまでいける

アリオラジャパン

2014.08.06 release

初回生産限定盤CD
通常盤CD
30cmLPアナログ盤


人間の力を信じるクロマニヨンズ流の人間讃歌

 いきなり「キスまでいける」と歌い出す、ザ・クロマニヨンズ13作目のシングルは、グルービーなロックンロール。冒頭は甲本ヒロトが大好きなロック・バンドのひとつKISSも得意なブギ・タイプのビートなのだが、そこに留まらないのがクロマニヨンズ。ザクザクと刻むギターの音が、身体の真ん中を揺らす。曲が進むほどに曲は熱気を帯びていき、ビートをタテに刻んで緊張感を醸し出す。そして意外なことにサビでは押さえ気味の歌がさらなる緊張感を生み、「信じられない事が 起こってしまうのは 世界中誰も 信じられなかったから」という素晴らしいフレーズを頭に叩き込んでくる。歌にフォーカスしたアレンジで、1927年に世界初の大西洋横断飛行をしたC.リンドバーグの伝記を引用しているのは、舞い上がる気持ちを表しているのだろうか。予測ができていたら「信じられない事」とは言わないわけで、自分の人生でまさかこんなことが! と言うような出来事が起きたときの喜びや驚きは、大西洋横断飛行ぐらいの衝撃ってことだ。わかるようでちょっと掴みどころのない歌詞で、でも皮膚感覚で理解できてしまうこの曲は甲本ヒロトの作。彼がリンドバーグを持って来たのはわかるような気がする。例えば、NASAのような管制システムがあるわけでも国家予算が投じられたわけでもなく、ひとりの人間が自分の意思で当時まだ危なっかしかったプロペラ飛行機を飛ばして前人未到の記録を打ち立てたのだ。そんなところにロマンを見出すのは、アナログ録音に執着するクロマニヨンズと相通じるものを感じてしまう。つまりはクロマニヨンズ流の、というか彼らの根底にある人間讃歌なのだ。

 カップリングの「突風野郎〜愛のテーマ〜」は真島昌利の作。「ナンバーワン野郎」に続く”野郎”シリーズと位置づけることもできるが、こちらはタイトルに「愛」を入れていながら「愛の意味なんざわかりません」と突っぱねる歌詞に、マーシーらしさが滲み出す。キース・リチャーズみたいなギター・フレーズとセンチメンタルなメロディが印象的だが、テンポ感やブギ・テイストは「キスまでいける」と通じるものがあり、この2曲でひとつのイメージを描いているようにも思える。細かいことになるが、シングルとしては「グリセリン・クイーン」以来のステレオ録音。間もなく出るアルバム『GUMBO INFERNO』への期待が高まるシングルである。

(今井智子)

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